9月1日公開、エイベックス・エンタテインメント配給)の公開直前、夏休み企画として2011年7月まで上野動物園の園長を務め、今も動物関連の書籍を多数監修している小宮輝之氏をゲストに招いたトークショー付き試写会を行いました。
40年以上もの間、動物たちと触れあってきた小宮氏ならではの本作の感想と、本作に登場する様々な動物に関するお話を語っていただきました。会場は親子連れも多く、子供たちからの質問に小宮氏が回答するシーンも見られました。

【上野動物園 前園長 小宮輝之氏 トークショー&試写会】
●日程:8月21日(日) 
●場所:スペースFS汐留 
●登壇者:小宮輝之氏(上野動物園 前園長)

Q:『ライフ ─いのちをつなぐ物語─』を観た感想は?
よくこんな動物と同じ目線の映像が撮れたな、と思いました。私でさえ初めて観るような映像もあったので驚きました。”特定の季節”だったり”特定の時間”にしか行わない行動も多く収められていて、動物たちの一番良い姿が集められている、とても贅沢な作品だと思います。

Q:本作に登場する動物の中で、特に印象に残ったものは?
本作を観て初めて知った動物がいました。”オリオフルネラ”、通称”コイシガエル”と呼ばれるカエルで、オタマジャクシの時期がなく、カエルのまま孵化する変わった種類です。なぜ”コイシガエル”と呼ばれるのか、映画を観て確かめて下さい。びっくりしますよ。
“ニホンザル”も印象に残っています。日本にしかいない種類で、温泉に入るという独特の生態が世界の人々を驚かせました。そんな動物が日本代表として登場したのが嬉しかったです。
あとは、”ハネジネズミ”という小さなネズミも印象的でした。モグラに近い生物だとされていたのですが、最近のDNA調査によって、一番近い動物はゾウだということが分かったんです。そのような分類学的な面白さにも興味が湧いて、上野動物園で飼育したことがあります。この映画を観てからだったら、もっとうまく飼育できたかもしれないな、と思いました。
そうそう、DNA調査といえば、クジラやイルカは、アシカなどから進化したと皆さん思っていますよね?最近の調査で、カバから進化したことが分かったのです。カバたちが海へ出てクジラになったんですよ。

Q:上野動物園での”いのちをつなぐ”エピソードを教えてください
9年前に上野動物園で初めてゴリラの子供が生まれました。私たちはその時、懐中電灯をつけてビデオカメラで記録しながら出産に立会いました。母親は、懐中電灯も、ビデオカメラも嫌がりませんでした。ゴリラは群れを作って生活する動物ですが、きっと私たちのことを信頼して、群れの一員だと思ってくれたんだなと思って嬉しかったです。
そして、その時生まれた子供は、今京都の動物園にいるのですが、彼の子供が今年12月頃に生まれる予定です。日本生まれのゴリラ同士の間に子供が誕生するのはこれが初めてになります。

Q:動物とうまく共存するためにはこれからどうするべきでしょうか?
上野動物園の一番の自慢は不忍池だと思っています。ビルに囲まれた3ヘクタールの土地にあらゆる生物が生息していて、多様性を保てるように工夫しています。動物園も自然も同じで、1種の生物だけが数を増やすと、環境が破壊されてしまいます。人間だけで生きていくことはできませんので、動物たち、植物たちも暮らせるような環境を作ることが大事だと思っています。この映画を観ると、こんなに素晴らしい動物たちが見られなくなるような世界にはしたくないな、と思えます。