8月25日の公開以来、公開9日間で、82万人を超えるお客様にご鑑賞いただいている、高倉健6年ぶりの主演作「あなたへ」。この度、本作が、8月23日(現地時間)よりカナダ・モントリオールにて開催されている第36回モントリオール世界映画祭ワールドコンペティション部門に正式出品されました。

正式出品を受け、日本から主演の高倉健、作品のエグゼクティブプロデューサー・市川南(東宝)が現地に赴きました。高倉健が海外での映画祭のため現地へ赴くのは、1994年の『四十七人の刺客』でヴェネチア映画祭に参加して以来、18年ぶりとなります。モントリオール映画祭では1999年の『鉄道員』でワールドコンペティション部門に出品された際に、本人は映画祭に直接参加できなかったにも関わらず、日本人俳優としては初めてとなる最優秀男優賞を受賞しています。高倉健の受賞以降、日本人俳優は同賞を受賞していません。
31日にモントリオール入りをした高倉健は、「モントリオールは初めて。良い街ですね。一番良い季節に来ることができたので、とてもきれいで気持ちが良いですね。モントリオールに部屋を借りようという話もしていました。」と話し、空き時間にはオールドモントリオール(旧市街地)を散策するなどリラックスした様子でした。

会見前には、映画祭の最高責任者でもあるセルジュ・ロジーク氏とも対面し、英語で挨拶をした後、「『鉄道員』の際は、ありがとうございました」と話した高倉に対して、「よく覚えてるよ」とロジーク氏が返すなど、1999年には実現しなかった対話が行われました。

現地時間2日14:00よりモントリオール・ハイアットリージェンシーホテルにて行われた公式会見には海外メディアなど約100人が集まりました。英語が堪能な高倉が海外媒体の質問に英語で返答する一幕も見られました。

同じく2日19:00からはメゾヌーヴ・シアターにて公式上映が行われました。エンドロール開始直後から拍手が沸き起こり、スタンディングオベーションが続きました。立ち上がり観客に挨拶をする高倉健の目には涙が浮かび、白いハンカチで目頭を押さえる姿も見られました。

手を上げて観客に応える姿や前方に座るフランス人の観客に自ら声をかける姿に、観客からはさらに大きな拍手が起こりました。会場を後にした高倉は、「泣いちゃったね。ふっと出てしまったよ。映画祭は良いものだね」と、18年ぶりの映画祭での観客からの惜しみない賛辞に感動した様子でした。

海外プレスや一般観客からは、「日本的な内面の感情表現がとても美しい」「高倉健が81歳だなんて信じられません。これからも何本も作品に出てほしい。」など日本的な余白を残す描き方や高倉健の演技に対して非常に高い評価を得ており、現地時間3日19:00から行われる授賞式での受賞に大きな期待が高まります。

以下、公式会見(現地時間2日14:00より実施)&公式上映(現地時間2日19:00より上映)後の参加者コメントです。

【公式会見】
<高倉健>はじめまして、高倉健です。こんなに大勢の方がいらっしゃるとは思いませんでした。大変うれしいです。(「なぜ6年も休んでいたのですか?」という海外メディアの問いに、)Very difficult question.今はまだ分かりません。6年前に中国映画(「単騎、千里を走る」)に出てから、自分の仕事の仕方を考え直していました。まだ結論は出ていません。(モントリオール映画祭に出席しようと決めた理由は?)13年前に『鉄道員』で最優秀男優賞をいただいたので、どこかで御礼がしたかったことと、降旗監督が来れなくなったのでしぶしぶ来ました(会場笑い)。(共作が20作目になる降旗監督に関して)監督は一言で言うと、与謝野鉄幹の「友を選ばば書を読みて六分の侠気と四分の熱」という詩がぴったりの方です。(劇中の高倉の料理シーンに関して「素晴らしい俳優であると同時に良い料理人でもありますね」というコメントに対して)That’s my occupation!僕は焼き飯も作ったことはありません。

 <市川南>この映画は日本の代表的な俳優・高倉健さんの205本目の出演作であり、降旗康男監督にとっ  ては47本目の作品。そしてふたりの共作としては20作目の作品となります。この作品はオリジナルストーリーですが、人が年齢を重ねるとはどういうことなのか、人は年をとるにつれて、広がりを見せるのではないかというメッセージが込められています。モントリオールの皆様に楽しんでいただければ幸いです。

【公式上映後】
<高倉健>泣いちゃったね。ふっと(涙が)出てしまいました。前に座っていたフランス人のおばあちゃんも泣いていました。映画祭って良いものだね。
今日みたいに映画の後にお客さんと時間を過ごすのは「八甲田山」以来です。終わった後皆さんの拍手を受けて、なにかわからないぞくっとするものがありました。これが映画祭の持っている魔力なのでしょうか。何十年も役者をやってきても、こんな経験をするんですね。心に衝撃を受けました。映画にはそういう力があります。