先日発表されたゴールデン・グローブ賞で、最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、作曲賞の最多4部門を見事受賞し、本年度アカデミー賞最有力の呼び声の高い、ダニー・ボイル監督最新作『スラムドッグ$ミリオネア』(イギリス映画)。

本作は、世界最大のクイズショーで、残り一門までたどり着いたスラムの少年の<望まなくても答えを知ることになる>少年の過酷な人生と運命を、貧困と富が混在するインド・ムンバイを舞台に描いた作品だ。

『ザ・ビーチ』(99)、『サンシャイン2057』(07)に次いで3度目の来日を果たしたダニー・ボイル監督が、18日(水)に記者会見を行った。

久々に日本を訪れた監督は、「本作はインド・ムンバイという偉大な街を舞台に映画を撮ったが、今回東京という偉大な街に再び来られてうれしい」と笑顔であいさつ。そして、本作にも幾度となく登場する“運命”という言葉。主人公の少年は運ではなく、運命によってクイズショーを勝ち進めていくのだが、監督はこのことについて「実は“運命”なんてインドに行くまでは信じていなかった。でもインドに行ったら、“運命”は深遠で複雑なものだと感じたんだ」とこコメント。

これはハリウッド映画でも、有名なスターが出演しているわけではない。主人公ジャマール・マリク役を演じたのは、本作が映画デビュー作となったデーヴ・パテル。実は、キャスティング時に彼を推薦したのは、彼が出演していた英チャンネル4のヒットTVシリーズ「Skins」(07〜08)の大ファンだった、監督の17歳の娘さんだったそうで、
「主人公ジャマールのキャスティングはとても困難な作業だった。インドの若手俳優ってみんな筋肉がすごく発達しているんだ。でもこの映画にはそんなルックスは求めていなかった。なぜなら僕は<スラムの負け犬>のような風貌の役者を探していたからね。そんな時に娘が教えてくれたのがデーヴ・パテルさ。彼はロンドン在中の役者なんだが、インド中を探しまわったのにこんなにも近くにいたのかって思ったよ。これも運命だね」とほほ笑んだ。

そして脚本、舞台となったインド・ムンバイについては「脚本は読み始めたら釘付けになったよ。貧困の中から一人の少年がクイズショーを通して勝ちあがっていく、というストーリーがおもしろいと思った。ムンバイは題材に不足はないくらい最高の街だったよ」と語った。

また、当日は、日本で「ミリオネア」と言えばこの人。スペシャルゲストとして、みのもんたが登場し、「世界一」注目されている監督と、「世界一」忙しい司会者の、夢の2ショットが実現。
みのは「本作の司会者は悪い人なんだけど、日本の司会者はいい人だよと言いに来ました。ミリオネアの司会者としてとても興味津々で映画観させてもらいましたよ」と笑みを漏らした。
そして2月23日(日本時間)に発表されるアカデミー賞直前となった今回の緊急来日から、直接LAアカデミー賞へと渡米する監督を、縁起をかついで日本式の必勝祈願<カツ(勝つ)カレー>をプレゼントをし、エールを贈った。

もし本作が作品賞を受賞すれば、『ラストエンペラー』以来実に21年ぶりにアメリカ製作ではない作品が受賞するということになる。果たしてその結果とは──!?

(Report:Naomi Kanno)