長崎を舞台に、グループホームで暮らす89歳の認知症の母親とのおかしくも切ない日常を描いた岡野雄一による同名のエッセイ漫画「ペコロスの母に会いに行く」。現在、多くの共感と感動をよび16万部を超えるベストセラーとなっており、待望の映画化が決定、いよいよ11月9日(土)に長崎先行上映、11月16日(土)より全国で公開されます。母親のみつえが暮らすホームを訪ねた、主人公・岡野ゆういちの頭をみつえがペチペチたたくなど、親子のほほえましいやりとりや、ゆういちが幼いころの家族で過ごした時間など、現在と過去が入り交って描かれる、ユーモラスながら、ときにほろりとさせられる物語が完成しました。

 監督を務めるのは『喜劇 女は度胸』、『男はつらいよ フーテンの寅』など卓越した人情喜劇で映画ファンを唸らせてきた、長崎県出身の森?東。2004年の『ニワトリはハダシだ』以来、実に9年ぶりの新作。主演は同じく長崎県出身の岩松了と、赤木春恵。W主演の二人は本作で初主演を果たしています。このたび、8月18日(日)に物語の舞台であり、撮影地の長崎で、特別完成披露上映会を開催、豪華ゲストを迎えての舞台挨拶を行いました。

■日時:8月18日(日) 17:00〜  ■場所:長崎ブリックホール(長崎市茂里町2−38)
■登壇者:岩松了(岡野ゆういち役)、赤木春恵(岡野みつえ役)、原田貴和子(若き日のみつえ役)、岡野雄一(原作者) 
※森?監督は体調不良のため欠席(別途メッセージあり) ※今回は、有料の完成披露上映会です。チケットを購入した方が観客です。

 物語の舞台でもある、長崎でのワールドプレミア上映ということもあり、35度近い猛暑日にも関わらず、ホールには地元を中心に約1,600人超の客が来場。岡野さんの原作マンガのファンだったことがきっかけで本映画を応援してくれることなった名誉応援団長の、田上富久長崎市長、地元・活水女子大学音楽部の学生たち(映画に出演)の挨拶に続き、キャスト陣が登壇すると温かい拍手がわきおこり、キャスト陣も思わず笑顔になった。
 W主演の一人、岩松は「長崎県川棚町出身です。長崎市は大都会でした笑(今日は)長崎県人のつもりでいます笑」と地元の観客へ向けて照れ隠しの挨拶、「暑中お見舞い申し上げます」と89歳の大女優・赤木からの季節の挨拶では拍手がおこり、岡野は「上映前なので何をしゃべっていいのか・・・知り合いばかりだからうかつなことを言えない」と、地元ならではの心配?!を口にしていた。

予定していた森?監督は体調を考慮して残念ながら欠席となったが、監督からの指名でメッセージを岡野が代読。「・・・お暑うございます。残念ですがもう少し生きのびたくて、大事を取って欠席させていただくことにしました」と、人情喜劇監督らしく“森?節”全開のメッセージに、場内からは笑いも起きた。

 撮影の苦労話を聞かれた岩松は「カツラ(ハゲ頭)がとにかく大変。毎朝3時間、はずすのにも1時間半くらいで都合5時間も毎日ヅラに費やした。カツラに何時間かかっているんだーと思いながらの苦行でした。誰のせいだろうって笑」と、映画の象徴でもある“ペコロス(ハゲ)頭”について話すと、隣にいる“本人(岡野)”は苦笑しながら「僕のせい。すいません…。でもハゲていたから母親ともおでこをくっつけあうことで通じ合えた。ハゲててよかったと思っています」とコメント。会場は温かい笑いに包まれた。その岡野は「撮影現場をよく見させてもらっていたが、ちょっとしたシーンにも丸1日かかったりしていて、僕がちょっとした思いつきで1コマを描いたばかりにあんなことになっていたとは」と原作の影響が与えた現場の苦労に恐縮した様子だった。

 岩松は演じるにあたり「岡野さんという人を知ろうと思って色々話すうちに、(岡野さんの)母親を思う息子の気持ちがすごくて、役に染み込ませたいと思った。自分があまり親孝行できなかったのを、映画を通して、役柄を通して赤木さんと接することで、実際の母にもできなかったことをやって孝行したい気持ちだったし、そういうことを思わせてくれる作品だった」と認知症の母親と向きあう息子の演技にかけた思いも話した。

 その母を演じた赤木は、「これまでは憎たらしい姑役ばかりだったものですから(笑)。なんとか岡野さんが描く、かわいらしいおばあちゃんになれるように心がけた」と、新鮮な役柄だったことを伺わせた。長崎出身で、原田知世と「結婚」(‘93)以来約20年ぶりの姉妹共演を果たした原田貴和子は「長崎出身で姉妹そろって出演できて嬉しいです」とかみしめて挨拶。「長崎弁でのお芝居は新鮮でした。みつえ(貴和子の役柄)は、ちえこ(原田知世演じる、みつえの親友役)との絆が本当に支えになって生きていくけれど、これを姉妹で演じることができて幸せ」と、長崎と役柄とに感謝しきりだった。最後に岩松が「介護の問題がどうだ、という話ではなく、親子の物語として観てほしい」と挨拶、笑いあり涙ありの“喜劇系介護映画の本作さながらの盛り上がりを見せた舞台挨拶は終了した。