2012 年ベルリン国際映画祭フォーラム部門にてワールドプレミア上映され、全ての回が満席になるなど多くの反響を呼んだ舩橋淳監督のドキュメンタリー映画『Nuclear Nation(ニュークリア・ネイション)』が、今秋 10 月 13 日より邦題を『フタバから遠く離れて』とし、オーディトリウム渋谷にて公開が決定致しました。
本作は福島県双葉町の避難生活を追ったドキュメンタリーです。音楽家の坂本龍一がエンディングテーマ曲「for futaba」を手がけ、7 月 7・8 日に行われた音楽フェス「NO NUKES2012」でも、双葉町の井戸川町長と舩橋淳監督が U-stream に出演。
避難生活の続く双葉町と被爆の現実を訴えました。映画の予告編も放映され、視聴者数 3 万人を超える注目を集めました。
また、学生たちからの注目度も高く、7月11日、12日、13日には、一橋大学、東京大学、法政大学にて、それぞれ先行上映会と監督の講演会が行われ、上映後の質疑応答で会場は大いに盛り上がりました。

【各大学での講演会から(一部)】
●福島県から、あえて遠く離れて原発問題を描く
福島第一原子力発電所の事故以来、多くのジャーナリストが福島へ行って取材をしていた時、舩橋淳監督は原発立地町村の双葉町が町の機能丸ごと埼玉の旧騎西高校に避難してくるというニュースを知り、あえて福島から離れてこの問題を描くことに興味を覚えた。福島県双葉町は唯一県外に避難した自治体であり、それまで原発を誘致・立地して推進していた町でもある。

●テレビや新聞報道では伝えられない「生の避難生活」
制作にあたり「既存の報道では描けないこと」を意識したという監督。いつ帰郷できるかもわからず、賠償もされず、待たされるだけの避難生活の“時間”を描こうと思いつく。足繁く避難所へ通い、時にはボランティアもしながら双葉町民と信頼関係を築いていった。撮影時間は合計 300 時間を超えた。

●被災者だけではなく、日本全体の問題として考えられる作品として
現在でも 200 人以上が避難生活を送っている旧騎西高校は、東日本大震災による避難所として日本で唯一残された状態となっている。どうすれば観ている人も一緒に避難所に座って生活をしている感覚に近づけるか、いかに同じ時間を共有しているように感じさせられるかを意識したと監督。『いまここで生活している』感覚そのものを映すことが、映画のできることだと思ったと語り、できるだけ「福島の電気の消費地」である東京の人に観てほしいとメッセージを送った。