主演に松たか子、阿部サダヲを迎えた西川美和監督の最新作『夢売るふたり』(アスミック・エース配給)が、9月8日(土)より全国公開されます。

『蛇イチゴ』(03)、『ゆれる』(06)、『ディア・ドクター』(09)で国内外の映画賞を総なめにし、いま最も注目される映画監督・西川美和。彼女の新境地となる本作の完成披露試写会を、6 月 28 日(木)に日経ホールで実施いたしました。

当日は約 600 名のファンが本作のお披露目に駆けつけ、開場は満席!中には午前中から並んだ方もいらっしゃるなど、大盛況となりました。上映前には舞台挨拶を行い、主演の松たか子さん、阿部サダヲさん、西川監督が登壇しました。舞台挨拶では撮影時のエピソードも語られ、松さんの蕎麦好きが明らかに。撮影中は何人ものスタッフが「松さんと蕎麦に行った」と自慢していたそうです。また、舞台上の紐を引くと、松さん、阿部さん、監督がそれぞれ「男とは」「女とは」「愛とは」について考えていただいた内容が登場する垂れ幕トークも実施し、松さんの「思いつかなくて…夫が考えてくれたものはちょっと波紋を呼びそうで白旗を上げてしまいました」という正直回答に、阿部さんが思わず「僕もそう書きたかったけど勇気が無かった。いいなぁ…」とため息を漏らす場面もあり、場内は終始ほのぼのとした笑いで包まれていました。

今回初共演となる松さんと阿部さんはお互いを「お芝居をしていることを“楽しい”と思えるのは幸せだな、と思えましたので、好きな俳優さん(が共演)でよかったなと。自分の目に狂いはなかったなと思いました」「完璧な人だと思っていたけれど、普通…というか、普通以下っぽい雰囲気も?でも演技は素晴らしい女優さんです」
とお互いを大絶賛!キャスティングをした西川監督も「全然緊張していないような雰囲気で現場にもいらしていたんですけれども。お芝居は…完璧でしたね。もう何も言うことがないぐらい」と、作品の仕上がりに非常に満足している様子を語りました。

2年ぶり主演の松たか子、阿部サダヲ登壇
映画『夢売るふたり』完成披露試写会 舞台挨拶
【日 程】 6 月 28 日(木)18:00 開場、18:30 開演
【場 所】 日経ホール 千代田区大手町 1-3-7 日経ビル<3F>
【登壇者】松たか子、阿部サダヲ、西川美和監督

■松さん、阿部さんをキャスティングしたきっかけは?
(監督)
映画賞か何かに(作品が)かかった時に初めてご挨拶させていただいたのですが。そこでは女優さんたちがキラキラしている中で、松さんはひっそりと座っていらっしゃって。その時、こういう言い方するの失礼かもしれないんですが、“あ、この人普通だなぁ”と思って。完全なサラブレッドなのに、普通、って、女優さんでは珍しいなと思って。
今回は“普通の人”、市井の人を描きたくて、松さんがそういう役を演じられるのかなと。あとは、内容がグロテスクな話なので、これを演じてもらう女優さんには、“品”というものが絶対必要だな、そうでないとグチャグチャになっちゃうな、と思っていたので。今回は松さんにお願いしようと思いました。阿部さんは、ずっと一緒にお仕事をさせていただきたいな、何かきっかけさえあれば…と思って狙ってたんです(笑)。お二人の組み合わせを、私も見たことないし、どういう雰囲気になるのかイメージがつかない部分もあったので。そこが化学反応を起こしてくれるとおもしろいなと思いました。お二人とも好きな役者さんだったので、このたびキャスティングしたという次第です。

■松さんと阿部さんの初共演について
(松さん)
とても楽しかったです。お芝居をしていることを“楽しい”と思えるのは幸せだな、と思えましたので、好きな俳優さん(が共演)でよかったなと。自分の目が確かだったな(笑)、狂いはなかったと思いました。
(阿部さん)
共演する前の松さんのイメージは、ほんと完璧な人、欠点の無い人、という女優さんで。監督が「OK!」って言ったら「うん、わかってる」「そうでしょ」みたいな(笑)。そういう人かなと思っていたのですが、お会いしたら全然そんなことはなくて。監督から OK がかかっても「今ので良いでしょうか」と。普通…というか、さっきも入場時に転びかけてたり。普通より…下でもいいぐらい?(笑)でも芝居は本当に素晴らしい女優さんです。

