4月13日の初日以来、土日だけでなく平日にも満席が 続出している、イギリスの名匠ケン・ローチ監督の『天使の分け前』。いよいよ本作を最後に5月31日で閉館となる銀座テアトルシネマのさよな らイベントが、「さよなら!銀座テアトルシネマ×スコティッシュナイト」と題して、映画の舞台であるスコットランドにちなみ、スコットランド の伝統楽器
グレートハイランドバグパイプの奏者・糟谷 肇さん(東京パイプバンド)を迎えて開催された。東京パイプバンドのメンバーとして、グラミー賞常連のザ・チーフタンズとも共演経験のある名パイパーの糟 谷さんは、実はスコットランド生まれの曲と言われている名曲「アメイジング・グレイス」を演奏しながら登場。さらに数曲を披露し、ハイランド 地方の雄大な風景に響き渡るような音色で観客を魅了。またトークでは、スコットランドの魅力として、映画『天使の分け前』の重要なモチーフで あるスコッチウイスキー、人間くさいスコットランド人、英語とは思えないスコットランド訛りなど様々な魅力を観客に紹介した。

 そして最後の曲として司会が「きっと誰もが知っている曲、スコットランド語のタイトルは“オールド・ラン グ・サイン”」を紹介、始まった曲は、日本でも別れの曲として有名な「蛍の光」だ。実は「蛍の光」はスコットランド民謡が原曲。といって も、しっとり始まりながら、しだいにリズムを早め、ダンスチューンのような明るい演奏に。「この曲には、スコットランドの詩 人ロバート・バーンズが書いた詩もついているが、そこには、仲の良かった古き友と再会して酒を飲む。そして再会を祝うと共に、昔を懐かし もうという意味が込められ、スコットランドでは大晦日などによく演奏されて皆で輪になって踊る」(糟谷さん)との解説を受けて、銀座テアトルシネマの野崎支配人が壇上に上がり、「閉館まで、およそ1か月。劇場に足を運んでいただいたお客様に感謝できるようなイベントができないかと思っ ていました。『天使の分け前』というタイトルにはたくさんの意味が含まれています。劇場にとって天使はお客様です。わたしたちの感謝の気 持ちとして受け取っていただけたらうれしく思います」と挨拶。さらに「当館は5月31日で閉館してしまいますが、この劇場でかかっていたような質の高い作品は、有楽町駅前 にあるヒューマントラストシネマ有楽町で引き継いでいきます。皆様に、映画館で楽しむ、ということを続けていただけたら嬉しいです」と、 ただのお別れではなく、まさしくスクリーンを通していつでも「再会」できる、映画館文化を未来につなげていきたいという野崎支配人の挨拶 に、観客から温かい拍手がまきおこった。

映画『天使の分け前』は銀座テアトルシネマほかにて全国公開中。