この度、真木よう子7年ぶりの主演作である『さよなら渓谷』(原作:吉田修一)が、世界四大映画祭の一つであるモスクワ国際映画祭(6/20〜6/29)のコンペティション部門へ出品されました。

 現地時間6月28日(金)14:30頃、現地メディアへ向けた記者会見を行いました。

出席者:大森立嗣監督、真木よう子、大西信満 
場所:Festival Press Centre “Theatre Kinoactera”(現地時間 14:15〜19:45)

集まった多くのメディアからは、主演の真木さんに質問が集中し、主演女優賞への期待の高さが伺えた。なかにはヘビーな質問もあったが、真木さんは臆することなく答え、凛とした姿が印象的だった。

Q. 映画を観て辛いストーリーだと感じました。実際に撮影されていて何を感じながら、撮影に臨んだのでしょうか?
真木さん「私自身、とても過酷でした。特に彼女の人生の中で最も不幸な時期、映画の中では回想シーンになっていますが、その時期を演じていたころが一番辛かったです。食事もままならなくて…。ただ、撮影チームに恵まれていたので、スタッフに支えられてなんとか乗り切れました。」

大西さん「自分は男なので、女性の本当の辛さは分からないというのは感じていました。実際に秀介と同じことをしたとしたら、自分はどうするだろう、というのをずっと考えながらの撮影でしたね。撮影中は、真木さんはかなことして、自分は俊介としてその場所に生きていたので。男として、取り返しのつかないことをした中で、どうしたら彼女が前を向けるのか、絶望の中でも光を感じて生きていけるのかをひたすら願って寄り添いました。演じるというよりかは、その短い時間を生きたという感覚ですね。」

Q.幸せになるために一緒にいるのではないのであれば、なぜ二人でいるのでしょうか?
監督「彼らは二人でいることで愛をみつけます。愛をみつけられたからこそ、彼らは自分の人生をやりなおすことができたのです。人生をやりなおすためには、二人でいることが必要だったのです。」

Q.この役を通して得たものは?モスクワの印象を教えてください。
真木さん「この役を演じるにあたり、レイプ事件の本をたくさん読みましたし、資料をたくさん見ました。普段の生活では耳に入ってこないような体験がそこにはありました。ここで言うことではないかもしれませんが、このような体験をする女性が世界から生まれてほしくないと思います。この映画のかなこは俊介と過ごして、希望をみつけられたと思います。私はかなこを演じて、このような強い女性を演じられたことを誇りに思いますし、困難だったけれども演じきれたことが役者人生の希望となりました。(モスクワの印象は)建物がきれいでした(笑)。」

Q.この映画でもっとも監督が訴えたいことはなんだったのでしょうか?海外で伝えたいことは?
監督「海外とか日本とかは特に考えていなくて、この映画の主人公たちが、この事件で社会の外にでてしまい、色々なものを失ったからこそ、他の人には触れることのきない純粋な愛のようなものに触れられたのではないかと。それを伝えたいと思いました。」