早くも「今年度邦画“ナンバーワン”」、「日本映画史に残る名作」との絶賛の声も高まる日本映画界の新たな佳作「春との旅」が、5月22日（土）に全国６０館で公開を迎えました。

上映後、感動の余韻が残り、多くの観客が涙を拭うなか、豪華俳優陣の登場に会場からは大きな拍手が湧き起った。満席の会場をみて、小林政広監督は「掃除のおばさんしかいなかったらどうしようかと思った。自分の映画でこんなに（観客が）入ったのは初めてです。」と顔をほころばせた。足の不自由な老漁師・忠男を演じた主演の仲代達矢さんは「頑固でわがままなじいさんを演じた仲代です。」とハニカミながら挨拶をし、「この作品で上映後に挨拶をするのは初めてなので、（観客の反応が）怖いのですが」と言いながらも、「一生懸命作った作品なので、一人でも多くの方に観てほしい」と自信作をアピールした。また、イメージとは正反対の頑固で我儘な役柄を演じたことについて聞かれると、「私も頑固ですよ（笑）。本当は人のことを気にせずに自分が思うように生きたいが、やはり人に迷惑をかけないようにと思うと好き勝手にできないですよね。だからこそ今回は（普段できない分）おもいっきり、わがままに演じました。」と役に対する想いを語った。わがままな忠男を演じるにあたって誰かモデルはいるのかと尋ねられ、「特に意識はしていなかったのですが、（演じてみて）既に他界した、私の母に似ているんです。とても自分勝手な人でした。」と話すと、小林監督も「実は私の父もわがままな人なんですよ。」と話し、それぞれの両親のエピソードを語った。忠男に振り回されながらも共に旅をする孫娘・春を演じた徳永えりさんは、印象に残るエピソードを聞かれ、「（監督に誰とも口を聞いてはいけないと指示され）とても孤独でした。でも、出来上がった作品を観て（孤独だったことが）意味があったのだと確信しました。キャンペーンで各地をまわり、やっとみなさんにお届けできるのが嬉しいです。」と語り、また役柄の特徴であるガニ股歩きが印象的だと尋ねられると、「もう完全に治りました。」と微笑んだ。温泉旅館をきりもりする忠男の姉・茂子を演じた淡島千景さんは「やっと監督の作品に出させてもらえました。私もたくさんの兄弟がいますが、この作品に出て兄弟って本当にいいもんだと思いました。厳しい姉を演じているので（役について）色々な評価もあると思いますが、かわいい弟の事を想ってのことなので、気持ちを汲んでもらえると嬉しいです。」とコメント。主人公の弟・道男を演じた柄本明さんは忠男との兄弟ゲンカのシーンについて聞かれ、「（仲代さんに）たくさんなぐられました（笑）。」と答えると、仲代さんは「（セリフで）あなたもひどいことを言いましたよ（笑）」と反論し、会場を和ませた。柄本さんは「尊敬する仲代さんになぐられて、本当に光栄です。」と大先輩との共演を振り返った。また、道男の妻・明子を演じた美保純さんは「最近ダイエットに成功したので、（劇中の外見とは）変わってると思います。もうすぐ50歳になるのにまだミニスカとかはいてて、周りからはまだまだひよっこだと言われるのですが、これからもおばさんに見合う役を演じていきたいです。」と語り、さらに主人公・忠男について、男としてどう思うかとの問いに、「後ろから抱きしめたいですね。でも、今日の仲代さんもロン毛でセクシーです。」と、仲代さんに対し熱い視線を送った。また、次回作への意欲を尋ねられた小林監督は「まだこの作品から抜けきっていないので、次回作はまだ未定です。どうか多くの人にこの作品を観てもらえるように願っています。」と答えると、この作品に10年の歳月を費やした小林監督に対し、仲代さんは「もし次の作品を作るなら、10年もいきられませんが、何の役でもいいから、また監督の作品に出たいです。」と再タッグへ意欲を表した。