快晴ながら、またしても強風&低温の24日(金)。今年も世界中から映画祭に集ったジャーナリストと、長編コンペティション部門の審査員団をカンヌ市の市長が昼食に招待し、屋外で南仏の伝統料理を饗する“プレス・ランチ”が開催された。
 そして監督第1作目&2作目を主な上映対象とする併行部門の“批評家週間”は、本日で開幕。明日25日はこの部門の受賞作のリピート上映に充てられる。


◆上映作品も減り、マルシェ(見本市)関係者がごっそりと去って、街中はのんびりムードに!

 あれほど賑わい、混み合っていたクロワゼット大通りも閑散としてきた。商談を済ませた配給会社や製作会社などのマルシェ関係者がごっそり去ったせいだが、授賞式を明後日に控えた我々報道陣にとっては、まだまだ気が抜けないのが実情だ。
 嬉しいニュースは、今回の“長編コンペティション”出品作の日本での配給が続々と決まっていること。映画祭中にすでに半数以上の作品が買い付けられており、景気の冷え込みにより、高評価を得た受賞作ですら日本公開に至らなかった4〜5年前の状況と比べると、雲泥の差だ。
 そして賞レースの行方も盛んに取りざたされ始めた。 映画祭期間中は毎年、日刊で映画祭の模様を伝える情報誌が幾つか発行される。英語の“スクリーン”誌とフランス語の“ル・フィルム・フランセ”誌が双璧だが、どちらも最終ページに長編コンペティション部門作品の星取り評価表(両誌の評価は案外異なる)を掲載しており、ジャーナリストたちも参考にしている。だが、賞の行方は審査員のメンツ次第。この星取り評価表が受賞に反映されないことも多いのが実情だ。


◆晴れ男(!?)のカンヌ市長がジャーナリストを招待する恒例の“プレス・ランチ”が好天の下で開催!

 “プレス・ランチ”の会場は、市内を一望できる旧市街地の高台にあるカストル博物館前の広場。毎年、地方色豊かな伝統衣装に身を包んだ市民たちが立ち並んで音楽を奏でる中、カンヌ市長自らが参加者を会場入り口でお出迎えするアットホームな雰囲気の催しで、長テーブルがずらりと並ぶ様は壮観ですらある。メイン料理は魚のタラとゆで野菜のアリオリ(マヨネーズ&ニンニクのソース)添えというプロヴァンス地方の伝統料理。ロゼと白のワインは飲み放題だし、前菜やデザート&コーヒーまでもが振る舞われる。その上、お土産として映画祭のラベルが張られた特製オリーヴ・オイルが配られるという太っ腹なイベントで、ハードスケジュールをこなさねばならぬ報道陣にとっては、一息つける楽しい場になっている。また、この催しには長編コンペティション部門の審査員たちも招かれており、ランチに参加した報道陣に対して写真撮影タイムも設けられるので、審査員たちのカジュアルなサマー・ファッションを捉えられる貴重な場でもある。
 さて、天気が心配された今年のランチだが、この時ばかりは好天に恵まれ(悪天候続きだった昨年も“プレス・ランチ”の時には見事に晴れ渡ってくれた)、主催するカンヌ市長も安堵の表情。スティーヴン・スピルバーグ審査委員長率いる審査員たちが顔を揃えるや笑顔で出迎え、審査員たちもリラックスしたムードで談笑していたのが印象的であった。


◆今年のカメラドール(新人監督賞)の審査委員長を務めるアニエス・ヴァルダ監督をキャッチ!

 部門を垣根を超え、長編処女作を対象とするカメラドール(新人監督賞)の今年の審査委員長は、ベルギー出身で“ヌーヴェルヴァーグの祖母”とも称される女性監督のアニエス・ヴァルダ。故ジャック・ドゥミ監督(『シェルブールの雨傘』でパルムドール受賞)の生涯の伴侶として知られ、代表作には『5時から7時までのクレオ』『冬の旅』などがあり、近年はドキュメンタリー映画で気を吐いている大ベテラン監督だ。その彼女に、偶然にもプレスBOXが並ぶパレ・デ・フェスティバルの3Fでバッタリ遭遇、快く写真撮影に応じてもらった。
 今年、アニエス・ヴァルダが率いるカメラドールの審査員メンバーはフランスのレジス・ヴァルニエ監督、スペインの女性監督イザベル・コイシェ、フランスの撮影監督ミシェル・アブラモヴィッチら6名。全25作品(“ある視点”部門6本、“ミッドナイト・スクリーニング”部門1本、“特別招待作品”部門3本、“カンヌ・クラシック”部門1本、“監督週間”部門9本、“批評家週間”部門5本)が対象となり、賞を争う。
(記事構成:Y. KIKKA)