2011年11月11日(金)に公開されるソニー・ピクチャーズ配給、米メジャーリーグを舞台に描く感動の実話「マネーボール」の試写会が、11月6日(日)IMPホールにて行われました。
本作は、貧乏で弱小チーム、アスレチックスを独自の“理論”で変えた実在の名GM、ビリー・ビーンの生きざまをブラッド・ピットが熱演!有名選手を高い年俸で雇う代わりに、新たな基準で選んだ無名の有望選手を集めるなど、データ重視の運営論に貧乏球団が勝つための突破口を見出す。後に「マネーボール理論」と呼ばれる戦略を実践していく。
本作試写会に、「『体が小さいとプロでやっていくのは絶対無理』という考え方をひっくり返したい」という決意を抱いてプロ野球阪神球団に入団、野村監督から「出塁率を上げろ、確率を上げることは練習で何とかなる」とアドバイスを受け1年目のシーズン開幕を1軍で迎え、以後盗塁王としても活躍、その後2009年に引退した赤星憲広さんが登場して、映画についての魅力や今の阪神タイガースについて熱く語っていただきました。

司会)本日は素敵なゲストをお迎えしております。みなさん大きな拍手でお迎えください。
元阪神タイガースの選手でいらっしゃり、野球解説者としてご活躍の赤星憲広さんです!
赤星)すごく持ち上げられすぎて(舞台に)出てきにくかったです。プレッシャーで出てくるのをやめようかと思いましたよ(笑)。

司会)みなさん本物の赤星さんにお会いできるなんて嬉しいでしょう!本日なぜ赤星さんにお越しいただいたかといいますと、この映画は野球を題材に、メジャーリーグのアスレチックスにいるビリー・ビーンという実在のGM(ゼネラルマネージャー)が弱小チームをどうやって強くしていくかを描いた物語だからなんですね。さっそくですが、赤星さん、映画のご感想をお伺いしてもよろしいですか?

赤星)そうですね、将来GMを目指す僕から言わしてもらいますと・・・(笑)。正直、日本の野球界の現状では考えられないことかなと思いました。ただ、(映画の中で)アスレチックスを改革するために登場するビリー・ビーンさんというGMの役をブラッド・ピットさんが演じているのですが、(映画を)観ているうちに、ブラット・ピットさんがプラット・ピットさんに見えなくなりましたよ。それぐらい、はまり役でした!僕は野球人なので感動というよりは、非常に考えさせられる部分の多い映画でした。 

司会)日本の野球界とメジャーとの違いとかですか?
赤星)そうですね、GM・・ゼネラルマネージャーというのは日本ではあまりない役割ですから。メジャーではGMがいて、チームに根付いていて、チームを作っている。(日本とは異なる)メジャーのシステムがよくわかる映画ですね。野球人としては、日本の野球界でこういうシステムを導入したら、一体どうなるのかという期待と不安とが、両方湧いてきて、本当に考えさせられました。

司会)マネーボール理論についてはどのように思われましたか?
赤星)正直むちゃくちゃかなと(笑)。むちゃくちゃというか、破天荒というか、マネーボール理論はすごく衝撃的な内容です。それが野球界において注目される部分でもあります。野球では、打つ人−3番4番5番や、投げる人−エースが目立つけれど、(マネーボール理論では)どちらかというと僕のような選手が、尊重される選手に当てはまるのではないかと思います。そういう意味では、野球をやっている人たち以外の、例えば、会社を経営している方々にとっても、参考になる映画ではないかと思います。

司会)(チームを強くするための理論だけでなく)野球ビジネスの考え方も描かれているので、その辺りも観どころですね。では、阪神タイガースで、マネーボール理論を導入したらどうなると思いますか?
赤星)まずいですよね、阪神がこれを導入したら(笑)。まずいというか、今、実は阪神タイガースは12球団のうち一番高額年俸のチームなんです。これ(マネーボール理論)を導入したら、間違いなく、今の選手たちはみんないなくなってしまいます(笑)。なるべくお金をかけないという理論ですから。

