来年、太宰治の生誕100周年にあたる2009年に「斜陽」(1947)が映画化される。
制作にあたるのは、カエルカフェ。
都会から海沿いの田舎街へと越してきた良家の子女・かず子とその母が、ある思いもよらない運命をたどるという内容で、舞台は現代に変更される。
主演のかずこ役には、映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でヨコハマ映画祭主演女優賞を受賞するなど確かな演技力を見せ付ける佐藤江梨子。
相手役に、温水洋一、かず子の弟役に「特捜戦隊デカレンジャー」など幅広い活躍を見せる伊藤陽祐。かず子の母役に、ベテラン女優である高橋ひとみ。
脇役にも、元宝塚女優の凛花せら、真砂皓太、小倉一郎といった、豪華俳優陣が名を連ねる。
監督は、今作で『河童 kappa』、『伊藤の話』といった文豪たちの作品を映画化したブンガク映画シリーズ10作目となる秋原正俊。
そして音楽を担当するのは、日本歌曲や大正ロマンを基調とし、海外にもファンの多い“ゆか”と“さち”によるロリータ・クラシック・ユニットの黒色すみれ。

18(水)は、太宰治の生誕99年目、つまり誕生日を前日に控えた制作発表が行われた。
佐藤江梨子、高橋ひとみ、温水洋一、伊藤陽祐、凛花せら、真砂皓太、秋原正俊監督、黒色すみれ。
「時代背景を現代に変えますが、当時の雰囲気を残している場所を、岡山県岡山市、静岡県三島市など選びつつ、制作は順調。撮影自体は今年の11月からで、まだ皆さんの手元に決定稿が行っていない状態ですが、生誕1年前に発表したかったのです。」(秋原監督)、「今回、私の大好きな『斜陽』ができるという事で二つ返事で受けさせて頂きました。難しいといは思いますが精一杯頑張りたいです。」(佐藤)、「こういう世界ははじめてですが、江梨子ちゃんに負けないよう撮影までには熱意を近づけたいです。」(高橋)、「初めて今回太宰を読みました。秋原監督とは今回で3作目となり、去年の『五重塔』の撮影で、この作品の話を頂きました。『河童 kappa』では河童の役でしたが、今回はまた異なった役柄です(笑)」(小倉)、「原作は、僕が生きている時代とは全く違い、想像がつきませんが現代にアレンジしてあるので、原作をそこまで意識せずにやっていければと思います。」(伊藤)、「私は太宰治と同じ青森県出身なので、その映画化作品に出演できて嬉しいでうす。頑張って芯の強い妻役を演じたいです。」(凛華)、「緊張感と感激と嬉しさでいっぱいです。生誕100年という記念的な作品に出演する事ができ、役者として使命を果たせたような気持ちです。」(真砂)、「映画のサウンドトラックというのは初めての事で、私たちは音楽界ではアングラ・デカダンと呼ばれているので、文学界のデカダンである太宰ワールドに一花添えられればと思います。」(黒色すみれ)。

また、秋原監督の『伊藤の話』で主演をつとめた温水は「小学校の頃に「走れメロス」を、高校で「人間失格」を、大学で「斜陽」を読みました。僕にも刹那的なところがありまして、誕生日も太宰治と同じです。昔の自分を思い出しながら演じたいと思います。」とコメントし、佐藤江梨子は「全然違う!」と驚きの声をあげた。

佐藤は自他共に認める太宰フリークであり、今作に非常に強い思い入れがある模様。
「10代と20代の頃、お墓参りに行ったり、斜陽族が集まるところにも行ったり、「きりぎりす」ですとか「グッド・バイ」など他の話も読んでいました。この作品の事を先輩の俳優さんに話したところ、「饗応夫人」をすすめられたのでそれも読みました。登場人物が、後期の作品になるとどこか悩んでいたり、それを糧に生きているんですよね。そういう世界観が、涙が出るというより皮膚から血が出るというような、当たり前の事のように心から湧き出るものがあります。
太宰治とは、いい意味で自己愛があるところが似ていると思います。三島由紀夫が太宰に向かって“嫌いだ”と言っても、“好きなくせに”とかわしてしまうところが素敵だなと思ったり。でも私は浮気はしません!」
というように、気になる発言も飛び出たが、その熱意は本物のようだ。
さらに、高橋ひとみと親子役という事に関しても、「私がとらえる『斜陽』の意味は、お金持ちが沈んでいく
というだけではなくて、母親という絶対的な太陽が沈んでいくという儚く美しいふうにも捉えています。
ですから、高橋さんの演技を台本を読んだだけで想像して泣けてくるので、今日は会話をするのを避けようかと思いました(笑)」と語った。
ちなみに、現在恋愛は?との質問には「プライベートではありません。」いい人がいたら紹介して下さい。」とコメント。

映画『斜陽』は2009年5月公開予定。

(池田祐里枝)