本日8月6日〜10日までの5日間、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズにて「坂本龍一 Selections スコラ映画祭」が開催され、5月に発売された音楽全集シリーズ「commmons:schola(コモンズ・スコラ)」の第10巻「映画音楽(FilmMusic)」において選曲された楽曲が使われている名画が特集上映されます。

なお、特集上映の初日である本日は、8年ぶりの長編映画『ヴァンパイア』(9月5日公開)が、早くも話題になっている岩井俊二監督がスペシャルゲストとして登壇。

岩井プロデュースによる『新しい靴を買わなくちゃ』(監督・脚本:北川悦吏子。10月6日公開)の音楽制作に坂本氏が携わった話や、自身も音楽を手がける岩井監督と坂本氏による映画音楽の魅力について意見を交わしましたが、予定していた時間を20分もオーバーするほど盛り上がり、会場に詰めかけたファンを大いに沸かせました。

【トークショー概要】

【日時】8月6日(月)

【会場】アカデミーヒルズ六本木
(港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー49F)

◆坂本龍一氏(以下、坂本):

「commmons:schola(コモンズ・スコラ)」は、全30巻を目指していますが、10巻目で自分も好きな映画音楽を取り上げられたのは感慨深いです。
もちろん僕も子供の頃から映画が好きでしたが、まさか自分が携わることになるとは思ってもいませんでしたけどね。岩井さんはどうですか?

◆岩井俊二監督(以下、岩井):

街角で流れていたのを聴いたのが最初だと思いますが、フランシス・レイなど、ヨーロッパ系の映画音楽が好きでした。日本映画では、音楽は劇伴だったので、坂本さんの『戦場のメリー・クリスマス』のインパクトは凄かったです。
革命的でした。当時、20歳くらいで、学生映画を作っていましたが、将来の事は何も考えてなかったですね。

◆坂本:
僕が高校生の頃も周りに映画を作っていた友人がたくさんいたので、結構刺激を受けましたよ。高校時代が1番映画を観たかもしれません。

当時は数ヶ月から1年遅れくらいで洋画が日本で公開されたのですが、ゴダール、フェリーニ、トリュフォーも見ましたし、名画座にも足を運びました。それから高倉健さんの映画もほとんど観たと思います。

◆岩井:
僕も高校と大学の頃が1番映画を観てたと思います。池袋の文芸座にも足繁く通ってました。当時は、自分たちで作った映画に、好きな曲をどんどん勝手に入れていってましたが、そういう意味では坂本さんの曲にも相当お世話になりました(会場笑い)。

◆坂本:
僕の曲はインストゥルメンタルが多いから、使いやすかったんじゃないかな(笑)。

音楽には音楽のテンポと文法があるので、なるべく映画と一致させようとは思うんですけど、音楽が勝手に盛り上がってしまうこともあります。
でも、音楽としては正解でも、映画音楽としてはダメなものもあるんですよね。
以前、ラブシーンの盛り上がりに合わせて、音楽も行くところまで行ってしまった事がありますが、映像と音楽がマッチしないんですよね。
岩井さんは、そんな時はどうしますか?

◆岩井:
僕の場合は、そういう時は、音楽の癖に映像の癖を合わせてみようかなと思ったりします。以前、プロデュースした『虹の女神 Rainbow Song』という作品で、音楽が良かったのでそれに合わせて、最初は5秒だったシーンを40秒にした事もあります。

◆坂本:
こんな優しい映画監督は世の中にいないですよ(会場笑い)!
たいがいの監督は、映像と同じで音楽も切ればいいと思ってるからね。

そんな時は、映画のシーンの秒数に合うように、曲のテンポを直して、頭から書き直すんですが、監督に「大変ですよ」と言っても、分かってくれない方が多いんですよ。

◆岩井:
編集をロックしないで音楽を作ってもらって、それに合わせて編集していった方が上手くいくこともありますよね。

◆坂本:
これからは、岩井監督と仕事したいです(会場笑い)。

以上

「坂本龍一 Selections スコラ映画祭」
http://www.tohotheater.jp/theater/009/info/event/schola.html