岩井俊二監督8年ぶりの長編劇映画となる最新作『ヴァンパイア』は現在、シネマライズ他全国順次公開中です。

本作は岩井監督がカナダを舞台に全編英語で撮りおろし、監督・撮影監督・原作・脚本・音楽・編集・プロデュース・デザイン・ストーリーボードの1人9役を担った“岩井ワールド”炸裂の、この世の果ての恋物語。

この度大ヒット公開を記念して、トークショーが行われました。
“映画史上誰も作らなかった吸血鬼映画を作った岩井俊二”が、1人9役のそれぞれの目線から制作秘話や、蒼井優さんとの不思議な縁について語り、会場に詰めかけたファンやリピーターを大いに沸かせました。

【イベント概要】

■日程:10月5 日(金)
■場所:シネマライズ
 (東京都渋谷区宇田川町13 -17ライズビル)
■登壇者:岩井俊二監督
■聞き手:森田真帆さん(シネマトゥデイライター)

●森田真帆さん(以下 森田)
本作は何度も観たくなる映画ですが、
岩井さんは1人で9役分関わっているので、嫌というほど観たと思いますが、
9人の役割をやるというのはいかがでしたか?

●岩井監督(以下 岩井)
それほど大変な事をやっているという感覚はありませんでした。
学生時代の頃、自主制作していてクランクインはスタッフが10人くらいいるのですが、
ギャラもないので、段々とスタッフ減っていき、最終的に役者と2人でやっていた事もありました。

●森田
9役の中で一番つらいのは何ですか?

●岩井
ゼロから話を作って、形になるまでが一番大変です。
その前の完成したものを真っ白にして、また一から始めなければならないので
1日、2日は途方に暮れてしまいます。
その時の姿は自信のないおどおどした人になっていると思います。
「どうしよう、どうしよう、なにも浮かばないぞ」みたいな(笑)。
でもそれを経ないと何も生まれないので、仕方ないです。

●森田
本作では、蒼井優さんが印象的です。
しかも学生を演じていて、27歳とは思えない瑞々しさがあって凄いですが、
今回、蒼井さんをキャスティングしたきっかけは何ですか?

●岩井
映画を撮るタイミングで変な縁があります。あんまり濃い縁ではないですけどね(笑)
1年に1回とか、2年に1回とかのペースで遊びに来る事があって、その時に
今回の脚本を見せていて日本人留学生の役があったので、役が自然と彼女に転がっていった
感じですかね。

先日、舞台挨拶で久しぶりに会った時に、お互いウォーキングをしている事がわかって、
実は彼女とは意外と近所なのでもしかしたら会ったりするかもと話していたら、
本当にその翌々日くらいにウォーキング中に鉢合わせしました。
「マジかよ!」という感じでした(笑)。
遥か彼方から大声で「岩井さん!」と大声で呼びかけられて、向こうからやって来たのが
蒼井さんでビックリしました。

●森田
それは、なかなかない運命を感じますね!

●岩井
キャスティングには、その時連絡を取った人に役が転がっていくことが、
意外と多いと思います。

●森田
これは、全国の役者さんには耳寄りな情報ですね(笑)。
●森田
最後にこれから、本作を観る人にメッセージをお願いします。

●岩井
観ていただくしかないのですが、気に入っていただけたら嬉しいです。
観たら、是非、友人の方にも紹介してください。