長編コンペティション部門国内ノミネート3作品中の一作品『求愛』は、女の愛への不信と愛への希求をつづり、女性の心情の機微を丁寧に描いたドラマ。
18日、ほぼ満席の中2回目の上映及びQ&Aを行った。
1回目と同様に、金井純一監督が登壇し、「あんまり僕がしゃべると映画の余韻が消えてしまうので(笑)」と場内の笑いを誘った。

本作のストーリーは、田舎で二人暮らしの母・敬子と娘・早苗の元に息子の真司が結婚の報告のため新妻・美咲を連れて東京から帰ってくるところから始まる。久しぶりの息子の帰省と結婚に喜ぶ母親と共に兄を温かく迎えながらも、早苗はある悩みを抱えていた。

【以下Q&A】

Q:大学よりドキュメンタリー等を製作されていて、そこからENBUゼミナールにて学ばれたということですが本作製作に至る経緯を教えて下さい。

「ドキュメンタリーはノンフィクションなので、フィクションを作りたいと思いました。シナリオのみのコンクールである伊参スタジオ映画祭にてシナリオ大賞に選んで頂いたのですが、翌年映画化しなければならないというのが条件で…。選んで欲しいけど、選ばれたらやばいという状況でしたね(笑)
審査員の皆さんは作品を選定するときに、映像化できるかどうかを見るのですが、初稿に関してはもうボロボロで。選ばれたのに誰からも褒めてもらえなかったんです(笑)。
実際撮影に入ってからは、ENBUの同期や審査員の方々のお力を借りることが多かったです。1年の制作期間中、大変出会いも多く感謝しています」

Q:女性の心情がよく描かれていて、最初女性が脚本を書かれたのかと思いました。脚本を書かれる際、女性の気持ちは想像で書かれたのですか?それとも女性に意見を聞かれたのか、またはご自身の経験からでしょうか?

「日本の監督で、女性を描いたら上手い!といわれる方ってあまりいらっしゃらないというのもあって、ずっと女性についての脚本を書けたらいいなと思っていました。女性は感情の振れ幅が広くて、とても面白いと思います。リサーチする際、実際女性の方にも色々お話を伺ったのですが、真面目に聞くと真剣に返してくれました。あとは自分の経験も色々と…(笑)」

Q:その“色々”を聞きたいのですが…

「いやぁ、プライベートは全く生かせないですね(笑)でも特に役者さん達が本当に頑張ってくれて。脚本では表現が難しいところを、役者さん自身で肉付けをしていただいたりと、たくさん助けていただきました」

Q:伊参スタジオ映画祭で本作のシナリオを購入して、今回事前に読んで映画を観ました。
河原に行ったシーンで、「どっちが好き?」と美咲が聞くシーンは、“私と妹とどっちが好き?”と書かれていたのが、「田舎と都会どっちが好き?」に映画では変わっていたり、尿瓶のシーンでは口元でそれを覆うように見せる撮り方など、細かいところで随所にハッと思わせるポイントがあり、非常に楽しめました。それらはかなり考えて撮影されたのですか。それとも思いつきですか?

「初稿がボロボロだったので、かなり大部分を書き直しました。脚本は言葉、映画はしぐさに尽きるところがあるので、役者さん達が素晴らしかったので、演技に関しては細かく指導するわけではなく、ほとんど役者さん達に任せてしていただきました」

Q:挿入歌がとても良かったのですが、選曲はどのようにされたのですか。

「本作の撮影の前の現場がかなりキツくてボロボロになっていたときに、車の中でたまたまラジオで聞いて、これだ!と思って。直接ラジオ局に連絡をして、OKを頂きました(笑)」

Q:セリフはどのように収録されたのですか。全編を通して低音が少し目立っていたように思えたのですが、MAさんがちゃんとスタジオでダビングをされたのでしょうか?

「収録は竿にマイクをつけてやりました。河原のシーンはそのまま持って川に入って採ったので大変でした。製作費の関係であまりちゃんとは出来なかったので、ダビングは6畳間の部屋で行いMAさんがパソコンで編集しました。」

Q:早苗役の女優さんのキャスティング、また今後についてお聞かせください。

「脚本では、もっとはきはきして明るい子を想像していたのですが、偶然ENBUの先輩が早苗役の深澤しほさんのDVDを見せてくれて、イメージとは違ったのですが、映像をみてすごく力強かったので、彼女を起用すると作品の幅が広がると思いました。ある意味賭けなところもありましたね。
今後はMAがちゃんとできるような環境で映画作りをしたいです(笑)
基本的には人間を描きたいのですが、男性を描くときはもっと自分自身年齢を重ねてからにしたいですね。
この映画のようにプロットの説明が出来ない、ストーリーを超えて誰かの胸に伝わるような映画を作っていきたいと思います」

(Report: Inoue Midori)