東京公開を経て4月13日(土)から大阪市西区のシネ・ヌーヴォにて公開中の『あれから』。
4/22(土)、篠崎誠監督のトークショーのレポート第2回です。
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映画『あれから』制作のきっかけになった篠崎誠監督の友人は、その後結婚しているが、作品では主人公がある決断をするところまでを描いている。
「僕としてはヒロインの祥子さんには幸せになってほしいけど(笑)。今の時点ではそこまで作り込むと、どこか嘘をついてしまうような気がして」

司会の影山理氏(シネ・ヌーヴォ代表)は、印象的なカットに言及。
「靴の紐を結ぶカットに意思を感じたし、思いが表情に現れていました」
靴屋を営むヒロインの日々の仕事の様子が丁寧に描写され、このカットをより効果的にしている。

篠崎監督は
「過去は変えられないけど、ここから先は…もちろん変えられないこともあるけど、自分の意思で選択し続けるしかないと感じています」

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学生たちと一緒に作りあげた、その感覚を忘れたくない
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会場から、『死ね!死ね!シネマ』に続いて学生とのコラボ作品となった『あれから』について、「アプローチが変わったり、反映されたことは?」との質問が上がった。
商業デビュー作『おかえり』は自主映画としてスタート。『死ね!死ね!シネマ』は途中から学校の課題を離れ、篠崎監督が一人でカメラ回して撮っている。篠崎監督は、8ミリで撮っていた中学・高校の感覚だったと語る。
「自分では意識してないんですけど、きっとなにか変わったでしょうね」
「『あれから』は、自主に近いけどプロのカメラマンがいる。その二つをうまく融合したかったんです。クレジットに撮影助手や助監督という名前は入れず、撮影部、録音部、というくくりにしました。序列じゃなく作ったと言う思いです」

結婚式会場のシーンは、プランを説明した上で助監督と撮影担当の学生に撮影を任せたり、「自分ならどう演出するか考えながらやれるといいよね」と、エキストラの動きを助監督に任せ見守った。
撮りこぼしを後日撮り直すことになり、同じ場所が使えないならどう見せるか。話し合って学生たちと一緒に作って行った。その感情を忘れちゃいけないと言う篠崎監督。
「映画を職業にしてきて、何処か自分のやり方が正しいと思っちゃうとあんまり良くない。最初は誰だって素人なんです。学生を見てるとそれを思い出します。それと同時にプロの人は凄いんですけど(笑)能率だけではないところで映画は作られているんです」
「『死ね!死ね!シネマ』と『あれから』は、これから映画を作り続ける上で 忘れられない映画になると思います」

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公開するまでが映画づくりだと学生達に見せたかった
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『あれからは』クラウドファンディングで宣伝費を集めている。クラウドファンディングとは、インターネット上で企画をプレゼンし、出資者を募る。一定期間に目標金額を達成すると目的のために資金を利用でき、出資者は予め設定された特典が得られるしくみ。

クラウドファンディングの経緯については、
「映画が出来上がった時点で授業としては終わっているんです。学校としては上映するのは自由だけど、宣伝費は出せないということだったんです」
「内々だけで上映会して、“思い出が出来ました。お終い”ではなくて、東京以外の興行も含めてちゃんとやるのが目標でした。学生たちに“観せるまでが映画だよ”ってことを見せたかったんです。プロデューサーの松田さんは僕以上に大変でしたが、呼びかけてもらって色々な人の善意に助けられました」

上映の場がたくさんあり、色々な映画が上映されているように思えるが錯覚に過ぎないと言う篠崎監督。
「結局一部の大手の作品がスクリーンで掛かっている状況。僕らインディペンデントの映画は、その存在すらないうちに消えてしまうものあります」
「映画は見せてなんぼ。観てもらわないと意味がないんです」

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映画を見る行為は能動的
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「観ないよりはどんな形でも観て貰った方がいいんですが、やはり映画館で観て欲しいですね。僕自身が映画館育ち。自分の身体より大きなスクリーンで観るって大事な体験です。見も知らない不特定多数の人達と一緒に観て映画が終わったらバラバラに散って行く。それは映画作りも同じで、スタッフ・キャストは一本の映画を残して散って行く。またスクリーンを介してお客さんが集まって散ってく。それが映画にとって原点な感じがします」

単館系のシネセゾン渋谷でもぎりや映写技師、アテネフランセ文化センターで企画と映写に従事した篠崎監督だけに、観せる場としての映画館への思いは強い。

「映画を見る行為は受動的でなく能動的な行為だと思います。身銭を払ってわざわざ出て来て、家だったら好きな時間に観られるのにその時間に合わせて観る。一見不自由に思えるかもしれないけど、そうして出会える映画ってたくさんあると思うんです」
篠崎監督は、現在シネ・ヌーヴォで上映中の神田裕司監督『TOKYOてやんでぃ』やジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督の『オデット』も紹介。観客の動きが次の上映に繋がっていくことを改めてアピールした。

『あれから』は4月26日(金)まで上映。関西近郊の方は他の作品も含めてお見逃しなく!

(Report:デューイ松田)