スイス・ロカルノにて開催中の第62回ロカルノ国際映画祭にて、本日ワールドプレミアとなる『レッドライン』の公式記者会見が現地時間8/14(金)午後12時にメイン会場ピアッツァ・グランデ近くの記者会見場で行われ、監督の小池健、脚本、原作の石井克人が海外プレスに作品をお披露目いたしました。

Q;『レッドライン』の発想はどこから?

石井克人:発想は、まずここにいる小池さん。この人天才なんですけど、僕は『キルビル』をやってそのあとにこの作品の制作に入ったんです。あのアニメはいまの日本のトレンドではないアニメなんですが、あの作品の仕上がりに感動して、これなら小池さんの映画を作った方が全然いいんじゃないかと。天才ですから、小池さんは。小池さんがやるならポップな映画で、ユニークなキャラクターが出てきて、普通じゃない映画が作れると思ったので、最初から小池さんありきのストーリーを考えました。

みなさん今回はマンガインパクトで日本のアニメをみてると思うんですが、比較的みんな似てると思うんですよね。でも、この作品は他の作品と全然違うな、と気づいてもらえるとおもいます。

Q:監督へ。ストーリーについて教えてください。どこか西洋に出発点があるのではないかと感じるのですが・・・。

小池健監督:設定自体がすごい未来の話なので、人種や多種多様ないろんな星の人が共存するような、地球と似てるけどちょっと違う場所が舞台です。現代の地球のどこか、という設定で始まったわけではないんですよね。

Q:レッドラインレースには様々なキャラクターが出てきますが、発想の発端はレースですか?それともキャラクターが先行していたのでしょうか?

小池監督:最初にキャラクターです。僕は個性があるキャラクターが好きなので、レース自体にダークヒーローやダーティ・ポリスマンなんかを登場させています。『バットマン』も好きなので、ダークヒーローは欠かせません。「ダーティ・ハリー」なんかが好きなので、ポリスマンが出てくるなら、ブラックな警官に限る。ブラックなキャラクターをミックスさせた世界観の映画を作りたかったんです。

Q:日本のアニメの中では珍しい題材だと思うのですが、レースをベースにしてアニメを作ることに関して、日本国内ではどういう風に受け止められたでしょうか?

丸山プロデューサー(マッドハウス):レースのアニメは多くありますが、アニメの表現としては難しいものです。今回は石井・小池組にかかれば、大変だけれど面白いものになる自信と確信がありました。

Q:この映画の製作は最初から出来上がるまですごく時間がかかっていると思います。制作過程でいろいろな問題が出てきたと思うのですが、なにか特別な苦労はあったのでしょうか?

二宮プロデューサー:この企画は、6年前に丸山さんとお昼御飯を食べていたときから始まっています。丸山さんの鞄の中から突然3つ企画がでてきました。拝見したところ、キャラクターだけで面白かったので、その場でやると決めました。3年くらいで仕上がるつもりでしたが、結局6年かかりました。おそらくですが、こんなに時間がかかった理由は、小池監督のアニメーションに対するこだわりだと思います。そのおかげで、究極の2Dのアニメに仕上がりました。いわゆる海外の方が言うジャパニメーションの中で、いちばんカッコイイ作品になっていると思います。間違いなく究極のジャパニメーションです。そのために時間がかかったと思います。

プレスからの質問

Q『レッドライン』をみてものすごい感動しました。私はアニメの専門ですが、本当に見たことないアニメーションだったと思います。ワールド・プレミアおめでとうございます。このアニメはすべて手書きでしょうか?それともCG作業が入っていますか?

小池監督:100%ではありませんが、主要なポイントな映像は、すべて手書きで書いています。たとえば、モニター画面のグラフィックなところはCGを合成していますが、基本的にはバックグラウンドも含めて、キャラクターの動き、メカの動き、すべて手書きで書いています。

丸山:この作品がほかの作品と違うのは、背景も全部小池さんの手書きなんです。

Q:この映画はとてもダイナミックですが、監督はスピード感に関して、なにか特別な思い入れがあるのでしょうか?

小池監督:2Dのいいところは自分できもちいい部分の躍動感を自分でコントロールして作っていけるところです。実際の車が100キロで走っていても、アニメのコントロールでスピード感はいくらでも変えられます。自分が気持いいと思える映像を構成して、客観的にどう見えるか?を創造しながら描くのが楽しいので、そういう部分を見て楽しんでもらえればいいなと思います。

Q:主人公JPのイメージが最初アダルトで、プレイボーイな感じがしていたのに、徐々に恋にウブなところが目立ってきました。それはどうしてでしょうか?

石井:JPのキャラクター設定は、二転三転したんです。最初はいわゆる、種馬レーサーだったんですよ。いろんな星に子供がいるような…。ただ、僕自身、それだと物語の展開がイメージしづらかったんです。僕自身を考えると純情な方が面白いと思った。それで全く逆のキャラクターにしました。英語字幕では「SWEET JP」(優しいJP)としか訳されてませんが、真意は、「おバカですごぉく優しいJP」なんです。最初っから優しい主人公って普通はあまりいないですよね。そういうキャラクターが宇宙で一番難しいレースに挑戦する姿が面白いと思って設定しました。そこからどんどん純情になっていったんです。

Q:JPとソノシーのカップルは、作画のダイナミックさとは違って、とてもロマンチックに描かれていましたね?

石井:そんな深い意味はないんですが、、、この作品を作る前に古いアメリカ映画をいろいろ参考にしていたんですけど、ハリウッドの映画って、最後はキスシーンでなんとなくハッピーエンドの方がいい映画が多い印象がありました。『レッドライン』も、あぁ、なんだか懐かしい映画をみたなという感じにしたかったです。

Q:ところで監督は、おとといスイスで結婚されたそうですね?おめでとうございます。結婚が作品に与えた影響はありますか?

小池:もしこの映画を見た人が幸せな気分になってもらえたんであれば、僕が制作する過程で、感じていたハッピーな気分が作品に注入されたってことなんですかね?

丸山:わかりやすく、もう一度解説します。この作品を作っている監督とこの作品の女性プロデューサーが、実はこの作品をつっている最中に結婚しました。そのハッピーな気分が作品に表れているのだ、と思います。ふたりは、赤い糸で赤いラインで結ばれたのだということです。

石井:しかもここに入る二日前にスイスで結婚式をあげたんですよ。

司会:それではみなさん、新郎新婦のお写真をどうぞ(場内笑)