第21回東京国際映画祭 コンペティション部門『ダルフールのために歌え』は、「ダルフールで起きていることに無関心だったことにフラストレーションを感じ、本作品に臨んだ」というヨハン・クレイマー監督の初長編作品。そのヨハン・クレイマーさん並びに制作関係者の皆様をお迎えして、記者会見が行われました。

■ 記者会見 10月24日(金)15:30〜 (ムービーカフェ)
■ ティーチイン 10月24日(金)19:22〜 (TOHOシネマズ六本木ヒルズScreen 6)
■ 登壇者 ヨハン・クレイマー(監督)、エスター・ウダエタ(プロデューサー)、ワウター・ウエステルンドープ(撮影監督)、リッケ・ジェリア(美術)、エルネスト・グワル・ソレ(プロダクション・マネージャー)

ヨハン・クレイマー監督: 初めてのオランダ国外での上映でしたので、少々緊張しています。皆さんの満足そうな表情を見て安心しました。

エスター・ウダエタさん: 私たちにとって、これは単なる作品というより、ひとつのプロジェクトです。現在ダルフールで起きていることの犠牲者を援助するために資金を集めるための非営利プロジェクトです。できるだけ多くの国で上映していただくことで、ダルフールの人々を支援したいと思っています。

質問: 制作予算はどれくらいだったのですか?
監督: 具体的な数字を出すのは難しいのですが、5万ユーロ程だったと思います。この金額は、旅費や食費などの必要経費です。できる限り、ボランティアをしてもらったり、食事を無料提供してもらったりと、経費削減に努めました。クレジットに出てくる長いリストは、このプロジェクトを支援してくださった大勢の方の名前です。エンドロールの最後に「YOU(あなた)」とありますが、これはこの映画をご覧いただいた皆さんのことです。この映画を観ていただくことで、ダルフールの現状に対する認識を広めて、このプロジェクトに参加していただきたいというのがその趣旨です。

質問: エンディングにポルトガル語の歌を採用した理由は?
監督: 希望を持てるかたちで映画を終わりにすることが大切であると考えました。映画の大体の部分は、我々が生きる社会のそのまま写しだしています。効率性を重視し、何でも速く済ませようとし、また、他のことに関心を持たないという現実です。映画は終わりに近づくにつれてテンポが落ちています。コンサートが開催されている様子を映し出すことで、ちょっとした驚きを演出できると考えました。問題に対して関心を持っている人たちによるコンサートです。関心を持って、問題について考える時間を持つ余裕を持てることは、美しいことであり、また、この映画のメッセージでもあります。また、ロケ地として撮りたいストリートを見つけましたので、
どうにかダルフールと関係づけることができる戦争に関する歌を見つけて、そこで撮りたいと思いました。

質問: モノクロにした理由は?
監督: 40本の作品にある程度の統一感を持たせる必要がありました。その全てをカラーで撮った場合、スタイルがばらついてしまうと思いました。モノクロにすることで、この問題を解決できると考えました。リッケも同意してくれました。それから、もっと重要なのは、モノクロにすることで、ものすごく表面的な我々の今日の生き方を反映させることができます。ほんの少し人を思いやる気持ちを持てば希望がもてるということを象徴するために、映画の終わりのところをカラーにしました。
リッケ・ジェリアさん: 最初は、カラーで考えていましたので少々違和感がありましたが、モノクロの方がニュアンスをつけることができることに気が付きました。都会の人通りの多い場所で撮影し、常に動きのある映像を撮るように心掛けました。このことは、モノクロの場合、さらに重要でした。

質問: 大虐待のシーンなどがあるために、国によっては上映禁止になるのでは?
監督: この映画には、グローバルメッセージが込められているので、できるだけ多くの国で上映してもらえることを望んでいます。人間は、誰でも同じように、感情というものを持っています。ですからこの映画は、ある一定の国の人たちに対してではなく、国籍にかかわらず観ていただけるものだと思います。アフリカを題材にした映像は少なくありませんが、心を打つものは決して多くありません。
ですからのこの映画を通して、ダルフールで起きているようなことをどのように対処するべきなのか、一人一人に考えてもらえれば幸いです。