人間関係が希薄になりつつある現代社会の中で生まれた「遺品整理業」という職業を通して成長する若者の姿と、「生と死」という切実なテーマを真摯に描いた「アントキノイノチ」(さだまさし著、幻冬舎文庫)。

本書が、2010年『告白』『悪人』などに出演し、躍進目覚ましい岡田将生と、『余命1ヶ月の花嫁』での演技が高く評価された榮倉奈々、そして第61回ベルリン国際映画祭で『ヘブンズ ストーリー』が2冠を遂げた瀬々敬久監督により、遂に映画化されました。
今月2日には、8月18日より開催される第35回モントリオール世界映画祭のワールド・コンペティション部門への正式出品が決定した話題作です。

そしてこの度、本作の完成報告会見が行われ、モントリオール世界映画祭に向けて、意気込みを語りました。

■『アントキノイノチ』完成報告会見 概要

【日時】8月10日(水)12:00〜
【場所】ホテルニューオータニ 芙蓉 西の間
【登壇者】
岡田将生(21)、榮倉奈々(23)、原田泰造(41)、松坂桃李(22)、瀬々敬久監督(51)

■瀬々敬久監督
さだまさしさんの原作を読んだ時期、ちょうど世の中で無縁社会や孤独死といった言葉が話題になっていて、マスコミでも報じられていました。そんな社会背景の中で、命のつながりについて考える映画になればと思って本作を作りました。

本作で描いた遺品整理業という仕事は、孤独死をした方の遺品を、遺族の代わりに整理をして、大事なものを遺族の方にお戻しする仕事です。

そして、本作がクランクインしたのは今年の3月1日でしたが、あの震災の当日は、とある団地で撮影をしていました。スタッフの中には帰宅する事もできず、現場に泊まった人もいました。

『映画はなくても日常生活には支障はないのではないか?』『今、この時期に果たして映画を撮影していてよいのか?』そんな葛藤を抱えながら撮影に臨んだスタッフもいたのではないかと思いますが、あの震災を境に、やはりみんな人とのつながり、絆を求めているのだなと思いました。そんな状況の中で作った映画です。

主人公の2人は心に傷を負っていますが、生き残った人の苦しみや悲しさをも体現していると思います。

映画を通して、人と人のつながりや命の大切さが伝わっていけば良いなと思います。また、キャスト、スタッフ、撮影に協力してくれた街の皆さんに感謝します。

■岡田将生さん(永島杏平役)
「アントキノイノチ」というタイトルだけ聞くとコメディ映画だと思う方もいるかもしれませんが、“命”というテーマをとても大切に描いた作品です。
多くの方に観てもらえればと思いますが、中でも若い方々に、ぜひ観てもらいたい作品です。

■榮倉奈々さん(久保田ゆき役)
“命”、そして“生きる”という事について考える事が多いこの時期に、まさにそれらをテーマにした「アントキノイノチ」に携わらせて頂いて、ありがたく思っています。日本中の方に観て頂きたい作品です。

■原田泰造さん(佐相役)
立って挨拶させて頂きます。
(おもむろに歌い出す)曲がった事が大嫌い〜!消臭力〜♪
今、なぜ立ってしまったのか、深く反省してます(会場笑)。

出演のオファーが来た時は、『とうとうプロレスの映画の話が来たのか』と、思いましたが、台本を読んでみるとすごく泣けて、いい映画だなと思いました。

また、先日完成した映画を観たのですが、映画を観終わって岡田君と榮倉さんを抱きしめたくなりました。心の痛みがダイレクトに伝わってきて、素晴らしかったです。

そして、そんな2人を劇中で温かく見守っていた僕も、手前味噌ですが、自分で自分を抱きしめてあげたくなりました(会場笑)。

■松坂桃李さん(松井新太郎役)
原田さんの後は挨拶しづらいですね(会場笑)。
原作を読んだ際、自分が演じた松井にまったく共感できなかったので、本当に苦しみながら、時には自己嫌悪しながら演じました。

でも完成した映画を観て、『松井は誰よりも生きたい気持ちが強くて、その伝え方が人と違っただけなのかもしれない』と思えるようになって、彼に共感する事ができました。そういった面も含めて映画を観て頂けたらと思います。

