「ウォーターボーイズ」(2001)では男のシンクロ、「スウィングガールズ」(2004)では女子高生のビッグバンドジャズ、「ハッピーフライト」(2008)では今まで見たこともない航空業界の裏側を面白おかしく描き、「ロボジー」(2012)ではなんとロボットに入ったおじいちゃんが大活躍! これまでユニークなテーマに目をつけ、日本中に笑いと感動を届けてきた矢口史靖監督が「林業」をテーマに、染谷将太、長澤まさみ、伊藤英明という名実ともに日本を代表するキャストを迎えておくる最新作「WOOD JOB(ウッジョブ)!〜神去なあなあ日常」。
2010年度本屋大賞第4位を獲得、あの宮崎駿監督も絶賛した、シリーズ累計発行部数33万部を超える三浦しをんのベストセラー小説『神去なあなあ日』」を原作に、矢口監督が丹念な取材の成果を加味して脚本を起こした、誰も見たことのない“青春林業エンタテインメント”が、1ヶ月半に渡る過酷な撮影を終え、7月31日(水)にクランクアップしました。
原作の世界観と矢口監督による徹底したリサーチを忠実に再現するため、三重県の山間部を中心にオールロケで撮影が行なわた本作では、大木を切り倒す「伐倒」や、20メートルに及ぶ高所での「種取り」など、本格的な「林業」を染谷将太、伊藤英明らが自ら実演しました。染谷は劇中の勇気同様にチェーンソーを自在に使いこなすまでに成長し、伊藤は近年の出演作品「海猿」シリーズや「悪の教典」で演じたキャラクターに勝るとも劣らない、強烈でアグレッシブな「荒ぶる山の神」「林業の天才」ヨキを熱演! 役作りの一環で、髪型もこれまでにないほどの超短髪にして挑みました。また、男勝りなヒロイン・直紀を演じた長澤は、バイクの運転や、舞台となる三重の独特なイントネーションの方言に挑むなど、矢口監督のもと、各キャストが圧倒的なリアリティでそれぞれのキャラクターを作り上げました!
森で働くことに青春をかける一人の若者の成長物語を軸に、ユニークでコミカルなシーンに笑い、ダイナミックでワイルドなクライマックスに手に汗握り、人間と自然が織り成す温かな感動のエンディングに泣いて… 現代の閉塞感をぶっ飛ばし、“なあなあ”と生きていく勇気がふつふつと湧いてくる!! 本作は2014年初夏全国東宝系にて公開となります。どうぞご期待ください!

《コメント》
染谷将太さん
撮影が進むに連れて、林業という特殊なモチーフを扱った映画を、CGを殆ど使用せず役者も吹き替えなしでやるというこだわりが、最近の映画ではあまり無い部分だと思うので、そこに加担できるということがだんだん嬉しくなりました。
“勇気”というキャラクターに関しては、彼が成長過程でどう変わっていくのかが、監督も僕もこだわっていたところでした。あと、一番矢口監督と深く話した事は、役者の感情はそんなに映らないものだから、形にしないとならないという事です。特に今作は感情を情報として伝えれば伝えるほど面白くなると思って演じました。ある種、矢口監督と共犯者になれたという感覚がありました。
また、今作の撮影で学んだのは、相手が自然だと何が起こるかわからないという事です。誰も想像しない角度からの風が吹いたら、思いもよらぬ方向に木が倒れて事故につながる。「木も生き物なんだな」と思いました。山の中は、街で映画の撮影をしている時と時間の流れ方が違いました。今振り返ると、撮影は1ヶ月半位ですが、不思議な時間を刻んでいたように思います。
35mmフィルムの撮影は年に1、2回あるかないか。ましてや自分が主演でフィルムの映画に出ることは一生ないな、と思っていたので、そういう意味でもこの作品は宝物です。
今まで見たことがない映画になるんじゃないかと勝手に思っています。本当に完成が楽しみです。

長澤まさみさん
憧れの矢口組に参加できて本当に幸せでした。監督の演出は自分が思ってもいないことが多く、刺激になりました。
出てくるキャラクターの個性が際立っていて、人の温かさ厳しさが伝わり、人との繋がりを持って生きたいと思える作品だと思います。豪華なキャストの皆さんと個性豊かな現場の方々に囲まれ、自分もどのように演じていこうか考えるのがすごく楽しかったです。
山に神様がいるといわれるように、木も植物も生きていて命あるものなので一筋縄ではいかず、「人間が思うとおりに事が運ぶなんてことはないんだ」と感じました。生きているものに対してちゃんと接する、向き合う、という姿勢が林業の人たちに感じられ、生半可な気持ちで撮影に臨んではいけないと思わされました。
染谷くんは年下なのに先輩の貫禄があり、落ち着いた人。オーラに圧倒されつつ、私も頑張らなきゃと思いました。
一番印象的だったのは撮影の初日。”直樹”の家に”勇気”が訪ねて来るところです。ワンカットの中にたくさんキャラクターがいて、すごく賑やかで可愛らしくて、矢口監督作品らしい雰囲気がとても印象に残りました。

伊藤英明さん
思わずクスッと笑ってしまうような監督の演出が楽しかったです。
林業のプロ中のプロという役どころを演じたのですが、山の中での作業は、やはり危険も伴うし、少しの角度の違いや風などでも(木が倒れる方向が)変わってきてしまう。また撮影となると、「これ一回にかける」という、芝居とは別の部分での緊張感がありました。自然相手に、木を切るというところでは、今までにないプレッシャーを感じながら撮影に挑みました。僕らよりずっと長く生きている木を倒させてもらっている。かつてない感謝の気持ちを感じました。
染谷くんと一緒に演技できるというのは、この作品を受けた要因にもなっています。すごく繊細な感じだけど芯はものすごく骨太で、実は芝居以外は全て苦手なんじゃないかと思うくらいこの仕事が合っている。彼と芝居で向き合うと、いろんなエネルギーをもらえました。映画は2時間ほどになると思いますが、1年間の時間の積み重ねは芝居の中で出せたんじゃないでしょうか。

矢口史靖監督
ここまでの長期地方ロケ、しかもほぼ休み無しというのは初めて。過酷な撮影ばかりでスタッフみんなにも申し訳ないな、という気持ちがありつつも、撮れてる映像が非常に面白いので勘弁してくれるんじゃないかなと…。
林業関係者への取材の時には「大体この位だろう」と想像していたシーンも、実際カメラがその(木の)高さに上がってみると非常に高くて目眩がするほど恐ろしい。とても危険な場所でみなさん仕事をしているんだな、と改めて実感しました。撮影が進むたび、背筋が伸びるというか… 背筋が凍る思いをしました。
神去村の暮らしや人々は個性的で、都会暮らしの主人公が一晩でKOされちゃうくらい強烈にしたいと思っていました。ものすごくダメダメな主人公と、受け入れがたいほど強烈な村人たち…。普通の人が一人も登場しなくて、観客が感情移入にとまどうようなキャラクターばかりにあえてしています。でも気がついたら観客誰もが、登場人物全てを好きになってしまっている、そんな映画にしたいなと思って作っていました。
見せ場としては林業シーンもさることながら、祭りシーンも大変でした。約一週間を費やして撮影したのですが、日本映画では見たことのないスケールと奇抜さで、とてつもないお祭りシーンになったと思います。もしかしたら日本のどこかで実際に行われているのかも、というリアリティーを保ちつつ、世界一の奇祭を目指しました。この挑戦が報われるといいな、と思います。