6/2(土)、大阪市西区のミニシアター・シネヌーヴォにて大工原正樹監督の『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+プロジェクトDENGEKIの上映と初日舞台挨拶が行われた。

『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』は、映画美学校で定期的に行われている生徒とプロのスタッフによるコラボレーション企画の1本として製作された作品。脚本は『赤猫』で大工原監督と絶妙のコンビネーションを見せた井川耕一郎氏。幼少期のトラウマを抱える姉と弟が、当時の一時期を過ごした港町に戻り、次第に無間地獄への道行きに嵌まり込む姿を描いている。
一緒に公開されるのは、プロジェクトDENGEKIとして大工原監督がセレクトした注目の短編群10本だ。

プロジェクトDENGEKIのラインナップは、大工原監督の『赤猫』(04)『純情No,1』(11)、渡辺あい監督『電撃』(11)、長谷部大輔監督『静かな家』(08)、磯谷渚監督『わたしの赤ちゃん』(09)、伊野紗紀監督『正当防衛』(10)、松浦博直監督『BMG』(09)、佐野真規監督『お姉ちゃん、だいきらい』(11)、川島玄士監督『ちるみの流儀』(11)。

登壇したのは大工原監督と『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『純情No,1』主演の長宗我部陽子さん、『お姉ちゃん、だいきらい』の佐野真規監督、『ちるみの流儀』の川島玄士監督、『乱心』の冨永圭祐監督の5名。

大工原正樹監督は、
「長宗我部陽子さんは魅力のある女優さんなので、『ホトホトさま』と『純情NO.1』を観て彼女をもっと知って欲しい」
「『赤猫』は6年ほど前に撮った作品で主演は森田亜紀さん。劇団ストレイドッグに所属していて、映画美学校の修了生や他の講師の作品にたくさん出演していますが、『赤猫』で僕が森田さんを見つけて来たということで自慢したいです(笑)」

『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』では生暖かい女の匂いがほとばしるような姉ちゃんを演じ、『純情No,1』では衝動に生きる女をスラップスティックに魅せた長宗我部陽子さん。
「ベテランの大工原監督と若手の監督の作品が一緒に上映されるのが面白いと思います。ぜひ皆さんに観てていただきたい」と魅力の1つである独特の低音で語った。

佐野真規監督は、初回Aプログラムのみで特別上 映された7分の短編に触れ、 「大工原監督は、『純情No,1』やこの短編のよう な力の抜けた作品を撮られる一方で、井川さんと組んだ『赤猫』『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』は計算された作品になっていて振れ幅が広い」と脚本によりがらりとスタイルが変わる大工原監督作品の魅力をアピール。
自身の作品が上映されるCプログラムについては、
「現在公開中の大畑創監督『へんげ』主演の森田亜紀さんが『赤猫』『わたしの赤ちゃん』、内藤瑛亮監督『先生を流産させる会』主演の宮田亜紀さんが『正当防衛』で全く違う顔を見せているのも見所です。
僕が監督した『お姉ちゃん、だいきらい』は内藤瑛亮監督が主演していて、ブログで面白い文章を書いてくれています。プロジェクトDENGEKIのブログには高橋洋監督や様々な方のコメントがありますので、ぜひご覧になってください」

映画自主制作の現場で自分流儀で突き進むちるみを描いたフェイクドキュメント『ちるみの流儀』について、大工原監督は
「元々美学校の課題として撮った作品のため、映画らしい体裁はしていないが、ラインナップの中に置くと不思議と輝いて見える作品」とコメント。川島玄士監督は、
「『ホトホトさま』から緊張感のある作品が続くので気楽に楽しんでいただきたいです」

愛する男の浮気に悩みながらもかいがいしく世話を焼く妊娠中の女。そんな生活に男の妹が割り込んで来たことで、物語は思いも寄らない展開へ。『電撃』は、プロジェクトDENGEKIの企画始動時、大工監督から渡辺あい監督に1本撮らないかと声を掛けたことで出来た作品。
脚本と助監督を務めた冨永監督は
「当初は何人かでチームを組んでシナリオを書きましたが、納得が出来ない状態で撮影に挑んだ結果、一時中断しました。その後渡辺さんと僕でシナリオを書き直して出来上がった作品です」
大工原監督は
「渡辺さんが本気で取り組んだ最初の映画。中断中に僕も相談を受けて、ひょうたんから駒みたいな設定ができました」と語った。

シネヌーヴォでの上映は6/8(金)まで。次回が7月、名古屋で変則的プログラムで上映とのこと。『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+プロジェクトDENGEKIの作品をまとめて観られるのは大阪が最後のチャンスになる。関西圏にお住まいの方はぜひ足を運んでいただきたい。

(Report:デューイ松田)