■『ゆれる』『ディア・ドクター』は男性目線の映画でしたが。今回女性目線で描きたかったものは?
(監督)
女性のみっともないところ。誰も見たことのないというか、厳密にはそんなことないんだろうけど、なかなかスポットを当てられない、女の、同性からもスポットライトを当ててもらえないような、都会の片隅で一人、自分の生きる道を模索している女性というのを描いてみたいなと思いました。女の人の生活ってどんどん多様になっている、それだけに悩みも複雑で。30 代とかになってくると、色んな複雑な思いを抱き、あがきながら、歩んで行くしかない、っていう。そういう、大人の女性の“生きづらさ”を描いてみようかなというのが今回ありました。

■撮影中、印象に残っているエピソード
(松さん)
最初のシーンの撮影が夜のパートだったので、撮影は夜になってから明るくなるまでの勝負だったんです。普通の人が寝静まった頃に働き出して、普通の人が働き出す頃に終わる、みたいな。こう、昼夜逆転みたいな生活をしてみて、夜のお仕事の人たちの生活が少しわかった気がしました。

■本当にたくさんの女優さんとの絡みがありましたが。
(阿部さん)
絡み…(笑)。それぞれの個性がおもしろかったですね。みなさんそれぞれ、(劇中では)職業がバラバラで、松さん(里子)が見つけてきた人もいれば、僕(貫也)が見つけてきた人もいるんですけれど、その人たちの役への入り方がすばらしいと思いました。上映前なのでどこまで言っていいかわからなかったので、また今度…(笑)。
(監督)
阿部さんはどの女の人と一緒にいても楽しそうでした。松さんは—…なんだろう、この人(笑)。
(阿部さん)
たぶん、間違いなく言えるのは“お蕎麦が好き”なことですね。
(監督)
何人ものスタッフが「松さんと蕎麦に行った」と自慢していましたね。しかも蕎麦、食べるの早いんですよ。(阿部)
蕎麦食べる以外も、現場入りも、着替えも、何でも早かった。歌舞伎の早着替えかっていうくらい(笑)。
(松)
好きです、ええ。浅草など下町がロケ地だったので、蕎麦屋を見つけては一人で入ったりしていました。

<垂れ幕トーク>
(松さん)
男とは 男男男 。と。。。と聞とと聞かれても 聞聞 答えに 答答答 困るものである 困困困
本当に思いつかなくて…。あまりにも困っていたら夫が考えてくれたんですが、その内容が「(男とは)歌舞伎
の家の娘に聞くな」っていうもので、ちょっと波紋を呼びそうだったので(笑)。本当にわからなくて、白旗を
上げてしまいました!すみません!
(阿部さん)
女とは 女女女 。うちの 。。。 ネコネネネコみたいである ココ
僕も松さんみたいに書きたかった。その勇気がなかった。いいなぁ…。
そのとおりだと思う。だから、こんな答えになってしまったんですが(笑)。
わかんない、ってことです。飼ってるんだか飼っていないんだか、なついているんだかいないんだかもわからな
い。なついていると思ったら、急にいなくなるし、なんだかよくわからないけど怒ってるっぽいときもあるし…。
女の人っぽいなと思って。まぁ
うちのネコ、オスなんだけど。(会場笑い)
(監督)
愛とは 愛愛愛 。と。。。と、とと、語、、語るやつほど 語語 、我愛 、、、 (いと ((( )しなり ))) 。。。
まぁ、そんなもんです。むつかしいというか、色んな愛の形のひとつです、この二人が演じたのは。こういうつ
ながり方でも、夫婦ってあるんだな、と。

■これから観るみなさんへ一言ずつ
(監督)
お二人いつもゆったりと、全然緊張していないような雰囲気で現場にもいらしていたんですけれども。お芝居は…完璧でしたね。もう何も言うことがないぐらい、二人とも素晴らしいお芝居をしてくださって。それ(芝居)に対しての心構えも、しっかり準備されてきたなぁと感じました。全力で役に対して向き合ってくれて、非常に血の通った作品になったと思いました。是非楽しんでいってください。
(阿部さん)
自分がこれまで役者をやってきて、今までやったことがない役、やったことがない表情を引き出していただいたと思います。初めてなんです、こういう役。観終わった後に話したいんですが、観た後に色んな意見があっていいというか、一人一人全員違うんじゃないかっていうぐらいで。本当におもしろいですよね。今日、一緒に観に来た人と、三夜ぐらい話し合っていただけるんじゃないかっていうぐらい(笑)不思議な映画だと思います。また二、三回観て意見が変わってもいいなとも思います。
(松さん)
色んな見方ができる作品だと思います。自分以外の人の意見に寛容な気持ちで物語を楽しんでいってください