60年前にイスラエルが誕生し、パレスチナ難民が発生した。
この事件をオパレスチナ人は、NAKUBA(大惨事)と呼ぶ。
1948年に何が起こったのか。世界のほとんどが、何も知らない。

本作『パレスチナ1948・NAKUBA(ナクバ)』は、40年間パレスチナを追い続けてきた戦場カメラマンであり、現在は報道写真月刊誌「DAYS JAPAN」の編集長・広河隆一の数万枚に及ぶ写真と千時間を越える映像から生まれた、長編ドキュメンタリー映画だ。

22日の初日舞台挨拶には多くの観客たちが押し寄せ、広河隆一、安岡卓治(プロデューサー・構成・編集)、森沢典子(製作、※『1コマ』サポーターズ代表)を拍手で出迎えた。

安岡:これはドキュメンタリーですから、たくさんの人たちにインタビューをしています。一人一人の証言を全て2時間ちょっとの映画に収めることはできませんでしたが、一人一人の人生が語られたという実感はあります。編集しながら思ったのは、映画にするには入れたい内容を1/10、もしくは1/100に絞り込まなくてはいけないということ。それだけに、私としても尽くせぬ想いはどうしてもありますが、私なりに編集することができたと思っています。

広河:製作中の大変さはあまり振り返りたくないですねぇ(苦笑)。それよりも現地のことを振り返りたい。僕はフォトジャーナリストです。実際に現地に行って写真として記録することを基盤にしていますが、そういうことができて本当によかったと思っています。現地にいかなければ、真実を捻じ曲げて捉えてしまったかもしれないから……。
日本でも同じようなことが言えるかもしれませんが、人間というのは都合の悪いことは忘れたがるんです。ですから、40年前から廃墟と化した村の取材をずっとしてきて、それを映画にしたとき、観た方々からは酷評を受けたんです。でも、忘れていいことと、決して忘れてはいけないことってあるんです。

広河の力強い訴えに劇場から大きな拍手が巻き起こると、「今までこの映画を観た方は何だか重い気分で帰っていったようだったので、この映画がどう感じてもらえているのか気になっていたんです。でもフランスやレバノンで拍手をもらえたとき、支持してもらえていることを知りました」と嬉しそうにほほ笑んだ。

※『1コマ』サポーターズ:
『パレスチナ1948・NAKUBA(ナクバ)』は、『1コマ』サポーターズの基金により完成!
広河隆一が40年間撮りためてきた写真と映像。マスメディアでは様々な限界にぶつかり、その多くが未発表のままだった。「このまま眠らせてはいけない」。その貴重な映像を「映画」として発表するため、2002年、森沢典子の呼びかけにより『1コマ』サポーターズが発足。現在、650名以上がサポーターとして『パレスチナ1948・NAKUBA(ナクバ)』を支えている。

(Report:Naomi Kanno)