「5分に1度何かが起きてスクリーンから目を離せない、『ジャパニーズ・ミッション・インポッシブル』と呼べるようなスピード感、かつ中学生がトラウマになるような過激さ溢れる映画にしたい」と撮影前に不敵な笑みを浮かべていた三池監督だが、その言葉通り「土竜の唄」は考えうるすべての要素を詰め込んだ映画だ。コメディでありながら、殺陣、カースタント、ガンアクション、ワイヤーアクション、更には特殊メイク、刺青、CG、衣裳もオーダーメイド…… と、これほどまでに様々な要素がてんこもりの作品は珍しい。

エキストラの動きなど細部の演出にもこだわり、カット数も通常の映画とは比べ物にならないほど多い。上原寿一プロデューサーは「主人公の玲二がヤクザに潜入していく中で色んなピンチに陥り次から次へとシーンが展開していくお話なので、ほぼオールロケでやる、ということは台本を作る段階で決めていました。こだわりのロケ場所を探し続けた結果、関東全域(栃木県宇都宮市、茨城県土浦市、栃木県佐野市、群馬県前橋市、群馬県沼田市、神奈川県横浜市、東京都など)及び静岡県を制覇する撮影になった」という。“歩いてヤクザのビルに入っていく”というシーンを撮るためだけに前橋に出向くなど日々現場が動き、一時、美術・装飾チームが4班体制で動いていたこともある。これには、百戦錬磨で知られる三池組のスタッフも『3本の指に入るほど大変な撮影だった』と振り返る。目まぐるしく変わる展開、決して手を抜かない現場ゆえにキャスト・スタッフとも限界を超えることとなったが、その撮影の最中に三池崇史監督は「どんなにつらいスケジュールでも、面白みや価値を感じれば1ヶ月や2ヶ月無茶やっても死にはしない。そうして仕事をしていると、役者達の仕事がカットの中に集約されて光ってくる。それが一番の喜び。ああ面白い! いくらでも撮っていたい! と思う。いずれ撮影が終わるその時には、まだまだ生田斗真を撮りたいと思っているだろう」と語っていた。そして自身の発言通り、三池監督はクランクアップ時に珍しく淋しそうな顔を見せた。

15年以上前から三池監督とタッグを組んで作品づくりを続けてきた坂美佐子プロデューサーは「生田君がクランクアップする前日、三池監督が珍しく淋しがっていました。『もう明日終わっちゃうのが信じられない。淋しいね』って。いつもクランクアップ前になると『やっと終わる!』と喜んでいるスタッフも、今回は生田君のアップをとても淋しがっていました」と語る。また上原プロデューサーは「朝イチから夜中まで続く撮影で、現場の皆で飲み行ったりするなど撮影以外のコミュニケーションをとる余裕はありませんでした。にも関わらず、生田さんは、三池監督をはじめとするスタッフさんとも息ピッタリで、まるで昔から三池組の常連でいるかのような一体感でした」と驚きを語った。

初の三池組での洗礼を受け、豪華共演陣と共にドップリとその世界に潜った生田斗真は、クランクアップ時に「この映画は、面白いシーンがたくさん出てくるコメディです。撮影中は、三池さんが一番最初に大きな声で笑ってくれて、キャラクターに感情移入をしてくれました。そんな姿を見て、僕等はとても勇気が出ましたし、この人についていけば大丈夫、この人と心中してもいい! と思いました。この映画は、乗ったら最後! 上から下に真っ逆さまに落っこちたり、色々なところをぐるぐる回ったり、まさにジェットコースターのような仕上がりになると思います。最高に興奮できるアトラクションの完成を、僕自身ワクワクしながら待っています!」と晴れ晴れとした表情で語った。