新米教師・星先生は6年2組の26人の子どもたちと一緒に卒業までの1年間、「食べる約束」で子ブタのPちゃんを飼い始める。しかし、毎日の世話の中でPちゃんへの愛情が芽生え…子どもたちと星先生は、最後にどのような「答え」を出すのか。賛否両論を呼んだ実話を題材に、教育や命について考えさせられる映画『ブタがいた教室』が完成した。本作は10月に開催される第21回東京国際映画祭のコンペティション部門への出品が決定している。そして9月4日(木)、TOKYO FMホールにて行われた完成披露試写会に監督の前田哲、星先生役の妻夫木聡、生徒役の26人の子どもたちが登壇した。
 
登場と同時に来場者の黄色い歓声を誘った妻夫木は「本日はお忙しいところありがとうございます。立ち見の方もいるみたいですね…あ、(子役の)保護者の方ですね(笑)。前田監督からお話をいただいた時にそれまで自分が持っていた教育論を覆してくれた内容だったので、二つ返事で“ぜひやらせて下さい”と言いました」と挨拶。前田監督は「本作の企画は13年くらい前にテレビでドキュメンタリーを見て“映画にしたい”と思い続け、実現することができました」と映画化へのきっかけを述べた。

二つ返事で受けたぐらい、本作が魅力的な内容だったのですね?と問われた妻夫木は「二つ返事は言いすぎましたけど(笑)。三つ半くらい…ですね。台本をいただく前に原作をいただいていたので、ワンクッション置いていましたね。教育とは目指すところがあり子どもを導くものだと思っていましたが、答えのないところから始まり答えのないところに終わるという教育について考えさせられ、これは新しい形の映画になると思いました。(役作りに関しては)今回は俳優として演技プランを立てるのではなく、一教師として子どもたちに何か残そうという思いで挑みました。教育論をまとめたりして、演技とはまた別のところから入っていきました」とのこと。

また前田監督は「子どもたち26人の誰かをピックアップするのではなく、皆それぞれが持つ個性を出していこうと考えていました。子どもたちと妻夫木君が出会った時のことは忘れていませんね。最初に皆が集まった教室に入ってきた妻夫木君は黒板に一期一会と書いて、その意味を知っているか皆に聞いたのです。それを見て、もう既に教師のようで“いけるな”と思い、最初から気持ち良く入れて苦しみも楽しめました。子役は一ヵ月半かけて1300人くらいお会いしたのですが、本作では子役をどう決めるかが勝負だと思っていたので、選ぶために結構酷なことをしましたね。皆さんには子どもたちの“言葉の力”をぜひ受け取って欲しいです。台詞にはシナリオにはない言葉も自由に発してもらっています」と語った。

前田監督が述べた通り、子役の一人も妻夫木を本当のクラスの担任だと思ったそう。妻夫木は「休み時間に鬼ごっこをして汗をかいて怒られ、役者として初歩的なミスをしてしまいました(笑)」とはにかみながら撮影中のエピソードを明かし、同時に「子どもたちに何を残していけるのか考え、命という普遍的なことを一緒に考えられた貴重な時間でした。この映画を観て、命の循環はこれだけ大事だということを考え、改めてありがたみを知って欲しい」と語り、教師として子どもたちと心をぶつけ合いながら本作が完成したことがうかがえた。

最後に、子ブタが登場!!賑やかさに興奮し暴れ出す騒ぎになるも、何とか前田監督が抱いてあやしながらフォトセッションをこなすなど、会場は終始笑いの絶えない雰囲気であった。

(Report:Masako Imai)