昨日とは打って変わって天候が回復した19日。気温は低く薄ら寒いものの、晴れ渡ってくれただけでも御の字だ。午後には、カンヌの目抜き通り“クロワゼット大通り”の景観撮影に繰り出せた。


◆プライベート・ビーチを有する超高級ホテルと有名ブランド・ショップが立ち並ぶクロワゼット大通り!

 南仏コートダジュールの高級リゾート地として知られるカンヌの市街地は、こじんまりとしているが、街が映画祭一色に染まるこの期間中は、人気スターや監督、製作者、配給業者にジャーナリストと、業界関係者が大挙して訪れる上、スターの晴れ姿を一目でも見ようというファンや観光客も詰めかけるので、ビーチ沿いのメイン・ストリート“クロワゼット大通り”は朝から晩まで大賑わいとなる。
 全長約3kmのこの通りにはグッチやシャネルを始めとする有名ブランド・ショップや超高級ホテルが建ち並んでいるのだが、中でもハリウッド系のスターが多く宿泊するカールトン(歴史的建造物に指定される白亜のデラックス・ホテル)と、審査員や大物スターが宿泊するマジェスティック・バリエールは、大手製作会社&配給会社の派手なプロモーションや記者会見等が行われるため、セレブの出入りの多いホテルの双璧で、警備も厳重だ。ともに“クロワゼット大通り”を挟んだ先にプライベート・ビーチと桟橋を所有しており、そこでは連夜、豪勢なパーティが開かれている。また大通りの東側にあり、記者会見やインタビュー、ジャンケットの会場としても多用されている高級リゾート・ホテル、マルティネスの車寄せ周辺は、スターの出待ちをするファンで黒山のような人だかりになることも。


◆併催される“監督週間”と“批評家週間”部門は、ともに“クロワゼット大通り”に面したホテル内が上映会場!

 フランス監督協会が主催する“監督週間”部門は、JW マリオット・ホテルの地下にあるクロワゼット劇場がメイン会場で、その事務局と記者会見場はホテルの隣接地に仮設されている。毎年“監督週間”では、この部門に貢献した監督を讃える「黄金の馬車賞」を贈与しており、今年はジェーン・カンピオンに贈られた。
 “監督週間”の今年の上映作品は、長編21本と短編9本。ここ数年、作品選定ディレクターが度々変わっているので、作品傾向は流動的なのだが、2年連続で日本映画が出品されていないのが気にかかるところだ。
 監督の第1作目&第2作目を対象とする長編と枠に捕われない短編、そして特別上映作で構成される“批評家週間”部門は、フランス映画批評家組合(SC)の主催で、メイン会場はミラマー・ホテル。で、この部門の今年の目玉作品は、23日にクロージング上映される『3×3D』。3人の鬼才監督、ピーター・グリーナウェイ、ジャン=リュック・ゴダール、エドガー・ペラが、ポルトガルを舞台に3Dで撮った、オムニバス3作品だ。


◆パブリック・ビーチに設置された屋外スクリーンで名作映画を鑑賞できる“シネマ・ドゥ・ラ・プラージュ”

 映画祭期間中の夜半、メイン会場パレ・デ・フェスティバルにほど近いパブリック・ビーチに巨大な野外スクリーンが出現する。カンヌの浜辺の砂はとても細かく(二ースの海岸は大きめの砂利!)、沖合をゆっくりと通り過ぎる豪華客船の姿も優雅! カジノの裏手にあるハーバーにはゴージャスなヨットが連なって停泊し、リゾート気分を大いに盛り上げている。そんな夜の浜辺でゆったり寝転びながら名作映画を無料で鑑賞できるのが“シネマ・ドゥ・ラ・プラージュ”だ。これは映画祭の公式部門のひとつで、入場に制限は無く、一般の人も鑑賞できる好イベント。今年は10作品がラインナップされている。問題は空模様に左右されることで、雨に祟られるとNG。だが、今宵21時半から上映されるインド映画『ボリウッド ザ・グレート・ラブストーリー・エヴァー・トールド』は、何とか楽しめそうだ。


◆海岸沿いに出現したインターナショナル・ビレッジでは、各国の映画機構が自国映画を強力プッシュ!

 各国の映画機構が出展し、自国映画をプロモートするパビリオンが海岸沿いに立ち並ぶ映画村(インターナショナル・ビレッジ)だ。このテントの中では、映画のプロモーションを円滑にすべく、色々な趣向を凝らしたミニ・カクテル・パーティをそこかしこで行っており、人気の交流の場となっている。ここ数年、日本はパビリオンの出展を断念しているが、邦画全体のプロモーションを行うジャパン・ブースは例年通りパレ・デ・フェスティバルの地下1階に設置。さらに今年は、短編映画に特化した“ジャパン・ショート・ブース”をショートフィルムコーナーに初出展し、積極的にプロモーション活動を行っている。
 また、パレ・デ・フェスティバルに隣接する“リヴィエラ”は、世界中の映画会社のセラーとバイヤーたちが交渉を繰り広げる映画見本市(マルシェ)の商談の場。ここには日本の映画会社やTV局の多くも個別に海外セールス用のブースを出して自社の映画の宣伝と売り込みに励んでいる。

 ところで、これまで何度も言及してきた映画祭のメイン会場“パレ・デ・フェスティバル”だが、その中には、大スクリーンを誇るリュミエール(2300席)、ドビュッシー(約1000席)、中規模のブニュエル、小規模のバザンなど、仏映画人の名前を冠した大小様々な上映会場がある。さらには公式記者会見場や“批評家週間”部門の事務局、プレスセンター、レセプション会場から小試写室、地下のマーケット・ブースまでを備えた巨大な複合施設だ。1982年からカンヌ映画祭のメイン会場として使用されており、リュミエール劇場の入り口正面に敷かれたレッドカーペットを有名スターがフラッシュを浴びながら歩く姿はカンヌ名物の1つ。この映画祭以外にも様々なイベントが年間を通して催されており、会場前の広場には有名なスターや監督の“手形”が並んでいる。
(記事構成:Y. KIKKA)