昨日、17日(月)は、テンテコ舞いの1日だった。朝の8時半から観た『ビューティフル』(上映時間2時間18分)の公式記者会見が11時15分よりスタート。正式上映は22時半からだが、それに先立って行われた『アウトレイジ』の公式記者会見が12時半からのスタート。13時45分からは『フィルム・ソーシャリズム』のジャン・リュック・ゴダール監督の公式記者会見。
 さらには、日本映画『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』の主演女優・成海璃子が、高級ホテル・マルティネス前のプライベートビーチで書道パフォーマンスを15時頃に行うという。こりゃ今日の昼飯は抜きか…と思った矢先に、ジャン・リュック・ゴダール監督がカンヌ入りしていないというニュースが駆け巡り(当然、記者会見はNG)、何とかランチタイムをゲット。『フィルム・ソーシャリズム』は16時半からの上映の回に観ることに。19時15分からはアッバス・キアロスタミ監督の『サーティファイド・コピー』(公式上映は18日に行われるコンペ作品)のプレス試写を鑑賞。
 その後、急いで着替えて(ドレスコードがある正式上映に行くため)22時半からの『アウトレイジ』を鑑賞。その足で上映後に行われるレセプション・パーティの会場に駆けつけ、日本の報道陣向けのミニ会見に出席。それが終ったのが深夜の1時過ぎ。それからパーティ会場で振る舞われたシャンパンとワイン&美味しいスナックをいただいてホテルに戻ったら、何と3時近くになっていた。

◆『アウトレイジ』の公式記者会見には北野武監督と森昌行プロデューサーが出席!

 北野武監督のカンヌ入りは、映画祭の60周年記念企画に参加した2007年以来、3年ぶり4度目。コンペ部門は1999年の『菊次郎の夏』以来11年ぶり2度目となる。監督第15作目の『アウトレイジ』は、北野監督がビートたけしとして主演したほか、脚本、編集も兼ねた作品で、ヤクザ社会の抗争を描いたバイオレンス映画だ。
 関東一円を取り仕切る巨大暴力団組織・山王会一門の男たちが、生き残りを賭けて激烈な権力闘争を繰り広げていく様を徹底した暴力描写で見せた群像劇で、共演は椎名桔平、杉本哲太、石橋蓮司、加瀬亮、三浦友和、國村隼、北村総一朗ら。
 公式記者会見で北野監督は、「久しぶりのバイオレンス映画。お客さんの反応が楽しみ」と述べ、海外プレスから多才ぶりについて問われると、「自分は振り子のようにありたいと思っている。究極のバイオレンスを追求したら、今度は対極のユーモアの方に振る。一番こわいのは、その振り子が止まって、時計の針のようにグルグル回転してしまうことだ」と返答。
 国際的な評価についての質問には、「自分が監督を始めた頃は、カンヌもヴェネチアも知らなかった。だけど今は、なぜかこんな状況になった。カンヌを意識して映画を撮ってはいないし、意識していたら、こんな酷いバイオレンス映画は作っていないよ」と語り、会場を沸かせた。

◆北野武監督の人気は高く、監督が会場に入場するや大歓声がわき、惜しみない拍手に迎えられた正式上映

 その多才ぶりが評価され、今年の3月に仏芸術文化勲章の最高章コマンドール章を受章したばかりの北野武監督だが、パリでは現在、彼のレトロスペクティブ上映や美術作品の展覧会が開催中と、今まさにフランスでキタノフィーバーが巻き起こっている。そのためか、正式上映時には監督が会場に到着した時から拍手がわき起こり、照れまくった北野監督は、殊勝な顔に。上映後のスタンディング・オベーションも5分近く続いた。
 だが、上映後の日本人プレス向けのミニ会見ではいつもながらの毒舌が復活。観客の反応が狙い通りとれたことに満足していると語り、ヨーロッパの中でも特にフランスで人気がある理由を問われると「どっちも人が悪いし、ケチだからじゃないかな」と笑わせた。
 また、北村総一朗が組織のトップで、三浦友和がナンバー2という意表をつく配役にした後、自分には中間管理職の悲哀を感じさせるヤクザの大友というオイシイ役を振った(自分で演じると決めた後に、大友のシーンを増やした)と言うキャスティングについても自信を覗かせたが、「こんなバイオレンス映画がコンペに選ばれただけでも栄誉なことだし、ありがたい。その上、賞だなんて図々しいよ」とコメント。
(記事構成:Y. KIKKA)