「ナカメキノ」vol. 8『あの頃、君を追いかけた』マキタスポーツ&ダイノジ大谷が熱くアツく語る!(1/3)
映画と中目黒をもっと好きになっていただくために生まれた、無料の映画&トークイベント「ナカメキノ」。“中目黒の街”を舞台に、月に1度、素敵なゲストをお招きして無料の映画&トークイベントを実施、映画と中目黒をより楽しく体験いただける場をご提供しています。第8回を迎えた今回の作品は、今週末9月14日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開となる『あの頃、君を追いかけた』。大反響をいただいた第4回『建築学概論』以来、2度目となる劇場公開前作品の上映に、客席はあっという間に超満員。10〜50代まで、様々な世代のお客様にお越しいただき、映画ファンのこの作品に対する注目度が伺えました。
本作は2011年、ほぼ無名のキャストながら、台湾で社会現象を巻き起こす大ヒットを遂げ、香港では、チャウ・シンチーの『カンフー・ハッスル』の記録を塗り替えて、中国語映画の歴代興収ナンバーワンを記録。同年、東京国際映画祭での上映により日本でも熱狂的ファンを生んだ感動のラブストーリーです。これまでクチコミで話題となった『サニー
永遠の仲間たち』や『建築学概論』のように、青春の甘酸っぱさとほろ苦さを描いた物語で、映画ファンや映画評論家等を中心に、特にインターネット上で話題になりつつある作品です。
毎回、上映前・上映後のトークイベントも好評をいただいているナカメキノですが、今回のスペシャルゲストはマキタスポーツさん。音楽と笑いを融合させた新しい芸風で活躍する一方、俳優としても映画『苦役列車』でブルーリボン賞新人賞・東京スポーツ映画大賞新人賞を受賞。ドラマ「みんな!エスパーだよ」での演技も話題となりました。8/21にはメジャーデビューアルバム「推定無罪」もリリースし、その勢いはとどまる事を知りません。松崎まこと(映画検定1級の放送作家)、松崎健夫(映画文筆家)、中井圭(映画解説者)、そしてプライベートで客席で観ていたダイノジ大谷ノブ彦さんも急遽飛び入り参加し、自身の青春時代から濃厚トークが繰り広げられました!
■イベント概要
日 時 : 9月8日(日)
会 場 : バンタンゲームアカデミー
観客数 : 100名様(満席)
ゲスト: マキタスポーツ(ミュージシャン・芸人・俳優)、大谷ノブ彦(ダイノジ)
松崎まこと(映画検定1級・放送作家 以下、松崎A)、松崎健夫(映画文筆家 以下、松崎B)、中井圭(映画解説者)
■上映前トーク
中井:幅広い世代の方にお越しいただきました。超満員ですね。皆さんどうぞ見やすいように協力し合っていただければと思います。ナカメキノに来たことがあるという人?お、今回は半数がリピーターなんですね。
前回vol.7『横道世之介』は非常に盛り上がり、その後何にしようかと思っていたんですが、僕の中には確信がありました。もう「これであれば大丈夫」という作品を見つけてたんです。それがこれからご覧頂く『あの頃、君を追いかけた』です。松崎Bさんもお気に入りだとか。
松崎B:2年前TIFFで観たんですが、もう待ちきれなくて、台湾版のDVDを購入してしまいました。やっと日本公開、といった感じですね。
松崎A:僕は今年試写で観させていただんですが、そのとき既に周りには好きな人が多かったですね。
中井:Aさんのtwitterアカウントは「念仏の松」ですが、最近“念仏が泣くと映画があたる”という噂があったりします(笑)。『サニー
永遠の仲間たち』『建築学概論』もそうでしたね。今回の作品はどうでしょう?
