“あの日”からちょうど一年の2012年3月11日に世界中で撮影された映像を、リドリー・スコットの指揮のもとYou Tubeを通して集約し、1本の映画へと仕上げた『JAPAN IN A DAY[ジャパン イン ア デイ]』。第25回東京国際映画祭の特別オープニングとして上映され、画期的なソーシャル・ネットワーク・ムービーとして注目を集めています。本日、東北大学と六本木ヒルズの会場をつないで、本作を鑑賞後にパネルディスカッションを開催しました。

●パネルディスカッション
日時:10月22(月)15:15〜16:15  場所:六本木ヒルズ 森タワー アカデミーヒルズ49 タワーホール
東京会場  登壇:フィリップ・マーティン監督、成田岳監督、為末大、加藤綾子アナ
東北会場(東北大学) 登壇:早川敬之プロデューサー、川又政征(東北大学教授)、
坂本英紀(シネマエール東北/NPO法人20世紀アーカイブ仙台理事長)
コーディネーター:ショーンK 

 今回のパネルディスカッションは、映画『JAPAN IN A DAY』を鑑賞後、第25回東京国際映画祭会場の六本木ヒルズと、被災地の東北大学(仙台)を4K回線でつないで行う画期的な試み。「いま映画に何ができるか」を映画の作り手として、報道人として、被災地で暮らすものとしてなど様々な立場で語り合う貴重な機会となりました。東北会場には、実際に映像を投稿した共同監督も多数参加していました。

進行役のショーンからの「映画『JAPAN IN A DAY』をどう考えるか。どう繋げていくのか。(人々の投稿から生まれる)ソーシャルムービーというクリエイションが何を生むのか」という呼びかけからディスカッションは始まった。
被災地に映画を届ける活動をしている坂本は「福島で姉は放射線量が上がったことを理解して家に素直に入るが、弟はわけがわからず泣き出す。被災地の現状そのもの。わかりやすい」と答えると、復興を願う言葉を背中に書いて水かけ祭りを行う男性を撮った共同監督は「月に一度は被災地をまわっている。震災を風化させないでほしい」と語った。
ソーシャルムービーを作り上げる為、8000本、300時間という膨大な映像をまとめあげた成田監督は「様々な視点があり、投稿者の想いが詰まっているので、こう感じてほしいという押し付けがましいものではなく、余白を意識した」と答え、ともに作業にあたったマーティン監督は「悲劇の一日を思うだけでなく、過去を振り返るだけでなく未来をむいた映画でありたいと思っていた」とそれぞれの想いを語った。
スポーツを通しての復興支援活動をしている為末は「震災が起きた時、スポーツの何もできなさに愕然とした。でもなでしこの活躍は皆に力を与えた。普通に子供たちが校庭を走ることのできる環境が大切」と語った。被災地に取材に何度もいった加藤は「バラエティ番組の撮影をしながら、「笑っていていいのか?」と何度も思ったが「番組をみたよ。久々に笑った」と言われて、自分のやるべき仕事をやればよいのだと思った」と苦しかった時期を振り返った。「今こそ映画の力」というテーマをふられた早川は「話す力だ。映画をみるだけでなく、見た後にこのような価値ある話しあいが生まれる。誰かと話すことが力になる」と語ると、「この映画を被災地の集会所で上映できるようになれば、仮設住宅の独居の方が家を出てくるきっかけにもなる」と坂本も答えた。
様々な意見が交わされた後、東北大学教授の川又は、被災地で暮らす一人として「この映画は様々な人が撮ったものをまとめたが、今度はフィクションで震災や被災地を撮ってほしい。脚本なのに、そこには真実がある。家族や愛が描かれている。そういう映画ができることを望んでいる」と映画の作り手への期待を最後に語った。