アフガニスタンに駐留するデンマーク軍に密着したドキュメンタリー映画『アルマジロ』の公開に合わせ、「紛争解決人」の異名を取る伊勢崎賢治・東京外国語大学大学院教授を迎えての上映トークイベントが22日、渋谷アップリンクファクトリーでおこなわれた。

本作は、国際治安支援部隊(ISAF)支援国としてアフガニスタンに駐留するデンマーク軍に監督が同行し、撮影をしたドキュメンタリー。キャンプ内での兵士の素顔や、兵士のヘルメットに取り付けたカメラで撮影した戦闘映像など貴重な瞬間が収められた衝撃作だ。

イベントの中で最も反応が大きかったのは、「今の日本には、戦争が始まる要素がそろっている」という指摘だ。これまでの歴史を振り返ると、大きな戦争が起こる時には以下の条件が出そろっている事が多いという。それは「リーダーシップの不在」、「若者の失業率が高い」という事に加えて「人々の恐怖心を掻き立てる要因が存在する」という事だ。

この条件がそろった時、戦争を引き起こそうとする「アクター」と呼ばれる役割の人間が出てくることがあるという。例えば政治家は民衆の不安を煽る事ができるし、あるいは原発事故以降の日本については「軍需産業の人間が軍備化を進める格好のチャンスである」とも指摘した。会場からも、「まさに今の日本には戦争が始まる要素が揃っているのでは」という声が上がった。

伊勢崎氏によれば、戦争に至る要因は国家権力の側だけにあるのではなく、むしろ人々の側の「恐怖心」によるところも大きい。先に民衆の恐怖心があり、更に国家権力がそれを煽る、というプロセスの果てに恐怖心が熱狂に転化して戦争は起こるのだという。この恐怖心が加速して戦争へと至るプロセスを示す概念として、「セキュリタイゼーション」という安全保障上の用語も紹介された。

さらに伊勢崎氏は、こういった恐怖心は絶対に生じるものであり、決して「良し悪し」の問題ではないとも付け加えた。その上で、重要な事は「恐怖心の連鎖から紛争に至る仕組みを、しっかりと人々が認識することである」とした。

また伊勢崎氏は現在の世界情勢の中で日本が果たすべき役割についても言及し、アメリカの戦争に黙って付き合うのではなく、冷静に日本の国益を考えてアメリカと付き合っていく事が必要だと述べた。憲法九条の効力について問われると、「(九条は)モラル的な歯止めにはなっているが、特措法の成立でなし崩しになる可能性もある」と示唆した。その上で、伊勢崎氏自身が以前、自衛隊がアフガンの敵対勢力の武装解除のミッションにあたるべきだと日本政府に提案したものの、受け入れられなかったというエピソードも紹介された。

今回のイベントは、紛争に至るまでの経緯や現在のアフガン国内の状況など本作『アルマジロ』に関する社会背景の解説から始まり、紛争解決人として世界中の戦地で武装解除にあたった伊勢崎氏だからこその徹底的に現実的な視点にも触れられる貴重なイベントとなった。

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