戦争文学の名作として、発表以来40年のロングセラー・野坂昭如の直木賞受賞作「火垂るの墓」の実写版映画、完成披露試写会が16日(月)に開催された。日向寺太郎監督、主役の二人・吉武怜朗、畠山彩奈、松田聖子さんや松坂慶子さんらが登場した。

戦渦のなか、孤児となった幼い兄妹・清太と節子が精いっぱい生きたあの暑い夏の日——。6月神戸全域を襲った空襲で母を亡くし、父は連絡が途絶え、清太は妹・節子とともに親戚の未亡人の家に世話になることになった。だが、おばさんの冷たい仕打ちに耐えられず、その家を出て防空壕の中で二人だけの生活を始める。日に日に悪化する戦況とともに、やせ細っていく節子。清太は妹を励まし、懸命に生きていこうとするが・・・アニメでも知られるこの名作をオーディションで選ばれた清太役・吉武怜朗、節子役・畠山彩菜の胸に迫る演技と、松坂慶子、松田聖子ら、実写映画ならではの豪華キャストにより、不朽の名作がスクリーンによみがえった。

主演の吉武怜朗は、若いながらも出演を通して戦争に対して様々なことを考えたそうだ。「平和の大切さを僕らの世代にも語り継ぎたい」と力強く語り、使命感に溢れ、輝く瞳が印象的だった。

監督から「是非、松坂さんにこの役を演って欲しい」とお話があったものの、意地悪な未亡人役だった、と笑いながら話した松坂慶子は、空襲の体験者から話を聞き、撮影に挑んだという。「戦争中は、自分と家族のことでいっぱいになり、演じた未亡人のような人間になってしまうんだと聞かされて、平和のありがたさを考えました」と語った。

松田聖子は実に7年ぶりの日本映画出演となる、この作品の魅力について語った。松田聖子は「脚本を読んで、この作品の一部になれたらどんなに幸せだろうかと思った」と、出演の決め手について語った。自らが歌う予告編テーマソング「星空の下の君へ」については、‘大切な人を僕の手で守っていきたい’という思いを込めたという。松田聖子は、今日初めて予告篇を見たそうで、鳥肌が立ちそうなほど感動する、と笑顔だった。

最後フォトセッションでは、清太役・吉武怜朗は、節子役・畠山彩奈を背負う恰好で
行われ、まるで実の兄弟のような仲のよさを見せ、側に寄り添う2人の女優の笑顔が母性に満ち溢れていた。