9月19日(土)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショーとなりますハリソン・フォード主演最新作『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』につきまして、
9月4日(金)にトーク付試写会を行いました。

日時:9月4日(金) 20:20〜
場所:有楽町朝日ホール (千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11F) 
登壇者:ピーター・バラカン(ブロードキャスター)、クリス・バージェス(津田塾大学・准教授)、沢村亙(朝日新聞)
MC:松下由美

MC:この映画はアメリカのことを描いていながら、日本にとっても身近な問題を描いています。まず永住権を持っていて在日歴35年のバラカンさん、在日歴13年のバージェスさん、お二人には永住権を取得するまでの経緯など、伺えますでしょうか?沢村さんには海外特派員として、海外に長くいらした経験を絡めまして、皆様少し自己紹介をお願いします。

バラカン:僕はこの映画をみて、他人事とは思えないですね。外国で生活する人間はまずビザが必要で、期限がある。僕は最初は、半年のビザしか取れなかった。
勤め先は1年ごとの契約だったけど、入国管理局は180日間しか延長してくれないのがずっと続いたんです。1年以上の在留資格を取ったときから5年経ってはじめて永住権の申請ができるので、結婚してからやっと1年のビザが得られるようになって。まずそこまでで8年かかりました。そこからまた5年、来日して13年経ったころやっと永住権が取れました。
今は3年に一度、日本の再入国許可を取らないと、外国出たときに再入国できなくなっちゃう、また観光ビザからやり直しなんです。厳しいですよ、この国。
入国管理官は最近は態度が良くなったけど、当時は酷かったですよ。よくビザの切り替えのときにならんでいると、特に東南アジアの人たちへの態度が悪すぎて、一発パンチをしたくなるなんてしばしばありました。

バージェス:私は92年に日本へ来ました。なんで日本にきたのかよく聞かれますが、大学卒業して日本人の留学生がいて少し興味もって、偶然に青森で英会話講師の求人があるのをイギリスで見つけた。不思議ですね。それで日本に来て1年間、日本を好きになって。日本はチョコレートみたい、とよく言いますね。1回味わったらやめられない。それから修士課程・博士課程、いろいろ日本のことも勉強しました。酒田に小さな入国管理局があって、本当に2、3人しかいないようなところで、みんなすごく温かく受け入れてくれて、すぐ永住権は手に入った。
やっぱりそういう小さいところは人間性が多い、人情があるんでしょうね。大きいところいくと逆、人情は消える。不思議ですね。

バラカン:おそらく東京の入管がどこにあるかご存知ない方が多いのではないかと思うんですけど、品川埠頭にあるんです。品川駅からバスに延々乗って地の果てまで行くんですね。周りは倉庫しかない。どうしてこんなに不便なところにあるのか…8時半に建物が開くんですが、すごい人が入っていって、まるで難民キャンプみたいですね。働いている人は本当に手際よくやってくれてるんですが、それでもならぶ時間は結構長いです。

沢村:私は特派員としてNY、ロンドン、パリにおりまして、住んでみると、共通するのは回りがいろんな肌いろんな言葉、多様な人種ですね。自分がマイノリティだということもすごく意識して、よく空港では荷物チェックもされますし、ひょっとすると自分が警戒されているんではないかという感じで、モヤモヤするんですね。
アメリカに住んでいるアフリカ系の人なんかはタクシーがなかなか止められないこともあるみたいで、偶然かも知れないけどモヤモヤ感が募っているんだろうなぁと。
でもやっぱり身近に多様な民族・宗教の人がいるのは面白くて、違うことが当たり前なんだなと思います。

MC:映画をご覧になられていかがでしたか?

バージェス:ぱっとみるとこの映画は自分とあまり関係ないと思ってるか方も多いかも知れないけど、心と心の触れあいというか、ヒューマンドラマですよね。
これを考えると、パンフレットにも「捜査官にも人情がある」という言葉がありますが、人情という言葉はピッタリのキーワードですね。
逆に言うと人情がある捜査官が少ない、という意味もあるのではないか。
日本人にとってもメッセージがあるし、アメリカでも日本でも悲劇はありうる、善良な市民でも。私みたいな移住者でも、日本に帰ってくるときに家族と分かれて写真と指紋を取らなきゃいけなくなった、2007年からです。融通が利かないところやお役所仕事なところが、もうちょっと人情があったらいいと思う。

MC:バラカンさん、35年で日本はどこが変わってどこが変わってないですか?また、バラカンさんが日本にい続ける理由はなんですか?

バラカン:35年でいろいろ変わりましたが、根本は変わらない気がします。例えば外人という言葉をみんな使います。使ってもいいんだけど、使わなくてもいいシーンがたくさんある。日本人以外の人たちを十把一からげにしてしまう、無意識のうちにそうしてしまう。自分が外国に行ったときに外人といわれたらどう思うか、少し考えてみてもらえればいいと思う。僕は差別を受けたことがないですが…。
なぜ日本にいるかについては、僕は日本と波長が合うと思うんですね。古い、日本の美意識とか、わびさびとか、知識はそんなにないんですけど、感覚的なところがあってる。だから田舎なんか行くと落ち着きます。あとは、放送に関わりたかったから、今は日本でラジオ番組とか自分のやりたいようなものが出来るようになって、これは他の場所では出来ないですね。

MC:経済的な理由もあれば、迫害を逃れる方もあれば、チャンスを求める方も、いろいろな理由があるんですね。沢村さん、日本のこれからを海外にいると特に強く感じると思いますが、日本のこれからはどう考えていらっしゃいますか?

沢村:まず、グローバル化してますから、人はこれからも動くんですよね。より豊かな生活とか、自由とか、束縛されない暮らしのために。ヨーロッパではGPS機能つきの船で不法入国させていて、彼らはかつてのボートピープルではないんですね。
常に衛星テレビや携帯電話で先進国のことを知っているんですね。食い止めることはできないし、日本では定住外国人と呼びますが、移民と呼べばいいと思いますし、アジアも少子化が進んでいますし、受け入れるべきだと思いますよ。

MC:バージェスさん、日本の今後について、ご自身の研究も含め、ご意見お聞かせください。

バージェス:高齢化だから移民を入れなくてはという意見もあるが、テロ対策とかで厳しくなっている部分もある。7月に移民対策が改正されていますが、新聞には出ているが日本では話題にならない。これがアメリカだったらすぐに話題になります。
日本は今、二重国籍が許されていませんが、これが認められたら僕は日本人になりたいです。僕が帰化したらみなさん、日本人と認めてくれますか?

MC:そろそろお時間ですがバラカンさん、映画のことも含めて最後に一言いただけますか?

バラカン:バングラデシュの女の子が非常に印象的でしたね。アメリカは憲法で言論の自由が保証されているはずなのに、9.11の後のことをやや辛辣ですけどまさに言えてることを言ったあの子が、強制送還という仕打ちをされてしまうなんて皮肉な話と言うか。非常に印象に残っています。

MC:あのシーンがあることで、ディスカッションが広がっていくのではないでしょうか。みなさんもぜひ今日の課題について、ちょっと考えて、話して頂きたいですね。