第33回モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞した作品『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』。生誕100年の太宰治が描いた、ある夫婦をめぐる「愛」の物語だ。男の弱さを理解し、そのすべてを包み込む妻。その清々しく逞しい生き方が静かに心を打つ傑作が10月10日に公開する。公開に先立ち、松たか子さん、浅野忠信さん、根岸吉太郎監督を迎えて、完成披露舞台挨拶が朝日ホールにて行われた。
根岸監督は「太宰の変わりに判断して頂きたい。これは、小説でなく映画です。どうぞ楽しんでいってください」と挨拶し、モントリオールの反響については「撮影スタッフへの称賛がありました。また観客からは、(松さん演じる)佐知への共感を抱いたという女性から駆け寄られました。」と話した。
同作で描かれた夫婦像について浅野さんは、「二人は激しい関係ではあるが、太宰本人だと思い演じました。生きていくヒントになりました。」と語り、根岸監督は「丸っきり正反対な性格に見える夫婦ですが、ごく深いところには真の2人の近い部分があると思います。その部分を見て頂きたいです。」と映画の見どころを語った。
 
舞台挨拶の途中、太宰の出身地青森県にちなんで作られた太宰ねぶたが登場し、それを見た登壇者達は驚いた様子。根岸監督はリーゼント頭の太宰を見て、「なんかヤンキーっぽいですね。」とボソッと一言もらし、観客の笑いを誘った。

(Report:竹尾有美子)