戦後、数々の時代の局面でシャッターを切り続けてきた伝説の報道写真家・福島菊次郎を追ったドキュメンタリー映画『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』。
本作を応援して頂いている方々をゲストにお招きし、毎週トークイベントを実施しておりますが、先日2日(日)にその第五弾を新宿K’s cinemaにて実施致しました。

今回ゲストにお迎えしたのは、フォトジャーナリストで「DAYS JAPAN」編集長の広河隆一さん。
本編でも福島菊次郎さんが「DAYS JAPAN」の生徒に講演するシーンが登場しますが、映画さながらに、未来のジャーナリストを志す若者も多く集い、トーク中、熱心にメモを取る方もいらっしゃいました。

◆映画『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』 公開記念トークイベント
●実施日時: 9月2日(日) 
●場所: 新宿K’s cinema 
●登壇者: 広河隆一さん(フォトジャーナリスト、「DAYS JAPAN」編集長)、長谷川三郎監督

——福島菊次郎さんとの出会いについて

広河さん:祝島に行った際に現地の方に紹介してもらったのが、福島さんとの最初の出会いです。
その後、私が何回か現地に行ったり、福島さんが東京に訪ねてきてくださったり、
DAYS JAPANのフォトジャーナリストの講師としてお招きしたこともありました。
雑誌「DAYS JAPAN」では一年にわたり、福島さんの特集を組んだこともあります。

——福島菊次郎という人間について

広河さん:私は尊敬する人はあまりいないのだけど、福島さんは違いました。
福島さんの生き様の何十分の一を自分でも達成できるか?と思うほどです。
映画をご覧になった方はわかると思いますが、福島さんの語り口や生き方はひょうひょうとして
いらっしゃいますが、一度敵と見なしたら徹底的に戦います。
あれだけのことをやっている人は他にはいません。
現代の日本では100人に一人もいないのではないかと思います。

——ジャーナリストの仕事について
長谷川監督:取材中、福島さんからは
「ただ撮るだけじゃダメだ。真実を伝えないと。状況を動かさないと。」
と言われ、人間を撮るとはどういうことかを教わりました。
福島さんは日本が思うような方向にいかない様子をご覧になって、
自分がどういうメッセージを残すのかをずっと考えていらっしゃいました。
そばにいて、嘘っぱちの日本への危機感をヒリヒリと感じていらっしゃることが伝わってきました。

広河さん:ジャーナリストの仕事は歯がゆいものです。私もチェルノブイリや
パレスチナなどの取材に行きましたが、福島さんは私の何百倍も歯がゆい
思いをしているだろうと思います。
これまで一度たりとも「これでいいんだ」と思ったことはないでしょう。
 福島さんは中村杉松さんの仇をとれなかった悔しさを、
昨年の大震災後に福島に行って余計に強く感じていらっしゃることでしょう。
自分は負け続けている、と感じているからこそ、写真家としての仕事だけではなく、
生き方そのもので戦い続けている。そこがすごいと思います。
私はいつも生徒には「現場に行きなさい」と教えています。
物事の根幹に迫るためには、どういう心構えで、どの視点からものを見るか、
その一番のポイントをおさえているのが福島さんです。
我々ジャーナリストは、他人の不幸で食っていく仕事です。
だからこそシャッターをきって、写真を発表して終わりじゃ済まない。
困難にくじけそうになるときでも、続けていくもとになるものは「悔しさ」だと思います。
人間に対する気持ちや意志が重なり合って初めていい仕事ができるのです。