第22 回東京国際映画祭クロージングセレモニー終了後、受賞者記会見が行なわれました。

■ 日時・場所 10月25日(日)、16:30 @六本木ヒルズ、アカデミーヒルズ49 スカイスタジオ
■ 登壇者
審査委員長 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
コンペティション: 東京 サクラグランプリ 『イースタン・プレイ』のカメン・カレフ監督、ステファン・ピリョフ(プロデューサー)
審査員特別賞 『激情』のセバスチャン・コルデロ監督、マルチナ・ガルシア(女優)
最優秀女優賞 ジュリー・ガイエ (『エイト・タイムズ・アップ』)
観客賞 『少年トロツキー』 ジェイコブ・ティアニー監督、ケヴィン・ティアニー(プロデューサー)
アジアの風: 最優秀アジア映画賞 『旅人』のウニー・ルコント監督
日本映画・ある視点: 作品賞 『ライブテープ』 の松江哲明監督

「幸せです。長いストレスの日々がやっと終わったように感じます」と 『旅人』でアジアの風部門、最優秀アジア映画賞受賞のウニー・ルコント監督。ソウル生まれで9 歳からフランスに暮らしているルコント監督は、「実はもう韓国語を話せなくなっています。映画を作ることに影響していると思います。それは映画自身が言語であるからです。母国語を失っている一方でフランス語を完全に操ることができない。だから映画を通して自分自身を表現しています。」カンヌやトロントの映画祭にも参加されている経験から「女性監督・男性監督という棲み分けがなくなること」を切に願っているとコメント。
「授賞式ではポカンとしてしまっていましたが、今はほっとしたというのが本当の気持ちです。」憤りを感じたことがきっかけで作ったという『ライブテープ』で日本映画・ある視点部門、作品賞受賞の哲明監督。「エンドクレジットに『父と祖母と共に』とありますが、昨年立て続けに父と祖母と同級生を亡くしました。そのことをどう消化して良いのか分からず、フラストレーションが溜まっていました。で映画を作ろうと考えました。」

続いてコンペティション部門の各賞受賞者の方々が登場。『激情』で審査員特別賞を受賞したセバスチャン・コルデロ監督は、「東京国際映画祭を楽しませていただきましたが、これ以上の終わり方はありません」とコメント。「この映画の題材はアルゼンチンの小説でしたが、実は、この映画制作中に恋をしていましたので、別の心境であったなら入らなかった台詞やシーンがあったのかもしれません」と打ち明けてくださいました。ローサ役を演じたマルチナ・ガルシアさんは、「今回の審査員の面々を見ましても、審査員特別賞をいただきましたことを大変光栄に思います。映画祭のエコロジーというテーマも素晴らしいと思います」と述べました。
「コンペ部門に選ばれたことを昨日のことのように覚えています」と最優秀女優賞を受賞した『エイト・タイムズ・アップ』のジュリー・ガイエさん。「10 日間皆と一緒に過ごして話し合ったりすることができて楽しかったわ。この賞は、私だけのものではなくで、シャビ・モリア監督と作品に対して贈られたものであると受け止めています」と笑顔でお話くださいました。
昨日のアリーナイベントで既に観客賞を受賞されていた 『少年トロツキー』のジェイコブ・ティアニー監督も、受賞の喜びと共に、多くの監督や俳優、映画関係者と親交を深める機会を持つことができて有意義だったとコメント。「日本の観客の皆さんは、温かく私たちの作品を受け入れてくださって、本当に嬉しく思っています。」ティアニー監督の父親でもあるプロデューサーのケヴィン・ティアニーさんは、「昨日の受賞から最高の気分です。愛されていることは、幸せなことです」とご満悦でした。

重たそうにトロフィーを抱えながら東京 サクラグランプリと最優秀監督賞受賞の『イースタン・プレイ』のカメン・カレフ監督とプロデューサーのステファン・ピリョフが登壇されました。本作の制作においては両国のスタッフ間には協力と友情しかなかったものの、隣国オスマントルコに500年支配された歴史背景からも今でもお互いに偏見が存在していることに対して疑問を問いかける両氏。世界的に見られる政治的意図によって偏見を助長するような動きに惑わされないようにしてほしいと訴えました。大変残念なことに、最優秀男優賞を受賞された同作品のフリスト・フリストフさんは、残すところ数ショットのクランクアップ直前に他界されました。「本来賞というものは、受賞者が今後の人生において励みとなるものですから、深い感銘を受けました。」とカレフ監督。2010 年5 月にクランクイン予定の次プロジェクトは、全く新しい作風、表現方法で、若い男性が自己発見して行く内容とのことです。

最後に、コンペティション部門の国際審査委員長を務めてくだったアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥさんに総評をいただきました。審査にあたっては「映画を観客の目で見ること」を審査員に求め、感情や五感に訴える映画を選ぶように努めたとのこと。「『イースタン・プレイ』は、際立って審査員一同のハートを掴んだ作品です。社会的にも政治的にも複雑な背景において展開するラブストーリーがいくつかありましたが、『イースタン・プレイ』では真実というものが上手く表現されていて、美しさが感じられました。監督が意図的に見せたいという目的が最後まで達成されていました。映画はリアリティではなく真実を見せるものです。近代の若者の直面している複雑な社会を上手く描きながら、人生において希望があるんだということをしっかりと見せてくれた映画だと思います。」授賞作・受賞者を決める過程において、5 つの内4つの賞について、そして最優秀芸術貢献賞を該当無しという決断についても、満場一致の決断だったことを打ち明けてくれました。