全映画ファンが待ち望んだ95歳日本最高齢の映画監督・新藤兼人による『石内尋常高等小学校 花は散れども』がいよいよ完成、21日(水)に舞台挨拶付き完成披露試写会が行われた。70年の作家活動を続けてきた新藤の自伝ともいえる本作では、故郷・広島での少年時代から新進気鋭のシナリオライターとして自立するまでを描いている。

小学校時代の恩師をユーモアたっぷりに演じた柄本は、「日本映画史を代表する新藤監督の47本目の作品に出演でき、感激です。ひとつよろしく!」と語り、若き日の新藤を演じ、本作が新藤兼人組初参戦となった豊川悦司は「新藤組に呼んでもらえて光栄です。他の共演者の方々もよく知っている先輩俳優たちだったので、広島ロケは気持ちよい緊張感で楽しめました。でも、新藤監督が歩んできた人生を僕が演じていいのかな?と思いましたし、いまだに僕を呼んでいただいた理由がわからないんですよ」と謙虚にコメント。
すると、六平直政が「豊川さんは“なぜ自分が選ばれたのかわからない”と言っていましたが、新藤監督が“自分の役を演じる人は、背が高くてカッコよくなくてはいけない!”ということで豊川さんになったんですよ(笑)。私は、新藤作品は4本目なんですが、新藤監督は会う度に若返っている気がします」と笑い、イスに腰掛けていた新藤監督も照れながら少し口元を緩ませた。また、「普段は人見知りの豊川さんですが、“今までの作品の中で1番楽しい”と言っていましたよね」と六平が茶化すと、豊川は頭を掻きながらほほ笑み、「そんなこと言ったら今までのはどうなっちゃうのよ!」と大竹しのぶから突っ込まれていた。

そんな大竹はこの日、常に新藤監督を気遣い、撮影中のエピソードに関してもこのようなコメントを残した。
「撮影中は、監督が撮りやすい状況を作り出そうと皆ががんばっていました。映画を作るってこういうことなんだなと思ったと同時に、そこにある“愛”を感じましたね」
川上麻衣子は「初めて新藤監督と一緒にお仕事したのは、私がまだ10代の頃。あれから30年ちかく経って、またこうしてご一緒できてうれしかったです。毎日が本当に貴重な時間でした」と語った。

それまで黙って皆の言葉に耳を傾けていた新藤監督だったが、マイクを大竹に持ってもらいながら、「僕はもう老人でマイクが重くて持てないので、大竹さんに持ってもらいながら話したいと思います。去年、広島で65日間ほどかけて撮影を行いました。足腰が弱いので、現場では車イスに乗りながら撮影していたんですが、カメラの横に立つとたちまち力が戻ってきて、スタッフ・キャストにも助けられながら隅々まで撮ることができました。これが最後の作品だと思って、力を振り絞りながらやっていた気がします。終わってしまうとまた何か撮りたくなってしまうんですが……(笑)」と発言し、会場を沸かせた。

実際、新藤監督はすでに何本か脚本を用意しているようで、次回作への意欲は満々!
そんな監督を優しく、そして尊敬の目で見つめていたキャストたちも、監督のタフさにはびっくりしていたようだった。また、柄本明、豊川悦司、大竹しのぶらによる校歌斉唱も行われ、皆が小学生のような気分で元気よく校歌を歌い、会場を盛り上げた。

(Report:Naomi Kanno)