映画祭12日目の27日(日)。後は賞の結果を待つばかりとなった最終日、長編コンペティション部門に選出された全22作品が4会場においてリピート上映された。怒濤の日々も過ぎてしまえば、あっという間だったが、今年ほど天候に恵まれなかった年は珍しく、1日中晴れ渡ったのはほんの数日。19時15分から行われたコンペティション部門の授賞式もまた、直前からの強風&冷たい大雨に見舞われてしまった。授賞式の後は閉幕作品の『テレーズ・デスケルウ』が2回上映され、5月16日から12日間にわたって開催された第65回カンヌ国際映画祭が閉幕した。

◆開会式に続きベレニス・ベジョが司会を務めたクロージング・セレモニーには華やかな顔ぶれのプレゼンターが登場!

 オープニング・セレモニーに続き、クロージング・セレモニーの司会をアルゼンチン出身の女優ベレニス・ベジョが務めた今年の授賞式には、華やかな顔ぶれのプレゼンターが登場し、正装で身を固めた観客たちを魅了した。
 “短編コンペティション部門”のプレゼンターはカイリー・ミノーグで、この部門の審査委員長であるベルギーのジャン=ピエール・ダルデンヌ監督とともに登壇。部門を問わない“カメラドール(新人監督賞)”は審査委員長を務めたブラジルの監督カルロス・ディエギスが、スペインの映画監督カルロス・サウラとフランスの女優リュディヴィーヌ・サニエを伴って登場し、受賞者を発表した。
 “長編コンペティション”部門の審査員賞のプレゼンターはフランスの国民的歌手&俳優のパトリック・ブリュエルとイタリアの女優ラウラ・モランテ。脚本賞は女優のナスターシャ・キンスキー。女優賞のプレゼンターとして登場したのは米国のベテラン俳優アレック・ボールドウィン。男優賞は中国の国際派女優コン・リー。監督賞のプレゼンターは“ある視点”部門の審査員をともに務めた英国の俳優ティム・ロスとフランスの女優レイラ・ベクティ。そして、アメリカの俳優エイドリアン・ブロディとフランスの女優オドレイ・トトゥが、最高賞パルムドールのプレゼンターとして登場した。   
 我々報道陣は、その模様を授賞式会場のリュミエールではなく、隣接する別会場ドビュッシーのスクリーンで観るので、賞が発表される度に気兼ねなく歓声をあげたり、ブーイングしたりと喧しいのだが、今年は、過去のパルムドール受賞監督2人に審査員賞と脚本賞という小さな賞が授与された際には驚きの声が上がり、監督賞に対しても不満の声がわき起こっていた。受賞結果は以下の通り。

〈第65回カンヌ国際映画祭〉長編コンペティション部門受賞結果
☆パルムドール:『アムール』ミヒャエル・ハネケ監督
☆グランプリ:『リアリティ』マッテオ・ガローネ監督
☆監督賞:カルロス・レイガダス『ポスト・テネブラ・リュクス』
☆審査員賞:『ザ・エンジェルズ・シェアー』ケン・ローチ監督
☆男優賞:マッツ・ミケルセン『ザ・ハント』
☆女優賞:クリスティナ・フルートゥア&コスミナ・ストラタン『ビヨンド・ザ・ヒルズ』
☆脚本賞:クリスティアン・ムンジウ『ビヨンド・ザ・ヒルズ』

◆授賞式直後の20時15分からナンニ・モレッティら審査員団の記者会見が行われ、引き続いて受賞者たちが会見!

 クロージング・セレモニーの余韻が残るなか、20時15分より長編コンペティション部門の審査員団による記者会見が行われた。審査委員長のナンニ・モレッティは審査員1人1人の審査に対する視点と情熱に対して謝意を述べた上で、「8回もの話し合いの機会を設けたこと、そして満場一致で決定した賞はなかった」と明かし、審査員一同が受賞者を称えていると言い添えた。また、特に意見が大きく分かれた作品として、『ポスト・テネブラ・リュクス』『ホーリー・モーターズ』『パラダイス:ラブ』の3作品の名前を挙げた。カルロス・レイガダスが監督賞を受賞した『ポスト・テネブラ・リュクス』について、アンドレア・アーノルド監督は「勇気と優しさと、沢山の愛がある作品。そして人生とその儚さに向き合った作品です」とコメントし、ラウル・ペック監督も「この映画は知的な面でも、感情的な面でも大きな感動を与えてくれた。これほどまでに強く自由で、率直な映像は見たことがない。加えて、普遍的な問題について、つまりカップルや愛、子供、理解し合えない人間関係、さらには階級間の衝突までを類稀な力で結び付けている。それらを信じられないほどの詩的な空気の中に据えている」と擁護した。また、昨年の覇者であり、今年は出品数も多かったアメリカ映画が賞に絡まなかった件について問われたアレクサンダー・ペイン監督は、「映画祭の賞は、国に対して与えるのではありません。候補作の中から選ぶだけなんですよ」と返答した。
(記事構成:Y. KIKKA)