3月19日(火)、ヒューマントラスト渋谷にて、4月27日(土)より全国公開される映画『戦争と一人の女』の完成報告記者会見が開催された。主演の江口のりこをはじめ、永瀬正敏、村上淳、監督の井上淳一、脚本の荒井晴彦、プロデュサーの寺脇研が登壇しました。

映画『戦争と一人の女』は、坂口安吾の原作を基に、戦争という大きな波の中で翻弄される男と女の話を官能的に描いた禁断の問題作です。

まずは登壇者全員に一言づつ発言してもらうと、口を揃えて「とにかくこの映画はひとりでも多くの人に、映画館で見てもらいたい」とまさに映画愛に満ちた答えが帰ってくる。そして、今回は官能シーンも多くまさに体当たりの演技を見せた主演の江口さんは「役作りの苦労はなく、スタッフ・キャストみんなに助けられて撮影中はとても気持ちの良い時間を過ごせた」とチームワークの良さを語った。続いて原作の坂口安吾をモデルにした作家役を演じた永瀬さんが「俳優生活30周年の年の一作目がこの映画ということがとても光栄なことです」とコメント。連続レイプ殺人犯という難しい役を演じた村上さんは「自分の役は加害者ですが、映画を見終わると実は登場人物全員が(戦争の)被害者だと判る」と作品の重いテーマに触れた。20年以上前に故・若松孝二に弟子入りしたという井上監督は、今回恩師の代表作でもある「キャタピラー」と同じモチーフ・<戦争>と<性>をキーワードにしてこの作品を撮った。「若松監督からは、どう撮るかということではなく何を撮るかということを学んだ。これは決して映画学校では学べないことだ」と恩師を偲ぶ。今回映画初プロデュースとなる寺脇さんは元文部科学省の役人。勿論映画評論家としても活躍していたが「映画を初めて作ってみて、こんなに大変とは思わなかった。あんまり人の映画をけなせないなという思いと、なんで金をかけて作った映画でくだらないものが多いのだろうという二つの思いがよぎった」と複雑な胸の内を吐露した。「戦争と一人の映画」は低予算のインディペンデント映画ではあるが京都の松竹撮影所が全面的に協力して素晴らしい戦時中のセットを作ってくれた。江口さん永瀬さんはこのことに触れ「二人の暮らした家のセットが素晴らしく印象に残っている」と思いを同じくしていた。また永瀬さんは戦時中の食糧難の状況を理解するため撮影中絶食していたことを明かした。「ヒロポン中毒の役ですが、それを真似することはできませんので(笑)」と謙遜しながら役作りの苦労を語った。さらに作品の暴力描写に寺脇さん、村上さんが触れ「批判もあるが、リアルに暴力を描くことで逆にそのひどさを観客に伝わらせたい。それは荒井さんの脚本の段階で触れていた」と言うと、荒井さんは静かに頷いていた。最後に記者から「すごく面白い映画でした」と絶賛の声が上がると全員が「すごく嬉しい」と満面の笑みを浮かべていた。そのあとフォトセッションに移り、会見は盛況のうちに終わりました。

●映画情報

『戦争と一人の女』
4月27日(土)より、テアトル新宿ほか全国公開
原作:坂口安吾
企画:寺脇研
音楽:青山真治
監督:井上淳一 脚本:荒井晴彦 中野太
出演:江口のりこ 永瀬正敏 村上淳 柄本明 ほか
配給:ドッグシュガームービーズ