4月27日(土)より公開となった鬼才・ミシェル・ゴンドリー監督の映画『ウィ・アンド・アイ』公開記念トークイベント第二弾を行いました。登壇ゲストは昨年の映画賞を総ナメにした『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督と、一昨年に大ヒットした『モテキ』や、前クールで話題を集めたTVドラマ「まほろ駅前番外地」の大根仁監督です。

■日 程:5月9日(木) 18:00〜18:30 
■場 所:シアター・イメージフォーラム
■登壇:吉田大八監督、大根仁監督  MC 矢田部吉彦氏 (東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)

MC:お二人から見た、このゴンドリー監督の青春映画はいかがでしたか?

大根:あまり事前に情報を入れずに観たのですが、さすがゴンドリー、すごく変な映画を作るなと思いました。もう一度観ないと真意を掴みきれないなと。きっとゴンドリーの中で映画を色々やり切って、アマチュア芝居を撮りたくなったのかなと思いました。ちょいちょい変なところがあるんですよね。

吉田:直近の映画で高校生を撮ったので、何となく比べながら観てしまいました。高校生でも、凄く大人びて見えたり反対に時に幼く見えたり、途中からは高校生という以前に、アメリカ人はやっぱり気持ちの表現の仕方が違うなとかそういう見方をしていて、こんなことを考えながら観ている自分はやっぱりマジメだなと思ってしまいました。

MC:青春映画というよりは、作り方に目が行ってしまうと?

吉田:そうですね。あと、ああいうバスには乗りたくないなと思いました。前半は特にいたたまれなくなって、これにどうやって共感していけばいいんだって不安に思いましたよ。

MC:これまでのゴンドリー監督の作品はご覧になっていますか?

大根:全部観ています。『僕らのミライヘ逆回転』とか大好きですし、『ブロック・パーティー』は今でも時々見返します。

吉田:PVを撮っていた時代が好きで、この人がどんな映画を撮るんだろうと楽しみにして観た『ヒューマンネイチュア』が印象に残っていますね。

大根:この『ウィ・アンド・アイ』もそうですけど、どの作品にも手作り感がありますよね。温かみがある感じ。細かいところにもこだわりがあって、たとえばバスの中から人が減って日が暮れてくるにつれてレンズを使い分けていたり。これを20日間で撮ったのはすごいなと思います。

MC:今回ゴンドリー監督は自身の高校時代の体験を元にこの映画を作っていますが、お二人は自分の体験を作品に反映する事はありますか? 

吉田:『桐島、部活やめるってよ』に関して言えば、ありませんでした。自分の高校時代からかなり時間も経っていましたし、若い役者とワークショップをすることを通じて作りこんでいったんですが、それが結果的には良かったように思います。

大根:個人的な意見ですが、『モテキ』と『桐島〜』とこの『ウィ・アンド・アイ』は、ルサンチマンから描いていない、ヒエラルキーの色々な層のそれぞれの悲しみや感情をちゃんと描いていて、どちらの視点も大事にしているところに共通点を感じました。そういう意味では青春映画と括ってしまうのはもったいないなと思います。あと最近観た映画で、『コズモポリス』『ホーリー・モーターズ』とこの『ウィ・アンド・アイ』が全部乗り物の中の映画だというのが気になりました。車内映画が世界的に流行しているのかなと。クローネンバーグ、カラックス、ゴンドリーの巨匠3監督がこぞって皆車内というのは何でだろうと思って。

MC:それは面白い共通点ですね。ワークショップの話が出ましたが、ゴンドリー監督は今回撮影にあたって若者たちに3年に渡ってインタビューを行ったそうです。

吉田:時間かけすぎですよね。大根さんも『恋の渦』でワークショップを行ったんですよね?

大根:ワークショップを1週間、撮影で4日間です!

MC:お二人は若い役者の話を聞き込む方ですか?

大根:聞きません。脚本があるし、誰がどのキャラクターに向いているか探る程度には話しますけど、突っ込んでは話さないですね。

吉田:僕も聞きません。相談されても困りますし。自信のない顔してるなと思っても、なんとか自分で乗り越えて欲しいので。

大根:お金を払ってますしね!

吉田:『桐島〜』では、元々モデルで演技は初体験という子たちもいたんですけど、やや追いこむ形にしました。周りはできてるでしょって。限られた時間の中ではちょっと乱暴になりますけど、自分で動いてもらうようにしますね。

大根:『桐島〜』は合宿をしたんですよね?

吉田:演技指導というよりは、現場に入る前に仲良くなってもらうだけで違うだろうなと思って。高知で合宿して、学校のように夕方には終わって夜部屋で集まっていたみたいなんですけど、結局演技の話になって、お風呂でリハーサルが始まったりしたみたいです。『ウィ・アンド・アイ』のメイキングも見てみたいですね。

MC:撮影はどういう風に映りましたか?

吉田:キャストのバスの座り位置を調整しているのかとか、カメラの台数が気になりました。

大根:撮影用じゃなくて、普通のバスなんですよね?カメラ2台くらいかなあ。

吉田:実は全部セットで、グリーンバックだったりして!?

MC:では最後に、もしお二人がこのバスの中に乗車していたとしたら、誰だと思いますか?

吉田:マンガボーイですかね。いや、ギターを弾いていた弱い方の子かもしれません。

大根:好きなキャラクターはあのゲイのカップルだったんですけど、僕は、ゲイではないので…。ヘッドフォンの子ですね。わりとどのグループにも属さずいたので。

吉田:あのヘッドフォンの子はいきなり出てきてびっくりしましたよね。こんなカッコイイやついた?って。でも初めから見直すと実は最初の方にチラっと出てきたりして、本当はずっといて、周りを見ていたんだなって。その辺りもうまいですよね。

●映画監督ならではの視点で本作を掘り下げてくれた両監督。共通点も多いお二人の今後の活躍に期待です!