やっとカンヌらしい爽やかな晴天日が続いたここ数日。屋外における写真撮影も、ぬけるような青空をバックにすることが出来るようになって嬉しい。
 さてさて、映画祭9日目の20日(木)。“コンペティション”部門の正式上映作品は、ダグ・リーマン監督の『フェア・ゲーム』、ダニエル・ルチェッティ監督の『アワ・ライフ』、ケン・ローチ監督の『ルート・アイリッシュ』の3作品。“ある視点”部門には、鬼才ロッジ・ケリガン監督の『レベッカH:リターン・トゥ・ザ・ドッグズ』が登場した。
 また“監督週間”ではドキュメンタリー映画の巨匠レデリック・ワイズマン監督がオースティンで撮影した『ボクシング・ジム』が特別上映されている。

◆人気女優ナオミ・ワッツは、今回のカンヌで出演作2本(招待作品とコンペティション作品)が上映!
 
 朝の8時半からプレス試写が行われた『フェア・ゲーム』は、2003年に全米を騒然とさせた「プレーム・ウィルソン事件」を題材にした社会派サスペンス。
 CIAの秘密工作員であることを暴露されたヴァレリー・ウィルソンと、彼女を守るため政府を敵に回して戦う反骨精神あふれる夫、外交官のジョー・ウィルソンの奮闘を綴った実話の映画化だ。監督はハリウッド大作『ボーン・アイデンティティー』『Mr.&Mrs. スミス』『ジャンパー』で知られるダグ・リーマン。ジョー・ウィルソン役のショーン・ペンは、残念ながらカンヌ入りしておらず、11時から行われた公式記者会見には監督とヴァレリー・ウィルソン役のナオミ・ワッツが(彼女は15日の13時半に行われた『ユー・ウィル・ミート・ア・トール・ダーク・ストレンジャー』の公式記者会見に続き、2度目の)登壇をした。
 実在の人物を演じるにあたり、どんな準備を行ったかと問われたナオミ・ワッツは、「事件のことは知っていましたが、ヴァレリー・プレームについて深く調べ、その人物象を理解することが重要だと思いました。本人にも連絡を取り、メールを交換し、夕食をともにしたこもあります。そして、この素晴らしい女性が今でも秘密を隠し持っていることを知ったのです」とコメント。
 カンヌ初参戦となるダグ・リーマン監督は、主演の第一候補だった俳優2人、ナオミ・ワッツとショーン・ペンの起用が実現できたことに満足したそうで、ショーン・ペンに関しては、「彼は現在活躍する俳優の中で、最も偉大な俳優の一人。そして彼はジョー・ウィルソンそのものに成りきってくれた」と絶賛した。

◆カンヌの常連監督である英国の名匠ケン・ローチ監督の『ルート・アイリッシュ』が16時半より正式上映!

 映画祭の開催直前の2日前に、“コンペティション”部門への出品が決まったケン・ローチ監督のイラク戦争ドラマ『ルート・アイリッシュ』。2006年に『麦の穂をゆらす風』でパルム・ドールを受賞しているケン・ローチ監督は、去年も“コンペティション”部門で『ルッキング・フォー・エリック』が上映された、まさにカンヌの常連監督である。今年は急遽、参戦が決まったため、公式プログラムにも記載されず、正式上映がプレス上映を兼ねることになり、上映会場はごった返すことに。
『ルート・アイリッシュ』は、イラク戦争から復員し、リヴァプールに戻っていた傭兵ファーガスが、現地に残った親友フランキーの訃報を聞き、その死因に疑惑を抱いて真相究明に奔走する姿を描いた作品で、主演はマーク・ウォーマック。今回も監督の朋友ポール・ラヴァティが脚本を担当しており、タイトルは、イラク・バグダッドの“グリーン・ゾーン”と呼ばれる多国籍軍や政府関係者らの住まい、政府関係の建物が多くある地域と空港を結ぶ道の名称のこと。
 上映後、観客から心のこもったタンディング・オベーションが贈られる中、ケン・ローチ監督やプロデューサー、俳優ら、上映に立ち会った関係者が互いに抱擁し合あう姿がとても印象的であった。
(記事構成:Y. KIKKA)