『トーキョードリフター』のゲストによるQ&Aセッションが行なわれました。

■ 日時・場所 10月25日(火) 21:27〜 @TOHOシネマズ六本木 スクリーン5
■ 登壇者 松江哲明(監督)、前野健太(俳優)

松江監督と前野健太さんに東京国際映画祭について感想を述べて頂きました。

松江監督(以下、監督):『トーキョードリフター』は小さい映画ですが、東京国際映画祭は本当に小さい映画を見つけて、僕らでは出来ない広げ方をしてくれる映画祭だと思っています。僕はこの映画を作って東京国際映画祭のスタッフの方に見ていただきたかったので、ここがスタートだと思います。本当に小さな映画なので、見た方一人一人の力が大きく伝わると思います。なので今日見てくれたのが、(ここにいる)お客さんたちですごく良かったと思います。上映していただいてありがとうございました。

前野健太:東京国際映画祭というこんなに大きな舞台で上映してくれて、こんなにたくさんのお客さんが来てくれたことが結構大きいのかな、と思いました。今日は遅い時間にもかかわらず来ていただいてありがとうございました。

Q: 2年ぶりに映画祭に戻ってきてくださった事を、前野さん、松江監督に深く感謝申し上げます。改めて製作から5ヶ月くらい経ちましてスクリーンで見た、今のお気持ちをお聞かせいただけますか?
監督: 実は3月の地震が起きて撮ろうと思った映画じゃないんですよ、これは。僕はそういうときに映画を撮るということはとてもできないと思っていたんですけど。ただ、4月11日に高円寺で行われた原発のデモを見ていた時と、その後すぐまた都知事が石原慎太郎さんに決まって、ニュースで“強い東京”みたいなことを言っている方がいて、それが僕には違和感があって。強いってことがこんなに脆いってことを、1ヶ月前に1000年に一度の出来事があったのに、また“強い”って・・・。それで、「あ、東京が明るくなっちゃうな」、と思ったんですよ。それで映画を作ろうと思ったのです。どういうスタンスで撮るのかってこととか、本当に色んな意見があって。スタッフの中でも実家が仙台にあって被災したり、友達を亡くしたって人もいましたし、また、家族を東京から避難させてるって方もいましたし。5月の撮影を始めるまでに話し合った時間というのが、すごい僕にとっては必要な時間で。今、(上映)直後なので言うと、一緒にこれを作ったスタッフと前野さんにすごく感謝をしている気持ちです。
前野健太:意外でちょっと不思議。ワインのような映画かもしれないですね。時間が経てば経つほど熟成するというか。

Q: 選曲は、『ライブテープ』よりちょっとセンチメンタルになっているかと思いますが、どのように選曲は考えましたか?
監督: 選曲は、街に合う歌を意識しました。ただ、前に行った前野さんのライブで聴いた曲や、僕が韓国でずっと聴いていた彼の『あたらしい朝』という歌の聴こえ方が、地震の前後では全く変わってしまいました。でも『あたらしい朝』は映画の最後に使おうと最初から言ってました。その他の歌については、僕が歌のリクエストを出しつつ、前野さんと相談をしながら決めました。
前野健太:まず『ライブテープ』とは全部曲を変えたかったので。ここはこれじゃない、っていうのを色々街を巡りながら決めましたね。

Q: 前野さんの曲は、3.11前はラブソングが多かったと思います。今回は社会派・前野健太という感じですが、歌がそういう風に捉えられてしまうことは前野さん自身どう思われますか?
前野健太:もともとラブソングを多く作っていましたが、今年の2月に出した最新アルバムは、一部の方から社会派と言われていたので…

Q: 監督や前野さんにとって、東京とは何ですか?
監督: 僕は生まれが立川で育ちが吉祥寺なので、東京に対して「憧れの街」というのは全くなくて。これはロケハン中にスタッフが言った言葉で、『トーキョードリフター』は「東京は東京だから」って感じを残したいと。東京は東京であってそれ以外の何ものでもない。東京は東京でしかないというか、世界中見てもこんな街ないし。暗くなっても東京は東京なんだなって。そういう感じですね。

前野健太:僕にとって東京は歌を作る場所です。他の街にもし住んだら歌を作れるのかな、と思うくらい「東京=歌」です。先のことは分りませんが、今は「歌を作る=東京で歌を作る」ですね。東京を結構好きなんだと思います。