ドキュメンタリー映画『沈黙を破る』の初日舞台挨拶が、5月2日、東京のポレポレ東中野で行われ、監督を務めたフリー・ジャーナリスト、土井敏邦が登壇した。

イスラエル・パレスチナ問題を描く映画は数多いが、本作は、初めてイスラエル軍による“内部告発”を真っ向から取り上げたことで、公開前から注目を浴びていた問題作。
初日、満場になった客席を前に感慨深げな土井監督は、心がけたこととして「イスラエル・パレスチナ問題という現象を描くのではなく、その“構造”、“人間”をきちんと描こうと努めた。彼らにどこまで自分が接近できるかが勝負だった」と語った。
「ガザに関する報道では、“空爆”“破壊”“殺戮”といったものにはメディアはすぐに飛びつくがが、それが落ち着くと“平和になった”かのように、すぐに報道しなくなる。だが、一番怖いのは、じわじわと人間の尊厳が奪われていく“封鎖”という現状」と、マスコミの報道のあり方についても自身の見解を述べた。

17年以上にわたり現地で取材を続けてきた監督だが、「本作のテーマはイスラエル・パレスチナ問題ではない」とあえて断言する。「この問題を通し、人間の持っている“普遍的テーマ”を感じてもらいたい。映画は“鏡”のようなもの。自分の心の中を見つめるきっかけとなる作品になっていれば」と呼びかけた。監督はこの日、全上映回に登壇し挨拶を行った。

『沈黙を破る』は、東京・ポレポレ東中野にてロードショー中。5月9日(土)より大阪・第七藝術劇場にて、5月23日(土)より京都・京都シネマにて、 ほか、名古屋・沖縄・岡山・兵庫での上映が決まっている。

『沈黙を破る』イベントスケジュール
5月10日(日)15:30の回上映終了後 ゲスト:柳澤秀夫(NHK解説委員)
5月16日(土)15:30の回上映終了後 ゲスト:岡崎美佳(音楽パフォーマンス)
5月17日(日)15:30の回上映終了後 ゲスト:綿井健陽(ビデオジャーナリスト)
5月23日(土)からはパレスチナ記録映像シリーズ
『届かぬ声−パレスチナ・占領と生きる人びと』も上映。