5月5日(日)、徳島で開催されたアニメイベント「マチ★アソビ Vol.10」にて、新海誠監督による待望の新作『言の葉の庭』の公開を記念し、新海監督と声優の水野理紗によるトークショーが行われた。
晴天に恵まれた初夏の昼過ぎ、会場となった東公園ステージには、強い日差しにも負けず300人ほどの熱いファンが押し寄せ、新海監督のトークに耳を傾けた。

新海監督:この映画は5月31日より公開されるんですが、徳島ではufotable CINEMAで上映してもらいます。この映画を知らない方も、このトークショーを聞いて覚えて帰っていただければと思います。

水野さんには最初の長編『雲のむこう、約束の場所』でお手伝いいただきましたね。
『秒速5センチメートル』では花苗のお姉さんの他にも、「水野理紗」という役で出演してもらっています(笑)。水野さんには“働く女性の代表”みたいなイメージがあるんです。『星を追う子ども』では妊娠している池田先生の役を演じてもらいました。
『言の葉の庭』では固有の役はないんですが、“お守り”みたいな意味でアフレコ現場にいていただきました(笑)。

水野:徳島にも“お守り”しにきました(笑)。

新海監督:さて、それでは『言の葉の庭』の話をしていきたいんですが、水野さんはいち早くご覧いただいていかがでしたか?

水野:毎回そうなんですが、「なんでこんなに泣かせるんだ!」って(笑)。
それにとても繊細で、色んなものに象徴が込められていますよね。どんどん高まっていくドラマにも一つとして無駄なものがなくて。涙なしには観られない作品ですね。

新海監督:泣かせようとして作っているわけではないのですが(笑)。だけど水野さんのように、誰かの心を動かせたのであれば嬉しいですね。

新海監督:それでは、花澤(香菜)さんの話をしましょうか。ユキノの役を花澤さんにお願いするとき、すごく迷ったんですよね。27歳の役なので、25歳以上の方にお願いしようと思ったんですが、花澤さんのテープが送られてきて。「規定の年齢に達してないのに……」って思ったんですが(笑)。
ただ花澤さんって、ドキってするくらい甘やかな声を、ふとした瞬間に漏らすことがあるんですね。当時23歳だったんですが、そのギャップが良かった。生意気かも知れないけれど、花澤さんの新しい魅力が引き出されていると思います。

水野:雨の表現はいかがですか?

新海監督:雨にこだわった作品ですね。映画の中で時間が経つにつれ雨の種類も変わっていって、様々な種類の雨を描いています。

水野:このシーン、地面に落ちる雨の表現はこだわりが見られますね。

新海監督:それから、空気中に降っている雨そのものをどう描くか、という点にもこだわりました。今はそういった表現もCGで可能になっていますから。昔のアニメは(雨を表現するのに)線を引くだけでしたけどね。

エンディング曲は「Rain」に決まっていたのですが、秦さんとお話をする中で、ご自身でも曲を作りたいと言って下さったんです。「言ノ葉」というイメージソングなのですが、CDのジャケットは僕が絵を書いています。また、ミュージックビデオも映画のカットを使いながら、現在ディレクターズカットというかたちで制作しています。
こちらも楽しみにしてください。そんな「言ノ葉」を、今日は聴いてもらいましょう。
♪楽曲♪
(会場拍手)

水野:作品を通して歌にしたかった気持ちがよく解りました。この曲で歌われているのは、タカオくんの気持ちですね。

新海監督:制作過程も印象的でした。最初のデモは秦さんのハミングだったんです。
だけど、ところどころ言葉になっているところがあって。まずはメロディが思い浮かぶんでしょうね。それから、「ここにはこんな言葉を入れたい」といった風に、詞ができていく。「こんな風に出来ていくんだ」って知ったし、あらためてすごいなと思いました。

水野:歌詞もちゃんと読んでほしいですね。

新海監督:僕としては、ぜひ映画を観た後に読んでもらいたいですね。