『家族』、『幸福の黄色いハンカチ』、『息子』、『学校』シリーズ、『おとうと』、そして『男はつらいよ』シリーズで、その時代、時代の家族を見つめ続けてきた山田洋次監督。
監督作81作目となる新作は、日本映画界の巨匠、小津安二郎監督に捧げる作品。
家族の絆と喪失を描いた『東京物語』から60年—。
山田洋次監督が映画『東京家族』で、今の日本、そして私たち家族の物語を描きます。

 そしてこの度、本日8月18日、京都南座にて、本作の監督である山田洋次さんの監督生活50周年記念イベント「山田洋次の軌跡」のオープニングセレモニーが開催されました。
「山田洋次の軌跡」は、「日本映画のふるさと」でもあり、山田監督自身ともゆかりのある京都の地にて、8月18日〜9月23日および10月6日〜10月24日まで行われる、山田監督の偉業を多彩な映像と共に顕彰する展覧会です。
本イベントでは、山田監督の監督作80本と特別篇2本を全て35mmのフィルムで鑑賞いただけるだけでなく、舞台上に復元された「くるまや」のセット体験や、ミニシアターでの特別映像の上映もおこなわれ、映画ファン演劇ファンともに楽しめる特別なイベントになっています。
本日その初日を迎えるにあたり、京都南座にて、オープニングセレモニーが開催されました。南座正面口の前でテープカットが行われ、監督の50周年に大きな拍手と声援が送られました。初日ということもあり会場には多くのお客様が詰めかけ、初日のスペシャルイベントとして行われた浜村淳さんと山田監督によるトークショーも、満員のお客様でにぎわいました。
記念すべき「男はつらいよ」第1作の上映では、600名を超えるお客様がフィルム上映を満喫し、声をあげて笑って泣いて、終映後には大きな拍手が沸き起こりました。

■「山田洋次の軌跡」概要URL
http://www.shochiku.co.jp/play/minamiza/schedule/2012/8/post_82.php

【イベント概要】
内 容:「山田洋次の軌跡」オープニングセレモニー
場 所:京都南座正面入口前
日 時:8月18日(土)
①テープカット 12:15〜 (南座正面入口前)

出席者
山田洋次監督
山田啓二 京都府知事、門川大作 京都市長、
松竹株式会社 会長 大谷信義
松竹株式会社 代表取締役社長 迫本淳一
    ②トークショー 13:30〜 (南座舞台上)
出席者:山田洋次監督 浜村 淳氏 

【テープカットセレモニー】

◆ご挨拶
山田啓二京都府知事:
山田洋次監督、本日は本当におめでとうございます。日本最高の監督の、このように素晴らしいイベントを京都でやっていただけること、本当に嬉しく思っています。京都の物語をたくさんとっていただければ幸せであります。
改めまして、今回のイベントの関係者の皆様にお礼申し上げるとともに、私のお祝いの言葉とさせていただきます。

門川大作京都市長:
まずは山田洋次監督、そして関係者の皆様に、このようなイベントを京都の地で開催いただき、感謝申し上げます。京都が誇る素晴らしい劇場、南座にてこういう企画をしていただけることうれしく思います。
先ほど少しフライングで中を拝見させていただきましたが、凄いセットができていて、二階まで見られる、逆に南座の客席側を見ることができる、非常に面白いセットになっております。私も久々に、昔の映画を見せてもらいたいなと思っています。
同時に、100年を超える京都の映画の歴史、そうした上映も今回行って頂いております。京都が誇る映画の街、この力をさらに発展させていかねばならないと思っております。
今、京都の映画は厳しい状態ですが、人材もロケーションも揃っています。
この京都の地で、また山田洋次監督が映画をフィルムで撮影しよう、そんな取り組みをして頂ければ、我々も大変うれしく思います。

山田洋次監督:
この南座は、日本で最高の芝居小屋でもあります。その最高の芝居小屋で、私の全作品をフィルムで上映して頂けて、私はとても嬉しく、光栄に感じています。
フィルムでしか味わえない独特のスクリーンの味わいを、ぜひ感じて頂きたいと思います。もともと映画を上映する設備はないわけですが、私のもっとも信頼する業者の皆様にお願いし、完璧な状態で映画を楽しんでいただけます。
このような機会は、今後もう無いかもしれません。2ヶ月近く行われるので、この素晴らしい南座という劇場を見て頂くだけでも、楽しんで頂けるのではと思っています。
たくさんの方にご覧いただき、応援していただけることを願っています。

華々しいテープカットの後は、展覧会の様子が公開されました。
今回の展覧会の一番の見どころでもある、舞台上に復元された『男はつらいよ』シリーズの「くるまや」セットや、通常は上がることのできない花道での展示物の様子などを、山田監督、山田府知事、門川市長らが鑑賞しました。

【山田監督への囲み取材より】

●山田監督
なかなか舞台の上から客席を見る、という体験はできないわけで、いかに素晴らしい劇場かというのがよくわかりますよね。そういう場所で、僕の作品が上映されるというのは本当に光栄です。

●記者
監督は南座においでになられたことは?

●山田監督
何度かあります、観客としてね。最近はこのイベントの打ち合わせでも来ているし、11月には、小津さんの「麦秋」を新派で上演するので、その打ち合わせでも来ています。

●記者
改めて、舞台のセットを見てどう感じられましたか。

●山田監督
第一作の時は新しくセットを作るわけですが、何年も続いたシリーズなので、毎年バラシてはもう一度作って、何度も何度も繰り返し使ってきました。
だから、柱一本、小道具一つ一つ、すべてに愛着があって、まるで自分の家にいるかのような、そんな気持ちをもってスタッフが作り続けてきましたね。
机とか、実際に使っていたものを運んできましたので、新しく作って古びさせたセットではなく、本当に年季が入ったセットなんですね。何度も何度も使っているうちに汚れたり手垢がついたりして、やがて愛情もわいてくる。
やはり、特別な作品にだったんだなと思いますね。

●記者
フィルムがなくなっていくことについて

●山田監督
技術革新とともに映画の表現の幅も広くなってきました、例えばサイレントからトーキー、モノクロからカラーにと、新しい表現を獲得してきました。ただ、フィルムからのデジタル化というのは、デジタルによって飛躍的に表現の幅が広がったということではなく、効率的に安上がりにできる、という経済的な理由によるものだけなのです。100年続いたフィルムの歴史がなくなるのは、大事件です。その事について、もっと研究したり議論したりしないといけないのに、どんどん変わっていってしまっている。映画は大きな転換期を迎えているのだと思います。

フィルムに光が通過してその影をスクリーンに映すので、独特の味わいがある。
それはぜひこの劇場で、大きな空間とともに、味わってもらいたいと思います。