終戦記念日の15日、日比谷図書文化館(東京・千代田区)で、戦時下に本を疎開させたという史実に迫ったドキュメンタリー映画『疎開した40万冊の図書』のトークショーが行われ、ナレーションを務めた俳優の長塚京三(68)が、作家の早乙女勝元(81)、監督の金?謙二(58)らと共に出席した。
 
  同作は、第二次大戦中文化を守るため、当時日比谷図書館長中田邦造氏と古書鑑定家の反町茂雄氏を中心に、都立一中(現日比谷高校)の生徒らが日比谷図書館から蔵書を郊外に疎開させていたという知られざる真実を描いたドキュメンタリー映画。疎開に参加した生徒、蔵書をかくまった土蔵の持ち主らの証言で過酷な当時を振り返る。
 
  トークショーに出席した長塚は“疎開”という言葉について聞かれると「僕が生まれる前に父が浜松で持っていた工場が艦砲射撃の被害に遭い、母の郷里に疎開したので、実は僕は疎開先で生まれました。劇中で都立一中生が図書疎開の時に命がけの作業だったにも関わらず楽しそうに話しているのが印象深い。好奇心が本を守ったんだな、と感動を覚えました。」と人と文化、戦争に対して想いを語った。
 
作家の早乙女勝元は「最初この映画を観た時に直感ですごくいい話だなと思いました。私も12歳の時に鉄工所に駆り出されましたので、戦争責任がゼロとは言えない。その中で本を運んだ当時の都立一中生たちは幸運だと思います。」と自身の戦争体験を交えて映画を評価。

 監督の金高は「文化を守る、本を守るという事は素晴らしい事。僕も学校を停学になった時に厳格な兄に家に閉じ込められて色んな本を渡された。その時に読んだ森鴎外の小説が僕のその後の人生を考えさせてくれました」と本を読み継ぐ事に対する熱い想いを語った。
  今後は9月17日と10月15日に日比谷図書文化館、11月2日より都立写真美術館ほかで上映する。