◆Q&A

Q:瀬々組の撮影はどうでしたか?
監督の印象やエピソードがあれば教えて下さい。

■岡田さん:
強面の方なので、怖い人かと思っていたのですが、僕が泣いているシーンで、
監督もカメラの向こう側で泣いていてくれていたのを見て、
『いい監督だなぁ』と思いました。

■榮倉さん:
私は、監督に名前を覚えてもらう事が最初の目標でした(笑)。
撮影していて、明らかに私の方を見ながら『岡田さん』って呼びかけられた事が
ありました。名前を覚えてもらえたのはクランクアップの1週間前くらいでは
ないかと思います(会場笑)。

でも、『カット!』って言いながら、カメラの向こうで鼻水を垂らして
泣いていたりして、周りのスタッフみんなが、監督を応援しようと
思えたから絆が生まれたんだと思います。

■松坂さん:
険しい山の上での撮影シーンがあったのですが、監督はロケハンの時に、
実は骨折していたそうなんです。でも、僕らの撮影の時に怪我をおして、
一緒に山に登ってくれて『凄い人だなぁ』と思いました。

でも、僕と岡田君の方を見て『松岡くん!』って呼び掛けてきた事があって、
その時は岡田君と『どっち?』って顔を見合わせてしまいました(会場笑)。

Q:本作はモントリオール国際映画祭のコンペティション部門へ
出品されますが、この度、監督、岡田さん、榮倉さんが映画祭に参加する事が
決定しました。ぜひ、意気込みを聞かせて下さい。

■瀬々監督:
まずは日本の方々にご覧頂ければと思っていましたが、こういう機会を
得たからには、世界の人々に映画を共有してもらい、つながっていけたらと
思っています。

■岡田さん:
ビックリしました。でも、世界の皆さんに観てもらえるのかと思うと、
嬉しくて嬉しくて仕方がありません。しかもモントリオールに行ける事に
なったので、なおさら嬉しいです。

映画祭を楽しみながら、作品を皆さんと共有できればと思います。

■榮倉さん:
いつかは映画祭に行けたらと思っていましたが、参加できるとは
思っていなかったので嬉しいです。国境を越えて映画を観てもらえるのが
嬉しいですね。

Q:今回、役作りのために遺品整理の仕事も体験したそうですが、
体験してみていかがでしたか?

■岡田さん:
最初に行かせてもらった時は、ただただビックリしたというか、
『本当にここに人が住んでいたんだなぁ』と自分の中で素直に
噛みしめましたが、その後は、作業のやり方を教えてもらいながら、
ただただ一生懸命に片付けていたイメージがあります。

でも、僕が演じた杏平は、最初から遺品整理業を学んでいく役だったので、
瀬々監督とその場その場で少しずつ学んでいけばいいのではないか、
という事を話し合って撮影に臨みました。

■榮倉さん:
日常生活で他人の家に入って、勝手に掃除をする事はないので、
他人が生活していた部屋に入る事の違和感が凄くありました。

でも、遺品整理業は、お亡くなりになった方の家を片付ける仕事なので、
自分の感情とプロとしての気持ちを同時に持っていなければ
いけないんですよね。そのせめぎ合いがあるし、不思議なお仕事だなと
思いました。

実際に行って感じる事は、絶対にお芝居に生きてくるので、
体験させてもらって良かったです。

■原田さん:
今回体験させてもらった事が、役作りの全てでした。
『こんなに淡々と作業をするんだ』と思う事もありましたし、
『ここは、こんな風に大事に供養するんだな』と気づいた事も
ありました。

Q:岡田さんと榮倉さんは、今回が初共演でしたが、感想を教えて下さい。

■岡田さん:
年齢は2歳、榮倉さんの方が上なんですが、沢山話しかけてくれたので、
僕も話しやすかったですし、榮倉さんをゆきとして見ていたので、
心が和らいでいく自分に気づく事ができ、凄く良かったです。

■榮倉さん:
岡田さんは目がとても純粋なんですよね。まるで小学生と話している
みたいで、とても楽しかったです。可愛らしい人です。

Q:今の言葉を受けて岡田さん、いかがですか?

■岡田さん:
もう今年で22歳になるんですけど、そう言ってもらえると嬉しいですね(笑)。
ありがとうございます。