松崎A:ネタバレしてしまうのであまり言えないのですが、ラストに「こうなるの?」というところがあって、そこでヤラれましたね。
中井:その話、上映後にしましょうね(笑)
松崎A:宣伝では「初恋」が表にでていますが、それは確かだけれど、原題の北京語を直訳すると「あの頃私たちが追いかけた女の子」という意味になるんです。その「私たち」という点に注目していただくと、単に初恋映画だけじゃない点が見えてくると思う。
松崎B:「今」の恋愛映画ではないですよね。昔の話。今と昔の恋愛って違うところも同じところもありますよね。監督に聞いたところやっぱりそこは気をつけてつくったそうです。今日はいろんな年代の方がいらっしゃっているので、リアルタイムの人もいれば、お父さんお母さんの世代って人もいますかね。自分と接点がない物語では決してなくて、普遍的なものがるということを感じていただければと。
中井:良い映画ってやっぱり普遍性がありますよね。
松崎A:台湾は親日で有名ですが、この映画はいかに台湾の人たちがいろんな意味で日本に親しんでいるかも分かりますよね。僕は毎年台北に行っているくらいの台湾好きで、ちょうど通い始めた頃に物語が始まってたりして、そういう意味で個人的な思い入れもあります。独特の空気感があるんですけど、そこもよく描いているなと思いますね。
中井:僕は監督と歳がひとつしか違わないので、ほぼリアルタイムですね。共感する部分が多かったです。学生時代にあったな〜という点が多々ありましたね。ところで最近、昔を振り返る良作が多い気がするのですが。
松崎B:今年の流行語対象候補になるであろう言葉に「今でしょ」がありますが、これも時代をついていると思います。勉強、好きな人に告白すること、仕事、なんでもいいんですけど、今やんないから「今でしょ」っていうのが響いてるわけで。ビジネス書には昔からいくらでも書いてあって、分かってるけどやってないんですよね。「今でしょ」が今世の中に響く理由は、単に言葉が面白いからではなくて、今映画で過去を描くことに通ずるんじゃないかなと思います。
中井:昔から「今でしょ」はあって、“今”この言葉が響くのはなぜでしょう?
松崎B:昔は社会ってずっと良くなると思っていたんですよね。でもバブルがはじけてそうじゃないということに気付き始めて。先日学生に聞いてショックだったのは、「自分たちは景気が良いときを経験したことがない」と言ってたんです。そうですよね。輝かしい過去があって、「今がんばる」というのが必要な時代になってきているんでしょうね。『ブレードランナー』は公開された当時はあまり評価されず、後年になってリアリティがでてきた頃に再評価されました。映画って辛い未来ことを描くよりも、夢を描きたいじゃないですか。だから今は過去の輝きを描くのかもしれないですね。
松崎A:それでいうと94年の台湾って自由化されて、上向きしかみれない時代ですよね。その後90年代後半に傾いちゃうんですが。『サニー』が描かれた韓国における86年も軍事化が終わった頃。『横道』は87年のまさにバブルで上しかみてない時代ですね。経験していない世代からみると、何か抜けるような輝きを感じられるんだろうな、と思いますね。
松崎B:文化的な面で言うと、80年代90年代の歌って今でもCMでも使われるますよね。今ではもうコード進行が出尽くしたけれど、あの頃は芳醇だった。その時代を過ごした人たちが今、ディレクターや作り手になっているから、目にするようになったのかもですね。
中井:そういう年代の人たちが作り手になるって、世代がここにきたんだなぁという感覚がありますね。
松崎A:どの世代にも響くと思います。『建築学概論』は綺麗だったけれど、割とこちらは男の子のガサツさがありますよね。
中井:良い意味のゲスさがありますよね。今日お越しいただいた皆さんは、映画が面白かったらTwitterでつぶやくなり、電車やカフェで大きな声でしゃべったりしていただければと(笑)
2年前のTIFFのときはどのような反響だったのでしょう?
松崎B:2回上映して、確かどちらも完売したんですよね。だからやっと公開かという感がありますね。
中井:配給先がなかなか決まらなくて、やっと公開に至ったそうですね。
松崎A:かつて台湾はアメリカ映画や香港映画ばかり上映されていましたが、今は違います。製作体制が整って、マーケットも広がってきて、今台湾の映画界は元気になってきています。アン・リーの『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』はほとんど台湾で撮っているんですよ。スコセッシの『沈黙』も台湾ロケだし、『藁の盾』の新幹線のシーンもそうですよね。
松崎B:あの新神戸の駅、どう見ても違うんですけどね(笑)
中井:これから台湾映画に注目しとけ、ってことですね!その中でもこの『あの頃、君を追いかけた』、ってことですよ、皆さん。
最後まで楽しんでください。