本日は、第66回カンヌ国際映画祭の開催を明日に控えた5月14日の火曜日(現地時間)。世界中から集う報道陣の多くは、万全の態勢で取材に臨むべく、映画祭前日にはカンヌ入りをする。かくいう筆者も、例年はパリに何日が立ち寄った後、映画祭前日の夕方には現地入りしていたのだが、今年は、時間を有効に使える14日の深夜に日本を発ち(パリ滞在は空港でのトランジットのみ)、ニースに当日の朝(9:55am)に到着する便を選択。到着後、タクシーで宿に向い、荷ほどきもソコソコに映画祭のメイン会場パレ・デ・フェスティバルへと向う。公式プログラムを始めとする諸々の映画祭資料とIDバッジ(カテゴリー別にランク付けされ、コレがないと何処にも出入りできない)を受け取るためで、メイン会場に隣接した建物の地階にある受取場所は午前中から大混雑だ。

◆今年の映画祭公式ポスターの図柄は、オシドリ夫婦で知られたポール・ニューマンとジョアン・ウッドワード!

 毎年、注目されるカンヌ映画祭の公式ポスターの洗練された図柄だが、今年は『5つの銅貨』で知られるメルヴィル・シェイヴェルソン監督が、製作と脚本も兼務し、ファッション界を舞台にして描いたロマンティック・コメディ『パリが恋するとき』(1963年)で共演した若き日のポール・ニューマン(2008年に83歳で逝去)とジョアン・ウッドワードのキスシーンをモノクロ仕様でフィーチャー。とてもキュートでスタイリッシュなポスターに仕上がっており、評判も上々だ。

◆今年の長編コンペティション部門の出品数は20本、まさにビッグネームが揃ったラインナップは垂涎モノ!

 さて、映画祭の華といえば、何といっても“長編コンペティション”部門。日本から三池崇史監督の『藁の楯』(公開中)と是枝裕和監督の『そして父になる』(10月5日公開)が選ばれ、さらには審査員に河瀬直美監督が名を連ねたことでも注目された今年の出品作は20本(昨年は22本)だ。
 コーエン兄弟、ロマン・ポランスキー、スティーヴン・ソダーバーグらの最高賞受賞監督を初め、アレクサンダー・ペイン、アスガー・ファルハディ、ジム・ジャームッシュ、アルノー・デプレシャン、フランソワ・オゾンらビッグネームが揃っている。昨年は日本映画のコンペ選出が皆無でクヤシイ思いをしたが、2作品が出品される今年は、取材にも力を入れられるので喜ばしい限りだ。さらには、佐々木想監督の『隕石とインポテンツ』も“短編コンペティション”部門で上映されることも決定している。だだ、公式他部門の“ある視点”&“招待作品”、併行部門の“監督週間”&“批評家週間”における日本映画の上映が1本もないのはちと淋しい。

◆準備の真っ最中の14日は、メイン会場のエスカレーターもまだ作動しておらず、準備スタッフは大わらわ!

 IDバッジを受け取った後、今度は、あちこちからトンテンカン、トンテンカンと金槌の音が響き渡り、まだエスカレーターも作動していないメイン会場の階段を駆け上がり、3階に設置されているプレスBOXをチェックしに。これは、プレス(ジャーナリスト)向けの資料が、毎日どっさりと投入される“私書箱”みたいなもので、各個人専用のモノがあてがわれるのだが、その数には限りがある。カンヌには毎年、4000人以上のプレスが参加しているが、プレスBOXの数はその半分ほど。BOXのないプレスは一々資料を貰いにいかなければならないから、その手間と労力の差は大きい。
 実は、カンヌ映画祭のプレスには歴然たるヒエラルキーが存在し、ランクによって待遇に大きな差がある。優遇度は一目で判るようにIDバッジの“色”で区分され、最高位の色はホワイト(日本の媒体では4名のみが取得)。次いで黄色の◯印が付いたピンク、ピンク、ブルー、イエローと続く。プレスBOXの有無も含め、このバッチの色によって入場等の優先順位が全く異なるから、実にシビアである。

 まずはともあれ、山のような資料を置きに宿に戻って荷物の整理をし、遅めのランチを食べた後、再びメイン会場に足を向け、周辺の景観写真を撮影。昨年の映画祭期間中は悪天候に悩まされたが、本日は快晴。実にカンヌらしい陽気となり、陽射しが眩しい。まさに撮影日和だ。しかしながら、カンヌ名物である“リュミエール”劇場前のレッドカーペットはまだ敷かれておらず。。。う〜む残念! でも、この時期のカンヌは夜の9時を過ぎても日が暮れないので、遅い時間まで撮影できるので嬉しい。
 その後は宿で明日からのスケジュールをチェック。例年なら映画祭開催の数日前に発表されるプレス向けの試写&公式記者会見スケジュールが、どうしたことか今年は今日渡された資料で初めて判明。とりあえず映画祭前半の予定を立てることに。取材仲間と遅めの夕餉をとって、カンヌ取材の気勢をあげ、お開きに。さぁ、明日からは戦闘モードに突入だ〜!
(記事構成:Y. KIKKA)