1929年、小林多喜二が発表した小説「蟹工船」。

荒んだ労働条件のもと、自己の人生において希望を見出せずもがいている労働者たちを描いたこの作品は、プロレタリア文学の最高峰と称賛され、歴史に名を刻んだ…

2009年、各国の映画祭にて注目を集めている鬼才・SABU監督によって再び『蟹工船』は蘇った。昨年12月よりクランクイン、その話題からあらゆるメディアに取り上げられ、『蟹工船』は昨年流行語大賞TOP10入りも果たした。そして今月10日都内にて待望の完成披露記者会見が行われた。

登壇したのは、監督・脚本のSABU、松田龍平、西島秀俊、新井浩文、柄本時生、木下隆行(TKO)、木本武宏(TKO)と檀上はズラリと今が旬の男前揃い。

SABU監督は「名作に仕上がりました。」と開口一番自信満々に報告。

本作の企画のポイントを質問されると「原作には登場人物の名前がなかったので、映画も初め名前なしで脚本を書いていました、しかし結局は誰が誰だか分からなくなってしまったので、まず主人公を一人立てて、順番に脚本を動かして行く事に変えました。“集団で立ち上がる”という流れを見せるため、全員にスポットライトが当たるようにしました。笑えて泣けて、“燃える”映画です。」と作品をPR。

SABU監督によって息を吹き込まれた主人公・新庄を演じた松田も「原作は特に気にしていませんでした。全体的にどうするかはSABU監督にすべてお任せしていました。SABU監督の面白い世界観が辛い世界を描いた内容に光を入れてくれたと思います。役を通じて僕自身もパワーが貰えました」と絶賛。

また撮影で使用したセットの奇抜さには驚いたとの事。是非映画を観る際には注目して欲しい。SABU監督の演出らしい“走る”姿も必見である。

本作で労働者を甚振る監督役・浅川をどくどくしく熱演した西島は「暴力的な雰囲気立てでなく素晴らしい悪役になれたと思います。今後こういった仕事のオファーが増えると良いですね(笑)」と自身も笑いながら自らの演技を賞賛。SABU監督も西島の悪ぶりには惚れ込んだと語っていた。
作品に対しては「前向きな力を与えてくれる。劇中で叫ばれる“考えろ”という言葉、辛くても考え続ければイメージが出来、現実に繋がるしその思いは必ず伝わるというニュアンスのセリフが好きですね。」と語った。
また、松田も「やれないことはない、立ち向かう力をこの作品から発信している」と述べた。

俳優デビュー作『青い春』以来松田とは親交があるという新井。
お互いの成長ぶりについて聞かれると新井は「龍平はやっぱりかっこ良かった。でもウチも負けずに見せられたと思います。ね?」と横の松田に語りかけた。一方で松田は「この質問に関してはなにもありません。」と冷たく返しつつも「じゃあ後でメールして」と新井が笑いながら返すなどしていた。

本作品においてこの二人の交友関係を知った上で見るとかなり入り込めるかも。また会見では普段あまり表情が緩むことのない松田だが今回は新井がいたとあってか会見中終始二人で談笑している姿が見られた。

また本作でスクリーンデビューを飾ったお笑いコンビTKOの二人は近年の芸人監督ブームにのっかり「監督もしてみたい。」と熱烈アピール。

かなり熱い作品に仕上がった様子の本作、群集映画ということもあり現場は和気藹々、みんなオセロに夢中だったという報告もあった。

SABU監督独特のユーモラスな世界観で大胆かつ現代的なアレンジに仕上がった映画『蟹工船』。公開はこの夏。

(Report:大野恵理)