スイス南部のティチーノ州ロカルノで開催中のロカルノ国際映画祭で12日午前(日本時間同日午後)、大規模な屋外会場で上映する「ピアッツァ・グランデ(Piazza Grande)」部門に招待された「さや侍」の松本人志監督が記者会見に出席した。

ピアッツァ・グランデ部門は映画祭の目玉の1つ。町の中央広場ピアッツァ・グランデに巨大スクリーン(幅約26メートル、縦約14メートル)を設置し、観客約8000人を収容できる仮設の屋外映画館をつくって、夜間に作品を上映する。
やや硬い表情で会見に臨んだ松本監督は、前日の舞台あいさつとは打って変わってギャグを封印し、質問に答えた。

◆記者会見の一問一答
 -今までの作品とは違う。新しいコンセプトをどう考えたのか?今作に出演しなかった理由は?
 「とにかく映画を作るにあたって一番大事に思っているのはオリジナリティー。それと同時に観客を驚かせたいというのが強くあって、『僕の過去2本の映画を見た人は、おそらく3本目はこんな感じで来るとは思わないだろうな』というところをあえて突いてみた。感動させることで驚かせようと思ったのが今回の狙いだった。
 それと僕は日本では有名すぎるので、あえて顔を出さずに裏方に徹して1本映画を撮ってみたかった」

 -父と娘の関係が大切に描かれている。笑いだけでなく悲しい場面もよく出てくるが、観客を泣かす目的もあったのか?
 「今回はどれだけ見た人の感情を揺り動かせるかが1つのテーマだった。コメディとシリアスの綱引きのような映画になれば良いと思っていた」

 -昨日(プレス試写会)のお客さんがすごく喜んだと聞いたが、ロカルノの印象は?
 「こっちの方は映画に対してすごく真面目というか一生懸命。日本人は映画館で面白くてもがまんする。面白くても笑いをこらえちゃう。泣きそうになるのをぐっとこらえちゃうっていうのがあるが、そうじゃなくて、面白かったら笑ってほしいし、悲しかったら全然気にしないで泣いたらいいし。ヨーロッパの人たちはそういうところがすごく長けているというか、日本人はまだ照れが相当あるのかな。自分も含めて感動とかをもっと表現できたらと思う」

 上映会は同日夜(日本時間13日早朝)に開催された。
上映に先立ち、松本監督、板尾創路、野見隆明、熊田聖亜、吉本興業の大崎洋社長が舞台あいさつに登壇。松本監督は前日に引き続き、イタリア語で「最高」を意味する「オッティモ」づくしのあいさつを行い、会場から大爆笑がわき起こった。
 
◆舞台あいさつ詳細
野見「親子のきずなを」と話したところで言葉が詰まる。
熊田「スイスという素晴らしい所に来られたのも松本監督のお陰で、すごく感謝しています」
板尾「ジャパニーズ・アクターとして、この大きなスクリーンに映ることを光栄に思います」
松本監督「ボナセーラ(こんばんは)。ロカルノ、オッティモ。ピアッツァ・グランデ、オッティモ。スウォッチ、オッティモ。DJボーボー、オッティモ。さや侍、オッティモ、オッティモ。グラッチェ(ありがとう)」

観客と一緒に作品を鑑賞した松本監督は上映が終わると、目を潤ませながら両手を高々と挙げて立ち上がり、観客の拍手に答えた。この後、松本監督は日本メディアの合同インタビューに応じた。

◆合同インタビューの一問一答
 -まずはおめでとうございます。素晴らしい瞬間に立ち会わせてもらい感激した。
 「何か気の利いたことを言いたいが。言葉が出ないというか、見てもらったまんま、あの感じという感じです」

-伝わったというのがすごく伝わって動けない感動を覚えたが?
 「一瞬ですけど、この辺りに部屋を借りようかなと思った」

-感動したか?
 「できることなら、これをまずやってから何日かいたかった。最終日にこれなんで、ずっと緊張して、やっとこれからスイスを楽しめるっていうのに、あした帰らないといけない」

 -監督の目が光っていた気がしたが、ぐっと来る瞬間があったのか?
 「まずあの会場に足を踏み入れた時に、何だこの感じという。会場の雰囲気がすごかった」

 -今も監督の目が潤んでいるように見えてしまうが?
 「最近しっかり寝てないんで。正直言ってこれほど完ぺきに入れてもらえるとは思わなかったので、次どうしようかと思っている」

 -本当の一言でいうとどんな言葉か?
 「オッティモとしか言いようがない。結構なオッティモです」

 -お子さんが生まれたことが影響しているのか?
 「そう言わざるを得ないというか、丸出しですよね」

 -こんなふうに手をつないでみたいなと?
 「まあ、そうなんでしょうね。ひと昔前なら考えられない作品だとは思う」