「ストーリーズ」のゲストをお迎えし、記者会見が行なわれました。

■日時・場所 10月21日(水)、15:10 @ムービーカフェ
■登壇者 マリオ・イグレシアス(監督)、コンセプシオン・ゴンサレス(女優)

心に闇を抱えた小説家志望の中年女性。執筆を通じて、自分に向き合おうとするが…。平凡な夫婦の日常の光景のなかに、彼女が書くショート・ストーリーが効果的に挿入され、やがて鮮やかな感動が訪れる人間ドラマ。
来日4 日目のイグレシアス監督とゴンザレスさん。まずは東京の印象について伺いました。

監督: 先ほど森ビル上階の展望台で巨大な風景を臨みました。東京は、広すぎるくらい広い。一方で、毎日接している人と人とのつながりは、とても親密です。そのコントラストがおもしろいですね。
ゴンサレスさん: 私も監督も、スペインのガリシア州ポンテベドゥラ県にある小さな村の出身です。ですから東京はびっくりすることばかりです。

質問: 構成が鮮やかで、ひとつの物語の中にいくつか短編が入っているという作品ですが、最初にお作りになろうと思ったのは短編が入った作品ですか、それともこういう物語を語りたいというのが先にあって、それを効果的にするために短編を入れたのでしょうか?
監督: 最初に短編を作ろうと思っていました。短編映画用のストーリーを何本か考えていました。そこで、それをまとめてみようと思ったんです。
そこで、「小説を書く女性」を思いつきました。つまり私のストーリーを劇中の人物に書かせたわけです。

質問: この映画は長編の中に短編があってその全ての主人公が女性ですが、男性であるマリオさんが監督するにあたって、女性の心理などについてご参考になさったものはありますか?
監督: ひとつには、常日頃から自分のことを語るために、女性に語らせるといったことを考えています。もうひとつは、女優が自分の心理状態や感情を導入し表現することができるように、映画の中にたくさんのスペースと言いますか余裕を持たせました。つまり私自身が埋めることができない部分を彼女に埋めてもらったんです。
ゴンサレスさん: 確かに全て女性が主人公の物語でした。やはり女性の方が感情的な生き方をしていて、男性では伝えきれないことも女性だから伝えられる、自分を取り巻く世界を感情として表現することができるのだと思います。

質問: 監督が脚本も担当しているということの、メリットとディメリットについて教えてください。
監督: 映画制作をする上での最後の過程は、撮影と編集であると考えています。撮影中も編集中も映画を書いています。年を重ねて行くと脚本家は、脚本に対して寛容になれます。撮影が始まると、監督や役者、日々起こる様々なことによって、脚本が変わっていきます。つまりストーリーを作って行く過程は、撮影と編集が終わるまで続くわけです。

質問: とてもスタイリッシュな短編だったと思いますが、ひとつひとつの短編についても基本的に脚本があったのか、それともある程度あるエッセンスのストーリーがあって編集だけで作った部分が多いのでしょうか?
監督: 通常は、脚本を準備します。ただ今回に限っては、二つの物語については論点だけがあって、それを発展させて行きました。最初の彼女の部分と戦争の場面です。脚本は書かれていた方が良いと思います。でも場合によっては、材料だけが用意されていて、その場の状況や俳優がそれを膨らませて行くといったこともします。

質問: 俳優が脚本を膨らませて行くということですが、ゴンサレスさんはご本業が心理療法士もなさっているとのことですが、映画を見れば映画がその成果が生かされていると納得しました。ストーリーや構成について専門知識を生かして監督にご提案などされましたか?
ゴンサレスさん: はい、ずいぶん話し合いをして、心理療法士の視点から「ここはこうしたら?」といった提案もさせていただきました。ですから私の職業が映画に反映されていると思います。
監督: 企画段階から、コンセプシオンを初めとする心理療法士のチームにアドバイスをいただきました。私たちは、ストーリーの主要な部分を第一部と、そして短編の部分を第二部としています。例えば「壁の穴」の部分ですが、あの中で何を発見することになるのかは決めていませんでしたが、彼女が見たのは「赤ん坊の死」でした。それを前提に話が展開しました。

質問: 演技について監督から無茶な要求はありましたか?
ゴンサレスさん: (監督をちらっと見て)そんなことはなかったわよね?あの役どころは、監督自身が私を想定していたわけですから、全体においては私が受け入れられないような要求はありませんでしたよ!