東京国際映画祭:『ゼフィール』コンペティション公式記者会見
■ 日時・場所 10月24日(日) 14:00〜 @ムービーカフェ
■ 登壇者 ベルマ・バシュ(監督/脚本)、ビロル・アクババ(プロデューサー)、シェイマ・ウズンラル(女優)
Q: 初来日だと思いますが、東京の印象は?
ベルマ・バシュ監督(以下監督):日本の伝統文化には興味がありますし、日本を訪れることは子どもの頃から夢でしたので嬉しいです。もちろん、私達の
映画が上映される初の国際的な映画祭なので、とても楽しみです。
シェイマさん: 背の高いビルが多いのに驚きます。皆さんにはとても温かく歓迎していただいています。
ビロルさん: グリーンカーペットを歩かせて頂きましたが、ずっと前から東京に来ているような、心地良さを感じました。
Q: カンヌでも注目された短編を発展するかたちで、今回の長編デビュー作を撮られたと聞いていますが?
監督: 映画のタイトルには、風にまつわる名前を付けています。短編のデビュー作「Poyraz」はギリシャ神話の北風の神の名前です。「ゼフィール」もギリシャ神話の西風の神です。
アイディアの源は色々あります。ひとつは、私自身の祖父母と山奥で暮らしていた子ども時代です。それから英語での教育を受け始めた頃、とりわけ19世紀のロマン主義文学を勉強したことです。当時読んだ文学作品は、私の子ども時代の思い出と重複する、そんな印象受けました。その後、映画史や現代映画についても勉強しました。
「Poyraz」は、世界60か所の映画際で上映され、たくさんの人々に受け入れられ、嬉しく思います。作品では、初めて死と向き合うことになる子どもを描きました。実際に死を目前にするのではなく、死という概念との出会いです。抽象概念を持てるのは、12歳くらいになってからだと言われています。それまでは、死というものが理解できず、それはただの恐ろしくよくわからないことなんです。
撮影については、いずれの映画にも両親に係わってもらっていますし、シェイマが主役を演じています。地元で撮影しましたが、子ども時代を思い出せば、風景もずいぶん変わりました。コンクリートの建物がどんどん増えて行き、自然の美しさが保たれていないことが非常に残念です。自然の美しさに永遠性を与えるためにも、それをフィルムに収めたいと思いました。私はものごとをゆっくり行うタイプで、短編も13年もかけて仕上げました。でも「ゼフィール」については、自然が失われていくスピードに追いつかなくてはという観念に後押しされ、私としてはかなり短時間で仕上げることができました。
Q: 崖っぷちのシーンなど怖くなかったですか?
シェイマさん: 撮影自体は大変でしたし、崖のシーンは崖がすごく高くて怖かったです。
Q: 色鮮やかな映画でした。自然も美しかったですが、主人公のゼフィールの服装の色も象徴的だったと思いますが?
監督: そうですね。最初は、自然の中の野苺の赤だったり、マッシュルームの茶色だったりと、自然と調和した色を纏っています。しかし、母親がやって来た日からは母親のスタイルをまねてグレーやブルーを着るようになります。ですから、はい、お気づきの通り、服装の色にも意味をもたせました。
Q: 子どもが死を発見するというテーマですが、どのようにシェイマさんに作品を説明し、撮影を続けたのでしょうか?
監督: とりわけ子役については、死という現実をあまり生々しく感じず、リラックスした雰囲気で演技ができるように、映画の全貌を伝えずに、つまり台本をすべて見せることなく撮影を進めました。台本の全ページを手にしていたのはプロの俳優、母親役の女優だけで、その他のキャストには、部分的なものしか渡しませんでした。
若い作家が次々と育ち、世界の映画祭で特集が組まれるなど、近年好調のトルコ映画界。ペルマ・バシュ監督は、2006年にカンヌ国際映画祭で正式上映された短編で注目され、斬新な映像センスで生と死を見つめるその作風は、巨匠イングマール・ベルイマンにも例えられました。将来が嘱望される新人女性監督の長編デビュー作に期待が高まります。