司会)赤星さんは、野村監督時代に阪神タイガースに入団され、星野監督、岡田監督と関わる中でご活躍でしたが、野村監督のID野球とこのマネーボール理論はすこしリンクするところがあったりするのでしょうか?
赤星)もちろん細かい部分でいうと通ずる部分もあると思うのですが、ちょっと観点が違うかもしれません。ビリー・ビーンさんが着目している観点で、選手を集めてチームを構成したとして、勝てる(チームができる)のかなという疑問が生じるんです。

司会)そこ(勝てるか)は別だと?
赤星)僕は、野球は役割分担で成り立っていると思っているんです。戦略として、野球は、打者は1番から9番、投手はエース・中継ぎ・抑えといった、(その打順や任務によって)それぞれの役割がたくさんあります。ですが、ビリー・ビーンさんの理論だと、誰が3番4番5番だ、誰がエースだという訳ではなく、みんなで1番から9番の役割を果たす。ピッチャーもみんなで役割を果たします。野村監督は、(野球の)試合を1回から9回まで進めていく中で、細かいデータをとり分析していたので、そういう部分では似ているのかもしれませんが、ちょっとスタイルが違いますね。

司会)野村監督からどんなことを教えてもらいましたか?
赤星)キャッチャーの考え方や心理を教えてもらいました。打者はピッチャーと対戦しているので、ピッチャー(の攻略)に注目しがちですが、キャッチャーの戦略を知ることで、打つことだけではなく、盗塁に活かすこともできました。ダルビッシュ選手のようなすごいピッチャーだと、どのボールもあたりそうにないと思ってしまうけれど、キャッチャーの心理、配球を考えれば、そのピッチャーのあまり得意ではない、いい球を狙って(打ちに)いくことができます。そういったことは大変勉強になりましたし、近年野球をやってきた中で、かなり影響を受けました。

司会)では、星野監督から教えてもらったことは?
赤星)星野監督からは、厳しさを教えてもらいました(笑)。・・・いろんなことを教えていただいたのですが、野村監督みたいな理論ではありません。
今の阪神タイガースがあるのは、野村監督が種をまき、それを咲かせてくれたのが星野監督です。それをずーっと咲かせ続けられなくなってきていましたが・・・また新監督が引き継いでいってくれると思います。

司会)真弓監督はいかがでしょうか?
赤星)僕は1年間しかご一緒させてもらっていないので、真弓監督の本来の姿を把握できる前にやめてしまったのですが、ひじょうに人柄のいい方でしたね。当時、選手会長をやっていまして、真弓監督にいろいろご相談する機会もありましたが、「赤星がそう思うんだったらいいよ」と言ってくださるような、優しい方でした。あまり野球の話は一年ではできなかったですね。
一気に汗が出てきました(笑)。

司会)ビリー・ビーンさんは不可能を可能した人—そして、赤星さんも小さい体で盗塁王になられて、まさに不可能を可能にした方ですが—ビリー・ビーンさんの生き方に共感する部分はありましたか?
赤星)本当に正直、ここまで厳しい理論を取り入れるというのは、たぶん彼の中でも勇気がいることだったと思います。心を鬼にしてでもやらなければならない、(チームの)改革のためには自分はどう思われてもいいというくらい、映画の中で厳しさを見せています。ある意味選手からすると「そこまでしちゃう!?」というような部分もありますが。(彼の)チームを何とかしたいという気持ちがすごく伝わってきますし、そういう部分は、今の阪神タイガースでもそうですし、他の会社でもそうだと思うのですが、上に立つ人間が厳しさを見せてくれるのはすごく必要なことだと思います。僕自身もこういう人が上にいたら、厳しいながらもやりがいが感じられるのではないかと考えさせられました。そういう意味ではすごくいいですね。(彼が)すごくかっこよく見えました。

司会)最後に今から映画をご覧になる方々に、一言、映画のPRなどいただけますか?
赤星)野球に詳しい方々には、(マネーボール)理論についてとても考えさせられる映画ですし、また、誰が観ても—僕自身もそうでしたが—マネーボール理論がわかりやすく描かれているので、こういう理論があること、そしてその厳しさを知ることができる映画です。
また僕の中では「エーッ!?」という感覚を得た映画だったので、みなさんもきっと、映画をご覧になったら、いろいろなことを考えさせられると思いますが、楽しんで観ていただければと思います。