この度、映画『ひろしま 石内都・遺されたものたち』の公開を記念致しまして、映画にも登場された写真家の石内都さんをお呼びし、トークショーを行いました。

●日時:8 月 1 日(木) 18:00〜
●場所:岩波ホール
●登壇:写真家・石内都さん×リンダ・ホーグランド監督

アメリカ人監督によるドキュメンタリー映画をとおして広島と長崎、そして今日の核と原子力の問題を考える企画として、リンダ・ホーグランド監督の『ひろしま石内都・遺されたものたち』が、岩波ホールにて絶賛公開中となっている。今年も 8 月 6 日を迎えようという中、映画で紹介されている写真を撮影した石内都さんをお迎えし、二人が“ひろしま”と出逢うまで等、映画には映し出されない背景について語った。

6 歳〜19 歳までを横須賀で過ごしたという石内さんは、常に横須賀の街に漂う独特の違和感を覚えながら育ち、写真を始めて自分には何が撮れるのかと考えた時、思春期に感じた痛みを表現しようと「絶唱、横須賀ストーリー」を発表した。2007 年に初めて広島へ行き、広島をテーマにした写真は既に沢山の人に撮り尽くされているという考えが覆されたとのこと。「mother’s」を発表したときと同様「ひろしま」も、“モノが語りかけてくる”という感覚に非常に興味があったと話す石内さんの撮影手法は、35 ㎜の手持ちカメラを使い自然光で撮影をするらしい。モノが語りかけてきたその瞬間、出会い頭にスッとシャッターを切るので何度もシャッターを切ることはしないという。その話を受けて非常に共感したリンダ監督も、映画を撮影するときは膨大な時間カメラを回すことは一切しないと共通点を見出した。

そんな二人の出会いはニューヨーク。リンダ監督は石内さんと「決して石内さんを主人公にしない」という約束を交わし、石内さんの写真52 枚を主人公に今作を制作した。今までに 200 本以上の映画字幕の仕事をしてきたリンダ監督は、自分の中には台詞から受けた言霊が遺っているという。石内さんは「それがリンダの映画にある、何とも言葉にならないような感覚を生み出したのだと思う」と絶賛した。

宣教師の娘として高校生まで日本で育ったリンダ監督は、小学校の授業中、先生が黒板に「原爆 アメリカ」と書いた途端、自分へ向けられたクラス全員からの視線に耐え難い思いを味わったという。その加害者意識を抱え続けたまま、贖罪のつもりで本作を完成させた。「今はメディアの方々や皆さんが私を見てくれている。それはあの頃と違って、この作品があるから見てくれている。これでようやく生まれて初めて、今年 8 月 6 日を広島で過ごす勇気が出ました」と喜びを語った。